第67話 過去
「そう、これは私たちが幼い頃の話だ」
カレンさんが懐かしさを感じながら語り出す……彼女の過去。
◇
彼女らには親はいない。大物ユーチューバー、KANNAや歌姫と呼ばれているスカーレットと同じように、
だが、それでも彼らは毎日笑顔が絶えずにいた。
生活は苦しいものであったが……それでも、いつも全員で過ごしていたから笑うことが出来ていた。
そんな時だ。彼女が……紗耶香がやってきたのは。
◇
「……なんだこのガキ?」
リゲルが物珍しいそうに少女も見やる。どうやら興味津々なようだ。
「家の前でいたんだ。折角だから僕たちの家に入れさせて貰った」
「こんな根っからに怪しいやつをか?……いや、それにしちゃ死人みたいな目してるぞ?」
「まぁまぁそんな細かいことはいいじゃない〜ねぇ、貴方。名前はなんて言うの?」
咲凜が紗耶香とは対照的に目をキラキラさせながら聞いてくる。
だが、彼女はそれに対して何も反応しない。
「……どうやらしばらく安静にした方が良さそうだね」
「いいのかカレン?こんな奴を家にいれて」
「うん。ここで見捨てるのも心苦しいしね。咲凜、お風呂でも入らせてやって。蓮は食事の準備を」
「は〜い♪」
「了解リーダー」
二人はそれぞれ自身のやるべきことをするべく部屋に入っていく。
「……けっ、俺は知らんからな。ガキに気を遣っちゃあ筋肉が劣る」
「……まだ私たちもそのガキの部類だけどね」
「う、うるせぇっ!そんなの関係ねぇんだよ!」
ふんっ!とリゲルはドンドンッ!と大きな足音を出しながら、自身の部屋に戻っていく。
「……はぁ、やれやれ」
そんな様子を見てため息を吐くカレン。だが、それでも彼女は何かを確信していた。
——この生活がより、豊かになることを。
◇
紗耶香が来て数週間が経った。
その頃には彼女は少しずつだが、笑顔になることも増えていき、彼らはいつの間にか家族とも言ってもいいほどの仲になっていた。
だが、それでも彼女自身のことについては何も聞かせてくれない。特に親については……。
「……私、飛び出して来ちゃったの………あの人たちはきっと気にしないだろうし」
……その言葉の一点張り。
きっと大人ならば彼女の親を探すのがいいのだろう。
しかし、この頃の彼女らはまだ子供であった。
「ならここに住んじゃえよ」
ぶっきらぼうに言い放つリゲル。それに対して、紗耶香は少し目を見開き、他3人は青天の霹靂のような衝撃を受けていた。
「な、なんだみんなしてその顔は……?」
「……熱でもあるのか?待ってろ。今僕のとっておきの薬を……」
「バカにしてんのか!?それにいらねぇよ!!てめぇの薬まずいし、対して効力ねぇじゃねぇか!?」
「まぁまぁそんな荒げないのリゲルちゃん。ほらほら、よしよ〜し」
「おめぇもだ咲凜!何子供扱いしてるんだ!蹴り飛ばすぞ!?」
「とりあえず医者に行くかい?大丈夫、君ならヤブ医者でもギリ治るほど頑丈だから」
「おいカレン!なにヤブ医者のところに連れていこうとしてんだこら!俺は病人じゃねえぞ!!」
いつも通りにリゲルが周りをいじっていく。しかし、そんな中紗耶香は頭の中が追いついていなかった。
「……い、いいの?」
「ん?なんだ紗耶香?そんなの当たり前だろ?俺たちは家族なんだからさ」
「ッ!?」
「それに、もしそいつらがお前を見てくれないなら人気になればいいじゃねぇか」
「……にん、き?」
「あぁ。配信者だ」
彼のその言葉にまたかと思い、カレンはため息を吐き始める。
「またその話かい?何度も言っただろう。そんな上手い話はないって」
「なに始める前から諦めてるんだカレン!そんなのよ、やってみなきゃ分からないだろ!それによ……」
力強く拳を握り始める。そんなリゲルの姿を見て紗耶香は不思議と目が離せなくなる。
「絶対になるんだ……俺たちが、この配信という物の大スターに」
「大スターか……何度も聞くけど、なんだか具体性がないね」
「でもいいじゃない〜。私、とっても素敵だと思うわ……アイドル♪」
「お前ら絶対に話を聞いてねぇな!ったく……紗耶香、お前はどう思う?」
「えっ?ど、どうって……」
「もし見てほしい人物がいるんだったら配信でもするべきだと思わないか?」
そう聞いてくるが……彼女には分からない。
人気になることがどうして彼らが自分を見てくれるのか……それが何を意味するのかを。
でも……それでも彼の姿を見て、彼女の心は……踊っていた。
「……うん。素敵だと思う……!」
彼女の運命の人……エイジこと祐介と出会う前から、彼女には配信というものが脳裏に刻まれていた。
そのきっかけが……彼らとの会話であったのだ。
そしてその日からしばらく経ち……紗耶香は突然と彼らの前から行方をくらました。
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