第82話 実写と二次創作
「……ということで私たちもコラボしてみたいと思います!ゆっくりと実写で!」
「ごめん、どういう意味??」
突然の結奈ちゃんの言葉に俺は頭の中が?でいっぱいになる。
そりゃそうだ。結奈ちゃんに「先輩きてください!」って連絡されて来てみたら、宗治も真中も一緒にいて、突然コラボ宣伝されたんだから。
「あはは。真中曰く、結奈ちゃんは僕達の配信を楽しみにしてくれてたんだろうってさ」
「……そうなのか?」
だから少し様子がおかしかったのか……。
「えぇ。この子から前々から相談はされてたの。コラボ配信出来ないかって」
「……なるほど。思い切ったな」
ゆっくりと実写のコラボ……普通ならあまりない組み合わせだ。でも、出来ない訳ではないし、やっている人たちもいる。
「今回は最初なので一度録画したものを、私が制作したゆっくりを編集して合成させてみました」
「なるほど……それで今日俺が呼ばれたのは?」
「その完成度をぜひ祐介に見て欲しいって思ってね。あとそれが終わったら今後について話したいし」
「私たちも準備はしてるけどなかなか大変でね……出来れば貴方の力を借りたいの」
「そういうことなら分かった。協力するよ」
この前結奈ちゃんと話した企画についてのことだろう。ちょうど彼女もいることだし、事前に打ち合わせをした方がいいだろう。
「じゃあ早速だけど結奈ちゃん。きみが制作したものをみせてくれないか?」
「はい!先輩驚きますよ?これは中々の自信作なんですから!」
そう言って彼女は自身のパソコンを持って、編集した動画を俺に見せてくれた。
◇
れ『はいど〜も!突然ですが皆さん、私金欠になりました』
ま『突然何言ってるんだぜお前?』
爽快なBGMとともに、二次創作のゆっくりを見たことがあるなら一度は目にしたであろう赤いリボンをした巫女饅頭と、特徴的な黒い帽子をした黄色い魔法使い饅頭。
れ『いやね、私最近ハマってることがあるんですよ。ゲームというなのギャンブルをね』
ま『危ないから言わなくていいぜ。そんでお前もう私と関わるな』
れ『えぇ!?そんなこと言わないでよまりちゃん!お金借りるだけなんだから!』
ま『まりちゃん言うな、あと普通にぶっ飛ばすぞ』
リアナ特有のゆっくり饅頭たちの会話。それが数十秒間繰り返される。
相変わらずテンポ感あっていいなとか思ってると、早速本題に入ってきた。
れ『ということでねまりちゃん。私、お金が欲しいの』
ま『まりちゃん言うな。で、それがどうかしたんだぜ?』
れ『だからね、ある人たちに会ってきたの。今回はそれをまりちゃんに見てもらいたいの』
ま『ほぉ……それでどうすんだぜ?』
れ『これでバズって大金持ちになるわ』
ま『無鉄砲にも程があるし、その自信過剰は治したほうがいいぜ』
れ『ふっふっふっ。そう言っていられるのも今のうちだよ。これを見てもそんな戯言が言えるか!!』
そんな巫女饅頭がパソコンを取り出し、突然画面が光輝く。そして光が治った時……おそらく巫女饅頭が撮ってきたであろう動画が映されていた。
れ『どーもみなさん!最近簡潔になりましたゆっくり霊◯です……今日の動画はね、特別コラボ企画ということである人たちの所にお邪魔して参りました』
そんな言葉とともに、ゆっくりではない二人の……見覚えのある人物たちがソファに座っているのが見える。
れ『今日の特別ゲストさんでーす!!それではお二人さん、自己紹介お願いします』
「はい、というわけで皆さん〜!兄のソウジです!」
「妹のマナカです!二人合わせて……」
「「芦田兄妹です!!」」
聞いたことのある自己紹介……芦田兄妹が言い終えると、盛大なBGMとともに画面上が盛り上がった。
れ『今日はね、芦田兄妹のお二人の所に来てました!皆さん知っていますか?僅か5年も満たないで登録者400万人の大物ですよ?化け物にも程があります』
「いやいやそんなことないですよ。リアナさんのチャンネルもとても有名じゃないですか!」
「そうよ!私、リアナさんの動画全部見てて!今回コラボ出来てほんっとうに嬉しいでふ!」
