第75話 その後
「うぅ……ひっく……」
「……よくやりきったな。凄かったぞ」
配信が終わり、泣きじゃくっている彼女の頭に手をのせて撫で続ける。
怖い思いをして……不安な思いを抱いてやったんだ。泣くのも無理はない。
「……違う……違うんです」
「何がだ?」
彼女の言葉に違和感を持つ。違うって何が違うんだ?
「怖かったのはそうなんですけど……うっ……それ以上に嬉しかったんです……」
すん……と涙を引っ込めようとしながらも語り出す。
「私には、こんなにも応援してくれる人がいるんだって……暖かい言葉をかけてくれる人がたくさんいるんだって思ったら、涙が止まらなくて……」
「……紗耶香」
……やっとそう思えるようになったんだな。そんな思いを込めて彼女の頭をポンポンと叩いてから撫でる。
「これで証明されたな。紗耶香は……天晴あおいは凄い存在だって」
「ッ!……あ、あぁ…えいじ、さん」
再び涙が溢れ出そうになるところで、彼女の部屋の扉が開かれる。
振り返るとそこには、栞菜さんと凛明がいた。
「ふ、二人とも……あ」
紗耶香が二人に向かって何か言おうとしたが……有無も言わせずに彼女たちは紗耶香の身体を抱きしめる。
「何も言わなくていいわ……辛かったのね」
「……え?」
「ごめんね……ごめんね…私、紗耶香の事考えないであんなこと言っちゃって……貴方の気持ち、分かってやれなくて……!」
「そ、そんなこと……!」
「……紗耶香、よく頑張った。だから……我慢しなくていい……」
「り、あ………そ、そんなこと言わないでよ……ま、また泣いちゃうじゃん……」
そう言いながら、彼女は二人の温もりを感じながら、声を殺して静かに涙を流し始めた。
俺はそんな彼女たちの様子を見てから、邪魔したら悪いと思い紗耶香の部屋のドアを開けて出て行った。
「……ふぅ」
流石に俺も緊張の糸が切れてしまう。彼女の答えがあれで良かったのかは分からない。
もしかしたら辛い道を歩ませてしまったのかもしれない……だが、これでいいと自分に自己暗示をかけるように俺は心の中で反芻する。
すると、スマホの着信音がなり始めた。見ると……宗治からだった。
「どうした?」
スマホの応答ボタンを押して、俺は彼と電話をする。
『どうしたもこうしたもじゃないよ。紗耶香ちゃん、大丈夫だったの?』
その声色からは心配が感じ取ることが出来て、不思議と頬が緩んだのを感じる。
「あぁ。配信を見ただろ?あれなら大丈夫だと思うさ」
『そうかい……でも、よかったのかい?配信を続けさせて』
「彼女に後悔だけはさせたくないからな」
『……随分と思い切った事をしたんだね』
「知ってるだろ?これが俺なんだ」
『違いないね。あと、真中と結奈ちゃんも心配してたよ。そのうちまた連絡してくれよ』
「あぁ、彼女にそう伝えておくよ。色々と助かった。ありがとうな」
そう言って宗治との会話を辞めるために、電話を切った。
今回、紗耶香の過去を知るために芦田兄妹と結奈ちゃんには頑張ってもらった。
まさか家族関連に関しての情報を得れるとは思わなかったから正直にいえば驚いた。
「3人には何かお礼しないとな……何がいいかな」
そう考えながら階段を降りて下に行こうとした時……再び着信音がなった。
宗治が何か伝え忘れたのかと思い、スマホを見てみると……そのメールは緋村カレンからだった。
「会いたい。あの公園で来てくれ、か……」
……外は暗いけど今はやる事がないからいいだろう。
彼女に返信をしてから俺はこの前行った公園に行くべく、足を動かしたのであった。
◇
「うぅ……寒いな……」
流石に冬が近づいてきたか……?厚木で来たのに冷たい風が肌にビュービュー伝わってくるから寒いったらありゃしない。
腕を摩りながら夜の下を歩いていると、あの公園に着いた。
よく見ると滑り台や鉄棒など小さな遊具が結構揃っている。
お子さんがいる人にはいい場所なんだろうなとか思っていたら……赤色の髪をした女性が俺の目に入った。
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