第99話 親からの電話


それは、凛明が帰ってくる数時間前に遡る。

俺は栞菜さんに起こされた後、いつも通りに洗濯や夕食の準備をしていた。


栞菜さんはもう大丈夫!とか言って起きてゲームとかしようとしてたけど、流石に今日は寝てもらった。

「元気になったら私の言うこと聞いて貰いますからね……」とか言ってたけど……俺は一体何をされるんだ?


と、そんなこんなで俺は夕食の準備をしようとしてたんだが……。


「……うわやべ。今日なにもないな」


冷蔵庫を見て思い出した。そうだ、朝食材がなかったんだった……どうしよう。


凛明に何か買って貰うか……いや、そもそもあの子にお金持ってるのか?

このままだと何も作ることが出来ないし……仕方ない、買い物の準備でもするか。


早速そうと決まればエプロンを脱いで最低限のものだけ用意しようとする。だが、その瞬間にスマホが鳴る音がした。


「……一体誰だこんな時に」


俺は机に置いてあったスマホを手に取り、名前を見る。そしてその名前を見て、俺は一瞬息が止まりそうな思いがした。


な、なんでこの人から電話が……顔が顰めたのを自覚してから、俺はその電話に応答する。


「……もしもし」


『もしもし祐介?あんた連絡ぐらいしなさいよ。もう何ヶ月経ったと思ってるのよ?』


うっ……この、図々しくもこちらのことなんて考えずに話しかけてくる態度……間違いない。


「……なんで、急に連絡してきたんだよ……


『なんでって、息子の心配をしない親なんているわけないじゃない。お父さんも心配してたわよ。祐介から来ないって』


「だからって今連絡しなくても……」


うぅ……やはり苦手だ。なんでこうも息子のテリトリーに入ろうとしてくるんだこの人……てか親父も心配してたってなぁ。


「親父が心配するわけないだろ?あんな無愛想なのに」


『そんなこと言わないで頂戴。確かに少し喋らないトンチンカンかもしれないけど、あれでもあんたのこと考えてるのよ』


「……さいですか」


だったら自分の夫のことをトンチンカンって言うのはなんなんだ?

そんな呆れの感情を感じながらも、俺はしばらく母さんと会話を続けた。


いつも振り回されている感じが昔に戻ったみたいで懐かしいようなめんどくさいような……色々なものが心から湧いてきた。


「……それで、一体何の用だよ?息子の心配だけなら俺は元気にやってるから気にしなくていいよ。というか切っていいか?今俺忙しいんだけど」


『まぁまぁちょっと待ちなさいよ。あんたの事を心配してたのも確かだけど、話したいことがあるのよ」


「……なに?」


何故かこの時の母さんの話は嫌な予感しかしない。それを何度も体験しているからなのか、本能が話を聞くな、今すぐに電話を切れと言っている。


……だがそうすると余計に面倒なことが起こりそうだと感じた俺はため息を吐きつつ、自分の母の話を聞く。


そして母さんから驚きの発言を俺は聞いてしまうことになる。



『明日ね、あんたの家に行くから』


「………は?」


『いやだからね、明日あんたの家に行くから』


「いや、いや……いやいやいや………駄目だろ」


もうそんな発言しか出なかった。いやだめだろ、今俺栞菜さん達と過ごしてるんだぞ?しかも前の家売り払ったぞ?どうするんだよこれ。

いや言ってない俺が悪いんだけど……。


『なによ。そんな拒否しちゃって。お父さんとも話し合って明日行くって決めたからね』


「はぁ!?ちょ、ちょっと待てよ!そんな急に言われてもこま」

『じゃあ、また明日ね〜』

「……か、母さん!?」


なんとか母さんから話を聞こうとするが……あの人、自分の言いたいことだけ言って電話を切りやがった。


「……嘘だろ……どうするんだよこれ……」


いや何も言ってない俺が一番悪いのは確かだが……言えるわけないだろ?配信者さんの家にお世話になってるって。


「……と、とりあえず宗治と真中相談しよう」


あのアパートは栞菜さんが売り払っちゃったと思うし……最悪二人にしばらくお世話になってるって話の方がまだ話にマシになる。


そう思い、俺は久しぶりに宗治と真中に連絡をするのであった。





「……ふぅ〜ん……お父さんとお母さんが来るの?」


凛明がその話を聞いて少し興味深そうに話を聞いている。


「あぁ。まぁ……少しめんどくさい状況になったからな。だから明日は家にいないと思う」


「……ふむ。それは興味深い話を聞いた」


ん?なんだ??凛明が珍しく考え込んでいるぞ。


「……エイジ、栞菜は?元気になった?」


「あ、あぁ。明日には元気になると思うぞ。今は一応ベットに寝てるけど……多分隠れてゲームしてると思う」


あの人、隠れてスマホ持ってたからな……見え見えだったぞ。


「……分かった……私、栞菜のところに行ってくる」


「う、うん?」


そう言って、凛明は学校の鞄を持ってリビングから出て行った。

なんかとんでもなく嫌な予感がするけど……。


「……とりあえずご飯でも作るか」


凛明が買ってきてくれた材料を確認して、俺はご飯を作るのであった。


はぁ……なんだか明日、大変なことになる気がするのは俺の気のせいであって欲しい。




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