第68話 驚きの連発


「……これが私たちが知っている彼女の過去だよ」


「……そんな、ことが」


彼女らの話を聞き……俺は衝撃を受ける。

まさか紗耶香とこの4人にそんな過去があっただなんて……。


「正直、その後は分からない。ただ僕らが配信した時期にちょうど天晴あおいの名前が出てね。もしかしたらと思って接触したら……ビンゴだったってわけだ」


……つまり、この4人と紗耶香が新時代と呼ばれたのはまさに偶然だったってことか……。


「それで、こんなこと知ってどうすんだ?これであいつが配信を続けるなんてことにはならんと思うが」


「……いえ。そんなことありません」


彼女の過去を知ることで、見えてくるものがある……彼女にとってほんとに必要なものが。


「……ふふっ。なんだか面白い人ですね」


「?」


「他人なのにそこまで必死になる人なんて見たことありませんでしたから少し新鮮なんです。貴方にとって紗耶香ちゃんは大事な存在なんです?」


咲凜さんが目を細めて口を弧にしながらそう聞いてくる。


「……まぁ、そんなものですよ」


「あらあらはぐらかされちゃいました〜ふふっ」


別にはぐらかしたつもりはないんだけどな……口を手に添えて笑っている彼女を見てそう思ってしまう。


「どちらにしたって後は貴方次第だエイジさん。僕たちは僕たちの出来ることをした……貴方がどうやって紗耶香を引き止めることが出来るか見ものだよ」


「……必ず止めて見せますよ」



——俺の出来る全てを使ってね。


そしてその後、少しだけ彼らと言葉を交わして俺は新時代ルーキーの家を後にしたのであった。





「……色々と情報を集めてみたんだけど……大体分かってきたぞ」


夕暮れが過ぎ、もう空が紺色になり始めた頃、俺は彼女の情報を集めに集めまくった。


まず彼女の親についてだ。

どうやら相当の毒親だったらしく、情報を集める度に顔を顰めてしまった。


彼女にはもう一人、妹がいるらしくその名前は由桐志紅しぐれ

姉の紗耶香とは違い、頭脳明晰で運動神経も抜群によく、何度も大会で賞を取った程の才人だ。

どうやら今はあの時の事故で亡くなってるらしいが。


話を聞く限り、紗耶香の事を放っておいてその志紅のことを甘やかしていたみたいだ。


「……だからあそこまで捨てるとか見てくれないとか言ってたのか」


彼女がそれに拘る理由……その理由は妹との自身の比較と、親に見てくれなかったことによる影響らしい。


「……一時期行方不明になった時期になったこともあったけど……その時にあの4人の所に行ったか」


それで、流石に家に戻らなければいけないと思ったのか、何も言わず彼らの元に去った……俺が思ってた以上に彼女は闇が深い。


「……俺なんかがそんな闇を振り払えるのか……?」


一瞬、そんな考えが脳に過ってしまうが……頭を振る。

何弱気になってんだ俺は……向き合うと決めたはずだろうに。


「……っとそんなこと考えてたらもう家に着いちまったな」


いかんいかん。こんな顔してあの人たちに……特に紗耶香見せちゃあかんな。

そう考えながら俺は扉を開けて……思わず絶句してしまった。


「あっ!エイジさん!おかえりなさーい!!」


だって仕方ないではないか。

——何故か裸エプロン姿の紗耶香が玄関前で待っていたのだから。



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また、こちらの作品の方も見てくださると嬉しいです。


《全てを失う悲劇の悪役による未来改変》


https://kakuyomu.jp/works/16818093076995994125

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