れ『気持ちは嬉しいはずなのになんででしょう……現実味がありません』
実写と二次創作という噛み合わなそうな会話。だが、それを感じさせないかのようにテンポよく会話が進んでいる。
結奈ちゃんも凄いが、二人も凄いな。これ、誰もいないのに話してるわけなんだろ?それに自然と……。
れ『今日はね、この芦田兄妹の二人に私のお金稼ぎをお願いしたいのです。二人ともよろしくお願いします』
「よろしくお願いします。いや僕も企画とかあと趣味でゲームしてるのでね。お金はとっても欲しいよ」
「おにいは相変わらず貪欲だね……」
「そういうマナカも人のこと言えないじゃないか」
「まあね……それでリアナさん。今回は何をするの?」
れ『よくぞ聞いてくれましたマナカさん!今日私たちがやるのは……これです!』
「これって……」
「……私の目が曇ってなければ、パチンコに見えるけど」
れ『お金稼ぎと言ったらやっぱりこれでしょう!でも私はお金がありません……と言うわけで私のために、二人のお金を使って貰いましょう!』
「中々酷な事言ってませんか?」
「それに私たち、何もメリットがないような……」
れ『何を言ってるんです!?もしこれで当たったら大金持ち!それにこのマシンは業者さんから許可を貰って借りたものだから、当たりを何度も引けば本当のお金持ちになれるんですよ!!』
「そ、それは当たったらの話じゃあ」
「確かに!」
「……ま、マナカ?」
「当たりを引けばいいもんね!私これでも運がいいんだから、これで当たりをバンバン引いてやるわ!おにい!お金貸して!早くやるよ!!」
「えぇ……うちの妹」
れ『……ふふっ、計画通り』
そんな会話とともに、本物のパチンコにコインを入れて何度も挑戦する芦田兄妹とリアナ。
しかし現実はそう上手くはいかず……結果、お金は無惨にも溶けていったという結果に終わった。
◇
「……とりあえずここまで作り上げたんです」
「……なるほど」
それを見て俺は一つ言いたいことがある。
「真中お前……バカにも程があるんじゃないか?」
「し、失礼ね!!」
顔を赤く染めた真中が大声を出して反論してくる。
それに対して宗治は苦笑気味だ。
「私だってこんなバカじゃやいわよ!でも、仕方ないじゃない!この世界のマナカはバカ可愛いが魅力なんだから!!」
「……バカ可愛いってそういうことね」
意味合いが違ってくるが、彼女は……そして視聴者はそう捉えてるのであろう。
「……でも、話は面白かったしテンポ感も良かった。結奈ちゃんまた技術力上げた?」
「そ、そうですか?……まぁ、先輩と比べたら天と地の差はありますけどね」
「それ俺を罵倒してるの?」
急に罵倒されてびっくりしたよ。この子、俺の編集力と自分の編集力を比べやがった。
全く……この毒舌は治らないのか……そう思ってるとジト目の結奈ちゃんが目に映った。
「……先輩って意外にネガティブなんですね?」
「え、どういうこと?」
「知りませんよ。先輩ア〜ホ。アホウドリにでも突かれてその壊れた頭を治したらどうなんです?」
「え?」
さっき以上の罵倒を言われて思わず泣きそうになってしまった。
それには二人も苦笑……というか俺に向けてるような気がした。
な、なんでだ……?
「とりあえず面白いのは分かりましたから、これが終わり次第企画について話しましょう?」
「う、うんそうだね……宗治、準備の方をお願いできるか?」
「あはは。任せてよ鈍感祐介。少し待ってて」
「おいちょっと待て」
なんだ鈍感祐介って。そんなことを言われる筋合いはないぞ。
「今のは鈍感エイジね。結奈ちゃん可哀想に……珍しく褒めてくれたってのに」
そう言いながら、宗治たちは部屋から出ていってしまい、俺は部屋に取り残されてしまった。
「……なんでなんだ?」
訳もわからずに呆然としてしまい……しばらく俺はそれについた考えるのであった。
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