第102話 親の来訪にて
「あ、あのなんで栞菜さんと凛明が」
「さぁお母様、お父様。早速席に案内するのでどうぞ」
「……え、えぇ?」
俺の声が届いてないのか?
呆然としている間も、時間が進んでいくの言ってるかのように、そのまま父は表情を変えず、母はニコニコとしながら部屋へと入っていく。
「………ほんとにどういうこと?」
真中とその奥で苦笑している宗治にそう聞く。だが、わけが分からなそうな様子に見えた。
「急に栞菜さんから連絡がきて、そうしたらいつの間にかあんな感じで……」
「……お前ら、少しは止めたらどうだったんだ?」
「あはは……面目ない」
どうやら栞菜さんに逆らうことができずに、そのままあれやこれやと進んで行ったらしい。
「ねぇ、ほんとにどういうこと?なんで栞菜さんと凛明ちゃんがここにいるの?」
「あぁ……それはまた後で説明するよ」
それより四人のところに行かないと。
靴を脱いでとりあえず部屋へと上がっていく。
「……あれって、栞菜さんが用意したのか?」
そこには彼女が淹れたであろうコーヒーが母さんと親父の机の前に置かれていた。
そういえば、コーヒーを淹れるのは一生懸命練習していたような……。
「あら祐介。この人たち、とても美人さん美少女さんじゃないの。一体いつから知り合ったのよ?それに、このコーヒーも美味しいわ。ねぇお父さん?」
「……そうだな」
不思議と満足気に見える父の姿が見えたのは……きっと気のせいではないな。
「はい、えい……祐介さんには私達もお世話になっています。きっとお二人が大事に育ててくれたからだと今では思っております」
「……エイジ……祐介、とてもいい人……二人と少し面影がある」
「まぁまぁ、そんな褒められてもなにも出ませんよ。祐介、この人たち大事にしなさい」
「………」
いつの間にか仲良くなってない?
そんな思いが湧き上がってしまうが、とりあえず栞菜さんと凛明のところに向かい、話しかける。
「ちょっと二人とも。一体どうしてここにいるんですか?」
「……ん。折角エイジの親が来たから挨拶でもしたいと思った……だから二人の家にお邪魔している」
「いやそんな無茶苦茶な……」
「そうでもありませんよ?実際、私達はエイジさんに数々と助けていただいたのは事実なんですから。一度エイジさんの両親にご挨拶でもしたいじゃないですか」
「……だからここに来たと?」
「ん。昨日栞菜にエイジの親ことを報告した。そしてどうせだから会おうと思った……以上」
「………さいですか」
納得はしきれてないが……二人が母さんと親父のことを一目みて挨拶したいのは伝わった。
「ちょっと祐介!そんなところでコソコソお話してないでこっちにいらっしゃい!除け者にされた気分じゃないのよ!」
すると、母さんがこちらの様子を見て、そう言ってくる。
「……じゃあ俺が色々と準備しますから栞菜さんと凛明は二人の相手をお願いします」
「はい、任されました!」
「……ん、了解」
それだけ伝えて、彼女たちは母さんたちの元へと向かっていった。
その間俺は、なにか朝食を用意しようとキッチンへと向かうのだが……納得がいかないのか、少しジト目の真中が映った。
「……なんか、私と宗治兄が都合よく使われたみたいでムカつくわ」
「まぁ仕方ないじゃないか。二人もきっと祐介のご両親に挨拶したいと思ったんだろうね。そういえば祐介、紗耶香ちゃんは?いつも栞菜さん達と一緒にいるじゃないか」
「紗耶香は修学旅行で今はいないよ」
「へぇ、そうなのね……ん?どうして貴方がそれを知ってるのよ?」
「……それもこの騒動が終わったら説明させてくれ」
今栞菜さん達のことを話したら、大惨事になりそうな予感になる気がする。
「それより、少しキッチン使わせてくれ。何か朝食を作りたいから」
「へぇ、祐介のご飯か。三年ぶりじゃないか、なにか僕達に手伝えることはない?」
「……そうだな。じゃあ久しぶりに一緒に作るか」
「了解。今日は何する?祐介のご両親もいることだしあれでも作ろうかしら」
「そうだな。まぁシンプルに行くか。まずは材料を――」
こうして、栞菜さん達がお話している間、俺達は今日の朝食を作っていくのであった。
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