第六章
第80話 約束の配信
「……コラボ?」
「あぁ。前にきみにも話しただろう?紗耶香と……天晴あおいとのコラボ配信をしたいって」
家で家事をしている時にカレンさんから連絡きたからなんだと思っていたら……そういうことね。
「そういえばそんなことエイジさん言ってたような……うげぇ……」
「なんだいあおい。こうして私とのコラボ配信が出来るんだよ?もっと感謝をして欲しいなぁ」
「……貴方のその上から目線が昔から気に食わなかったので関わらないようにしていましたが……ちょ、抱きついてくるなぁ!」
隣で嫌がっている紗耶香に、にも関わらずあおい〜と容赦なく抱きついてくるカレンさん。
これ、お互いが嫌いとかじゃなくて紗耶香がカレンさんを嫌ってるだけ……?そんな素ぶり全く見せなかったけどな。
「これでも私たちは配信のプロだよプロ。ポーカーフェイスなんておてものさ」
「……勝手に人の心を読まないでくださいよ」
おっと失礼と言ってくるが……絶対わざとだよな?地味に顔が笑ってるぞ?心臓に悪いからやめて欲しい……。
「うぅ……エイジさぁん。どうしてもやらなきゃだめぇ?」
「……まぁ時すでに遅しだな」
もうカレンさんの方で配信予告をしてしまったから、断ろうにも断れない……。
「ということで沙耶香。私と一緒に楽しい配信をしようじゃないか!」
「い〜や〜〜だ〜〜〜!!!!」
だが、そんな抵抗も虚しく……しばらくしてカレンさんとあおいによるコラボ配信が始まった。
◇
「やぁみんな。元気にしてたかい?私は言うまでもなく元気さ!……今回に限っては特にな」
「………ど〜も〜……天晴あおいでーす……」
:テンションひっく!?
:草
:完全にあおいが嫌がってるw
:カレン可哀想……。
仲が悪い……正確にはあおいがカレンさんを一方的に嫌っているが、そんなこんなで配信が始まった。
あおいの様子から視聴者も苦笑……中には笑ってる人やカレンさんに同情している人が多い。
「はいはーい。みんな、私を可哀想な奴に仕立てるのはやめようか。なんだか泣きたくなるじゃないか」
「そのまま泣き崩れて配信が止まっちゃえばいいのに」
「……あおい?鋼のメンタルを持つ私でも流石に泣いちゃうよ?」
:あおいとは思えない……笑
:なんでこんな嫌ってるんだ?
:相性とかあるんじゃね?
:私はカレン様に同情しますわ……。
「とまぁね。前置きはさておきね、今日はあおいに来てもらったよ〜!ほら、あおいそんなテンションだだ下がりじゃみんなに見捨てられるよ?」
「うぐっ……仕方ないなぁ……んんっ!みんな!今日はよろしくね!快晴の空とともに現れたうちこと天晴あおいちゃんと楽しんじゃおう!!」
:うわすごっ
:一気に声色が変わったw
:表情分からないのに一気にキラッとしてるように見えたのは気のせい……?
:大丈夫だ……俺もその一人だ。
……あおい、ていうか紗耶香凄いな。あんなに嫌がってたのにいつものあおいに戻った。
さっきカレンさんが言ってたプロはあながち間違ってないかもしれない。
「あおいが元気を出してくれたということで今日は私が用意した出し物をね。彼女とやっていきたいと思うよ!」
「ワー!ウチトッテモタノシミダナー!」
……声に流暢さがないぞ紗耶香。
「いやなにこれ?おかしいのあるよね?愛してるゲームとかあるよね?」
「お、気づいたかい?じゃあ折角あおいが選んでくれたからこの愛してるゲームからやろうか!」
「ちょっと待って?うち何もやるなんて」
「じゃあスタート!」
「人の話を聞け!!」
……そんなこんなで始まった愛してるゲーム。ただ、勝敗は一瞬で着いた。
「じゃああおいから!」
「……はいはい……アイシテル」
「ぐふっ!?」
……何故か血を吐いて倒れたカレンさんが目に映ったからだ。
「な、中々やるじゃないかあおい……今のは効いたよ……!」
「……うち、別に心を込めて言ってないからね?」
「くっ、そのツンデレもまたいい……!じゃあ今度は私からだね」
「えぇ……まだやるの?」
あおいの嫌そうな声は無慈悲にも届かず、カレンさんは変なポーズを取ったと思ったらあおいに向けて指を指して……。
「……愛してるよ、あおい♪」
「…………どーもどーも」
……これにはあおいも顔を顰めて、適当に返事をすることしかできなかった。
何故かコメントは黄色い声援でいっぱいだったけど……。
「な、なぜだ……!あおいが動揺しない……!」
「じゃあさっさと終わらしちゃおうよ。飽きたし」
「ま、待ってくれ!まだ心の準備が」
「愛してる」
「ガハッ!?」
容赦なくあおいの言葉に無事撃沈してしまったカレンさん。
それには視聴者も大爆笑、悲鳴じみた声もたまに見られた。
「はぁ……愛してるとか、うちはエイジさんに言って欲しいのになぁ……」
っとちらっとこちらを向いたが……俺は無言で彼女から視線を逸らす。
むぅ……と納得しなさそうに言ってるが、やらないからね?
そうして、しばらくして復活したカレンさんと他のゲームを行い、コラボ配信は終わりを迎えた。
◇
「つ、疲れた……今日は断然に疲れた……」
「私は楽しめたよ。久しぶりに紗耶香との配信は楽しかったよ」
「私はもう懲り懲りだよ……」
それぞれの感想を言い合う二人。配信は無事成功し、視聴者も意見はややあるが満足そうにしていた。
「お疲れ様二人とも。あとは俺がやっとくから休んでてくれ」
「あ、エイジさん。ありがとうございます。じゃあ遠慮なく」
そう言って何故か俺の背中にもたれかかるが……なんで?
「紗耶香?」
「いいでしょ?えへへ、エイジさんの背中、おっきいなぁ」
最近紗耶香は何かが吹っ切れたのか色々と俺にボディタッチやらこうして背中にもたれかかることが多くなっている……俺が何をしたって言うんだよ……。
「……君の編集能力は認めてるつもりだけど、なんで気に食わないか分かったよ」
「なんでそんな羨ましそうに俺のことを見てるんですかカレンさん……?」
「くぅっ!逆になんでそこまで紗耶香に好かれるんだエイジ!!うらやま……けしからんぞ!!」
「本音出てましたよ……」
……
そんな二人に囲まれながら、俺は先ほどの配信の切り抜き動画を作成するのであった。
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《全てを失う悲劇の悪役による未来改変》
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