第95話 ゲーム実況者の看病


「うぅ……あ、頭が痛いです……」


「こら、無理に喋らないでください。おかゆ作りましたから食べてくださいね」


凛明が学校に行った後、俺は今日偶然体調を崩してしまった栞菜さんの看病をするべく、彼女の部屋にいた。

今は一通り自分のするべきこと、主に家事や動画編集などを終わらせ、今は栞菜さんのおかゆを作って食べさせている。


「……食欲、ない……でもエイジさんの手料理は食べたい……」


「そう言ってくれると嬉しいです。ほら、口を開けてくださいね。あ〜ん」


弱々しい彼女の口にスプーンで掬ったお粥を入れていく。

顔色はさっきよりかは良くなったが、熱はまだ引いてないな……ほんとにどうしたらここまで体調が悪くなるんだ?


しばらくおかゆを食べさせ、お椀の中が空になってから予め用意していた薬を出して彼女に飲ませようとする。


「ほら栞菜さん、お薬ですよ。少し苦いですけど少しは楽になるはずなのでしっかりと飲んでくださいね」


「……お薬………うぅ、嫌い……のみたくない……」


「なんか幼児退行してません?」



さっきから思ってたけど栞菜さん少し言語が幼くなってませんか?あとそんなうるうるとした目でこちらを見ないでください。可愛すぎて思わずキュン死しちゃいます。


そんなことを思いながらも、心を鬼にして幼児退行した栞菜さん……通称、幼児栞菜さんに薬を飲ませるために説得する。


「栞菜さん。このまま飲まないと治りませんよ?それでもいいんですか?」


「……それはいや……でもお薬飲むのは……もっと嫌」


う、うーん……このままだと埒が開かないな。少し卑怯な手だが……仕方ない、少し心が痛むが、薬を飲ませるためだ。


「あーそう言ってしまうんですね?ならいいですよーお薬飲まないならしばらく配信は中止、栞菜さんが楽しみにしていたゲームも取り上げます」


「え……?そ、それは嫌!そんなことしないで!」


「それならお薬を飲んでください」


「うっ……お薬はいや……で、でもゲーム……うぅ……」


ベットの中にいるにもかかわらず、その絶不調な頭で必死に悩ませている。

もう一押しってところか……でも何があるんだ……あ、一つあった。


これで喜ぶかは分からないが、一応やってみよう。

頭の中で一つのアイデアが浮かびあがり、俺はそれを栞菜さんに伝える。


「もしこのお薬を飲んでくれるなら、栞菜さんの言うこと、一つだけですがなんでも聞いてあげますよ」


まぁこれで効果があるかは分からん……。

「ほんと……!?」

……どうやら効果は大アリみたいです。


顔色が未だ悪いにも関わらず、栞菜さんの表情は子供みたいにキラキラしていた。


「えぇ。だから我慢して飲んでくださいね」


「………エイジさんのお願い………お願い……」


そうしてしばらくすると、彼女は渋々だが頭を上下に動かしてくれた。


「……分かった……飲む……」


「ありがとうございます、偉いですね。じゃあ少しだけ苦味がありますが我慢してくださいね」


事前に準備していた薬を大きく開けてくれた彼女の口の中へと入れていく。

若干栞菜さんの表情が苦虫を噛み締めたようやものになるが、それも一瞬。彼女に水が入ったコップをを渡して、それをちょびちょびと飲んでくれた。


「……飲んだ」


「はい、よく出来ました。頑張り屋さんですね栞菜さん。上手に飲めました」


「……えへへ」


……可愛いな。

褒められた子供のように嬉しそうな笑顔を見て思わず頬が緩んでしまう。

普段のギャップがあるせいか、それをより一層深く感じてしまった。


「……あれ……なんか、眠く……」


「薬の効果ですね。今日はゆっくり休んでください。いつもお疲れ様です」


彼女の身体をゆっくりとベットの上で横にさせてから、俺は布団をかけてからこの部屋を出ようとする。


「……まって……」


「?栞菜さん??」


だが、彼女はその細長くも綺麗な手で俺の腕を掴んで歩みを止めた。

栞菜さんの方を見るとその表情は少し不安そうに見えた。


「……行かないで……そばにいて」


「いやまだやることが……」


「……だめ?」


……そんな顔で言われたら何も言えないな。

泣きそうにしている彼女の顔を見て、俺は再びベットのそばに座り、栞菜さんの頭をゆっくりと撫でる。


「……分かりました。栞菜さんが安心するまでそばにいます」


「……ありがとう……えいじ、さん…………」


すると、眠気が勝ったのか栞菜さん目が徐々に力なく閉じていき、数十秒後には程よいリズムで息を立てながら、彼女は眠っていった。


だが、どこかに行かせないとでも言ってるのか、眠っていてもなお、彼女の手は俺の手を力強く握りしめていた。


「これじゃあ何も出来ないな……」


観念した俺はもう一方の手で栞菜さんの頭を撫でて彼女のそばで見守るのであった。


ちなみに、俺もその後しばらく寝てしまい、起きた時にはいつもの栞菜さんがそこにはいた。


もう少し幼児栞菜さんを堪能したかったって言うのは本人には内緒だ。






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《全てを失う悲劇の悪役による未来改変》


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