第81話 三人の新世代


紗耶香こと天晴あおいとカレンさんとのコラボ配信をしてから数日が経った。

どうやら、あの配信が割とバズったということもあり、何故か好評の嵐が続いた。


紗耶香はうげぇ……と嫌そうな顔に対してカレンさんは喜んでいた。

これでまた配信が出来るね!と紗耶香に言い放った所……全力でお断りをしたそうだ。


そんな嫌わなくてもいい気がするが、それも人それぞれなのだろう。


それで今俺が何をしているかというと……新世代ルーキーの三人の目の前にいます。


「……なんで俺が呼ばれたんですか?」


「カレンちゃんに聞いたところ、エイジさんが一番お偉い人ということなので、呼ばせていただきました♪」


……それは答えの返答にはなってないのでは?


「別にいつも通りに配信してていいですよ?特に何かを強制するとかはしませんから」


「いえいえ。そういうわけにはいきません。私たちも会社という組織に滞在している身。それならば、お偉いさんに自分たちのことを知って貰うのは大事なのでは?」


「……確かに」


一理ある……というかその通りだ。

有名な人たちだと認識して見守っていたが、彼女らの実力について詳しく知らない。


こうして実際に見ることでさらに質の高い配信を送ることが出来る……メリットは大きいんだけど。


「なので呼ばさせていただきました〜今日はよろしくお願いしますね」


「……あの、後ろのお二人はいいんですか?」


俺の見間違いじゃなけりゃなんだか喧嘩しているようにみえるけど……。


「今日は折角のコラボ配信だ!こういうときこそ、奴らに筋肉の素晴らしさを教えるべきだろ!!」


「誰が筋肉の素晴らしさを知りたいのですか。我々に求められているのは配信という時間も無駄のないようにする。つまり為になる豆知識をお送りすべきです。まずは一本の鉛筆で書ける長さについてですね……」


……筋肉についても興味ないし、豆知識も魅力的だが、配信で聞きたいかといえば微妙な所だ。


「いつものことなので大丈夫ですよ〜。リゲルちゃんも蓮ちゃんも配信の時になったら

静かになりますので」


「そ、それならいいですが……」


そんな会話をしてる間にも、だんだんと口論が激しくなっているような……。


「でも、どうして急にコラボをしようと思ったのですか?急に送られた時はとても驚きましたけど」


「うーん。カレンちゃんも紗耶香ちゃんのコラボ配信に影響されたのもあるんですけど〜……やっぱり、実際に見てみたい気持ちがありましたから〜」


「何を、ですか?」


ほわほわと何もかも包んでくれそうな母性のある咲凜さんに聞いてみる。すると、急にこちらに接近してきてから俺の唇に指を当てて、魅惑のある声で囁いてきた。



「あなたの……エイジさんの実力を、ですよ」


「……俺のですか?」


「はい。カレンちゃんにも認められるその編集技術……混沌と化すると予想される私たちの生配信を切り抜きという動画でどう魅力的に伝えるのか、面白くするのか……私、興味があるんです」


ふふっと意味深に笑顔を浮かべている咲凛さん。それに対して俺は少しドキっとしたものの、動揺をみせないように彼女に答える。


「……大したことはありませんが、それでも皆さんの配信をより面白いものに仕上げたいとは思っています」


「あら、それは嬉しいですわ。ふふっ、それに私がこんなに誘惑しても特に心が乱れてない様子……面白いですね」


それだけ言って彼女は二人の元へと歩いていく。そろそろ配信時間なのであろう。


「それではエイジさん。是非の配信、御覧くださいね?」


最後に口元を弧にして笑みを浮かべてから、彼女は俺の元から離れていった。


「……二人のことはいいのか?」


何故かのけ者扱いされてないだろうかという二人の心配をしつつも俺は彼女達のことを見送る。


「こ〜ら二人とも。そんな喧嘩しないでそろそろはじめ」

「何故お前には筋肉のよさが分からんのだ!!筋トレという険しい道の奥にあるこの逞しい肉体!!男ならば誰でも憧れるだろうが!!」


「あなたのその胡散臭い筋肉の話は聞き飽きました。いいですか?これからは必要になっていくのは身体ではなく頭脳という力です。そのためにはもっと視聴者に為になる動画をですね!」


「なんだと!!」


「なんですか?」



「………二人とも?」


「「ッ!?」」


「もうすぐ配信だから……ちょっとそのお口を閉じましょうね〜」


「「……」」


……その光景を見て俺は咲凛さんだけは怒らせないようにしようと決めた。

なんだあれ、怖っ。


そんな底しれない恐怖を抱きながらも、俺は彼女たちのコラボ配信を見守ったのであった。


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《全てを失う悲劇の悪役による未来改変》


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