第64話 まさかの発言


紗耶香とともに買い物をしてから家に帰った後、俺は自室であることを調べるために少しだけパソコンをいじっていた。


そのあることとは勿論、紗耶香の両親が亡くなった事件についてだ。


「……あった」


そこには車の衝突事故について書かれていた。

どうやら中年男性による飲酒運転が原因だと記載されており、三人の犠牲者を出した事故だと言われている。


その中の二人に……紗耶香と同じ名字である由桐という文字が俺の目に入った。


名前は……由桐天夜、由桐晴子。


「……この二人についてもう少し情報が欲しいな…」


……でも、時間が足りない。時計を見てみるともう六時になっていた。


そろそろ晩ごはんの時間だと認識した俺は、そのままパソコンを閉じてから家事をするべく下に向かうのであった。





夕食を作り終え、俺達は互いに椅子に座り食べようとしていた所なんだが……少し問題が発生した。


「……紗耶香、そこどいて……夕飯の時間は私がエイジの隣」


「……いや…エイジさんの隣は譲らない」


俺の隣の席を巡って、紗耶香と凛明が少し喧嘩気味になっている。


そんなギスギスした空気に俺も栞菜さんも少し困惑してしまい……彼女達を見守るしかなかった。


「……約束した……ちゃんと交代で譲るって」


「……いや…エイジさんと離れたくない……」


その想いが強くなるように、紗耶香が俺の椅子とくっつけ、手を強く握り始める。その様子にいつも無表情の凛明も眉を顰め始めていた。


「紗耶香……約束、守って」


「ッ!いやぁあ!!」


凛明が強引に離れさせようと彼女の手を引っ張ると、子供のように駄々をこね始め、叫びだす紗耶香。


そんな彼女の叫び声に俺や栞菜さんは勿論、手を引っ張ろうとした凛明も思わず驚いてしまい、リビングが静寂に支配される。


「……あっ」


やってしまったと思ったのだろうか、紗耶香は俺達をキョロキョロを見始め身体が震え始める。


「また、迷惑かけて……!」


「……ごめん、紗耶香」

「ッ!」


ビクッと凛明の言葉に身体を跳ねていた。今の紗耶香の目が何かに怖がるような視線を向けていて……耐えきれずに彼女はリビングから出ていった。


「ッ!紗耶香!」


栞菜さんが呼びかけようとするが、彼女の声は紗耶香には届かず……そのまま2階に戻っていった。


「……俺が彼女のご飯を運びます。二人は食事をしていってください」


「…………エイジ」


ぎゅっと服の裾を力強く握りしめた凛明。その表情は……酷く歪んでいた。


「……私、紗耶香にひどいことしちゃった……?傷つけちゃった……?」


「……凛明はなにも悪くないから安心しろ」


今にも泣きそうになる彼女の頭を2回優しく叩いてから、お盆を用意して彼女のご飯を乗せていく。


「じゃあ栞菜さん。凛明のことお願いします。俺は紗耶香のご飯を持っていくので」


「……分かりました」


栞菜さんも凛明の頭の撫でながら返事をしたのを確認してから、俺は彼女の部屋にご飯を持っていくべく、紗耶香の部屋に向かうのであった。





「紗耶香〜いるか〜?入るぞー」


いつもの部屋の前のはずなのに、そこから溢れ出す負のオーラを感じつつ、彼女の部屋に入っていく。


「……エイジさん……」


そこには、ベットに俯きながら目を赤く腫れていた紗耶香の姿があった。俺は彼女の隣に座りながら、お盆をのせたご飯を机に乗せていく。


「まだ温かいぞ?冷めないうちに食べてけよ」


「……お腹、空いてません……」


だが、お腹はそうではないみたいだ。ぎゅう〜……と彼女の腹が盛大に鳴り響いた。それを聞かれ、顔を真っ赤にさせる彼女を見て苦笑しつつ箸でおかずを摘み、彼女も前まで届ける。


「ほら、早く食べないとまたお腹が主張するぞ?」


「わ、分かってますよ…!」


俺に抗議するような目線をしつつ口を開けて、そのままご飯を食べていく。


「……美味しいです」


「それなら良かった。腕によりをかけたからね」


そして、彼女に箸を渡していく。彼女も流石にお腹が空いたのか、箸を受け取ってからご飯を食べていく。


「……また、迷惑かけちゃった」


しばらくして再び、嘆くように呟き始める。


「エイジさんに……栞菜さんと凛明に迷惑かけちゃった………嫌われちゃう……」


「…そんなことないから安心しろ」


泣き出そうとする彼女の頭をゆっくりと撫でつつ安心させる。


「凛明に謝ろうな。俺も一緒に謝るから。きっと許してくれるはずだ」


「…………どうして、そこまで優しくしてくれるんですか…?」


彼女の目が何故だと主張するように、俺の目を見て訴えかける。


「いつも、いつもそうです。エイジさんは優しくて……温かくて……私を、見てくれて……!」


「……紗耶香」


「……エイジさん。私、ひとつ決めたことがあるんです」


何かを決意するように彼女はまっすぐと……悲しそうな笑みを浮かべていた。


そして次の言葉を聞いた時……俺は思わず胸が痛んでしまった。









































































































「………………私、配信者を引退します」





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