第106話 掃除
「勉強を家でやりたい?」
「……ん。今日、春香が私に一緒にやりたいって言った……それで場所がいいところがなかったからここでやりたい」
凛明が家に帰って、今日の歌の練習を終えた後にそんなことを言ってきた。
動画の編集作業をしながら聞いていた俺はそれについて考えていた。
(……俺はいいけど、栞菜さんと紗耶香がどう答えるかだよな)
ここの家主ではない俺では決めることが出来ず、今の現状を凛明に伝える。
「俺は別にいいけど、栞菜さんと凛明が許可してからな」
「……言わなきゃだめ?」
「いやだめだろ……」
嫌そうに顔を顰める彼女に思わずそうツッコむ。
ちなみにだが紗耶香は修学旅行から帰ってきた。
土日も修学旅行ため、今日も学校に行っていたのだ。
「あの学校まじで狂ってるよ〜!というかあのサッカーボーイうざい!エイジさぁん!!」とか言って泣き言ってたのは記憶には真新しい。
「……仕方ない……二人に言う……やっぱやだ」
「どっちだよ。とにかく、二人が許可しないと俺からは何も言えないからな」
「うぅ……エイジのバカ」
「バカで結構。とにかく行って来い」
「うぅ……うぅ!!!」
ぽかぽかと俺の背中を叩いてくる。
そんなに嫌なのか?いやまぁ二人からいじられるからなんだろうけど。
「……じゃあ頭撫でて」
「?なんで頭を??」
急にそんなことを言われてしまうから驚いてしまう。
先ほどとは違い、少し素っ気ない態度の様子を見て、仕方がないと思いつつも、彼女の頭を優しく撫でる。
「……むふっ。やっぱこれはいい……もっとして」
「はいはい。仰せのままに」
急に撫でられることに目的を変わってないか?
随分と欲張りになったものだと自分の我が子のように思いながら、俺は彼女の頭を撫で続けるのであった。
◇
翌朝、どうやら二人から許可を貰ったそうで、学校が終わり次第、ここに来ることになったらしい。
ただその時の凛明は嬉しそうには見えず、逆にげんなりとしていた。
彼女曰く、「……二人に言った……そしたら許可は貰った……けどそのせいで二人からいじられた……」と言っていた。
どうやら相当絞られたそうで翌日になっても何故か栞菜さんと紗耶香のことを睨みまくっていたのは言うまでもない。
「とは言うものの、流石にこれを他人に見せるわけにはいかないよな」
以前よりはきれいになったものの、少しだけ散らかっているリビング。
凛明の部屋でやるにしても掃除はしないといけないなこれ……。
「しかもお菓子でも作ったほうがいいだろ……はぁ、どうすればいいんだこれ」
とりあえずなんとか掃除とかしないと……とか考えてるとリビングの部屋が開く音がした。
「エイジさん。お困りですね。そういうときこそ私の出番です!」
「……あの、栞菜さん?なんでそんな格好を?」
目の前にはなぜか三角巾を頭に結んで、エプロンを着たとても可愛らしい見た目をした栞菜さんの姿がそこにはあった。
「流石に凛明のお友達さんに汚い部屋をお見せするわけにもいきませんので、掃除をしようかと」
「い、いや……そのじっとしていて貰えませんか?」
「え?なんでですか?二人でやったほうが効率が高くていいじゃないですか」
「た、確かにそうですけど……」
……俺は覚えている。忘れるはずがない。栞菜さんがこういう掃除などのような家事に加わるとどんな結末が待っているかを。
「じゃあ早速掃除を始めましょう!」
「い、いや待って」
「まずは床清掃ですね。こういうときのために用意した掃除機で……あ、あれ?動かない?」
時すでに遅し。栞菜さんの手元には……何故かボロボロとなった掃除機の姿が目に入った。俺は嫌な予感をしつつも、彼女に聞いてみる。
「あ、あの栞菜さん?それってどこから持ってきたのでしょうか?」
「え?物置場を掃除してきたら出てきたんです。でもおかしいですね。何も反応が………ってわわわわわ!?!?!?」
あぁ……それを聞いて理解してしまった。
多分その物置においてあった掃除機……壊れてるからそのまましまっておいたやつのことだと。
突如掃除機が煙を出し始め、それを見た栞菜さんはパニック状態に鳴ってしまう。
「わわ!?え、エイジさん!!こここここれどうすれば!?!?きゃあああああ!?!?すすすすみません!!!お、お皿を割ってしまいました!?!?ってあわあわあわあわ!?!?」
「………栞菜さん。もう何もしないでください」
おそらく声は聞こえてないのだろう。
もはや掃除をしているときよりもひどくなっているのではないかと思うほどの有り様を見て、俺はため息を吐いてしばらく落ち着くまで待つのであった。
そして凛明とその友達が来るまでに死ぬ気で掃除をしたのは言うまでもない。
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