第98話 帰路とまさかの……。


あれから昼の時間が終わり、平穏……に過ごせたわけではないが、無事学校が終わって今二人は自分たちの家に帰るべく、一緒に帰路を辿っていた。


「……春香……今日は色々ありがとう……このお礼はまたする」


「いいよいいよ。凛明ちゃんの頼みだからね。教科書貸したりぐらいならいつでも言って」


「……ん。感謝感謝」


なんてことない、最近の彼女達の日常。どちらも体験がしたことがない事にどちらも胸が踊る気分であった。


「……私こっちだから」


「うん、じゃあ凛明ちゃん。またね!」


「……ん。春香もまた」


最後にそんな会話を交わしてから、二人は別々の道を歩いて行った。

凛明の機嫌は良かった。もちろん、春香とエイジこと祐介のお弁当を食べたからだ。


「……ふふ。次もお弁当……楽しみ」


次回のどんなお弁当なのだろうか。シンプルなもの?それとも最近冷えてきたから暖かいお味噌汁でも用意をしてくれるのだろうか……どちらにしたって凛明にとっては楽しみで仕方がなかった。


「………あ、そういえば……栞菜、大丈夫かな……」


そして朝の事を思い出す。

いつも通りに起きてリビングに行くと、咳き込みながら重そうな身体で椅子に座っていた姿が印象的だった。


『ちょ!?栞菜さん!身体怠いんですよね!?今日は寝ててください!』


『で、でも……きょうもゲームのつづき……』


『そんなこといいですから!ほら、早く部屋に行きますよ!』


『あ、ま、まって……えいじさぁん……』


珍しくエイジが栞菜に怒鳴っていた姿が凛明の頭にとても印象に残っており、さらにその後栞菜のことをお姫様抱っこをして連れ去ったなんて尚更だった。


「………栞菜、ずるい」


思い出してきたら何故だかムカついてきた凛明。しかし、栞菜のことを心配しているのも確かであった。


「………何か買ってきてあげよう」


最低、今の彼女には手元に金があった。

朝にエイジが食材がないと困っていたと思い出していた凛明は栞菜に何か買ってきてあげるという項目でエイジに褒めてもらおうと思ったのだ。


「……むふふ。あわよくば頭撫でてもらおう」


そうして凛明はこの後の事に胸が踊るのを感じながらも、足を弾ませて二人のために近くにあるスーパーへと向かうのであった。





「……思いの外、時間がかかってしまった」


まさか学校の人と鉢合わせをしてしまうなんて……それも、スカーレットのファンだったから、中々離れることが出来なかった。


凛明は少しぐったりとした気持ちのまま買ってきてきたであろう食材に目を向ける。


「……ちょっとぐらいなら……」


その中にはお菓子も買ってあったこともあり、凛明は袋の中を漁ろうとするが……首を振って正気を取り戻す。


「……だめ………夕食前のお菓子はだめ」


先日、お菓子を食べすぎたせいでお腹がいっぱいになってしまい、夕食を食べ損ねたという経験があったのだ。

それを脳裏に思い出した凛明は、その時の恐怖を思い出していたのか、身震いしていた。


「……あの時の経験は忘れない……そのためにも、これは明日の昼に取っておく」


そう言って、自分が買ってきたお菓子を再び袋の中へと入れた。

彼女も成長しているということであろう。


外はいつもよりも暗くなっており、冬が近づいてきたのを意味していたこともあり、肌寒くなってきたと感じる。

早く帰ろうと思い、足を早めたが……どうやらそんなことをしなくてもいいらしい。


彼女の目の前には、自分たちが住んでいる家があったのだから。


「……早く家に入ろう……そしてエイジに褒めてもらおう……あ、違う。栞菜のお見舞い……ご飯食べたい……」


色々な欲望が口から出てしまい、再び頭を振って正気を取り戻す凛明。

冷えた風により、冷たくなった手で鍵を鍵口に入れて、ガチャッとロックが外れた音を聞き取って、ドアを開けた。


「……ただいま」


………しかし、一向にエイジが戻ってくることがない。

いつもと違う変化に凛明は少し疑問を思いつつ、靴を脱いでから明かりがついているリビングに行く。


「……ただいま………エイジ?」


「あ、凛明。おかえり、悪い悪い。少し考え事してた」


すると、目の前のスマホを凝視してため息をついているエイジの姿があった。

凛明はその様子に心配したのか、エイジに近づく。


「……何かあった?大丈夫?」


「ん?あぁ、特に何もないんだ。あとそれ、買ってきてくれたんだな。ありがとう」


慣れた手つきで凛明の頭を優しく撫でる。凛明はそれを嬉しそうにしつつも、エイジのことを心配していた。


すると、エイジのスマホの画面から何かの通知の音がした。それを見て、凛明は驚愕に染まってしまった。


「……エイジ……その人……」


察したのだろう。エイジは少し歯切れの悪そうにしながら、答える。


「その、なんだ……色々あって俺の親が来るらしい」


何故そんなことになったのか……それは凛明が帰ってくる数時間前に遡る。




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《全てを失う悲劇の悪役による未来改変》


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