第55話 男友達との飲み会
朝日が沈み、オレンジ色に広がっていろ夕日の頃、俺たちはスキーを終えて今はホテルにいる……のではなく。
「……ここか?随分とオシャレなところだな」
「あはは。そりゃあ昨日僕が徹夜してでも探したところだからね」
「いや、徹夜してでもって……相変わらず酒好きだなお前」
「大人っぽいって言って欲しいな」
今はバーと表現してもおかしくないオシャレなお店でワインを注文している。
棚には数多くのお酒が並んでおり、シャカシャカと店員がシェイカーを振っており、二つのグラスに混ぜたであろうお酒を注いでいた。
「今回はウォッカにしてみたよ。あんまり酔うわけにはいかないからね。さっぱり行こうよ」
「……勝手な男というか、気が利く男というか……」
どうやら早くに頼んでたらしい。へへっ、という彼の笑みにため息を吐きつつも渡してくれたグラスを持つ。
「じゃあ……旅行の記念を祝って乾杯」
「……乾杯」
そしてグラスをぶつけ、十分に香りが充満したお酒を飲み干す。
他のお酒と比べてさっぱりとしていてシェイカーにより混ざり合った風味が鼻に通り、美味しさが増している。
「……美味いな」
「でしょ?いやーお酒好きの僕からしたら大収穫だったよ」
あははと歯を見せながら爽やかに笑う親友を横目で見て苦笑しつつも再び飲む。
「君も案外飲むじゃないか。もしかしてお酒好きに目覚めたのかい??」
「無茶言うな。未だにお酒は慣れないんだよ……ただここのお酒は美味しいからな」
……今度栞菜さんに教えてもいいかもな。もしかしたら二人とも、お酒好きということで案外気が合うかもしれないし。
「それで、生活はどうなんだい?企業を設立したとはいえ、余裕ではないんだろ?」
「あ、あー……うん。なんとか生活してるよ……」
……流石に栞菜さん達に養ってもらっていますだなんて言えるわけがない……。
思わず顔を逸らしてしまう。
「どうしたんだい?そんな変な顔して?」
「い、いや……まぁまだ余裕とはいえないからな……はは」
「……そうかい。真中が心配していたよ。祐介大丈夫かしらって心配してたからね。何かあったら頼ってよ。いつでも力になるからさ」
「あーうん……ありがとう宗治……」
……純粋に心配してるところ悪いけど、大丈夫なんだよなぁ……なんかどことなく罪悪感が感じてしまう……。
「……うーん……なんか変なんだよなぁ」
「な、何がだ?」
「……ねぇ祐介。君って……シャンプーでも変えたかい?」
「……えっ?どういうことだ?」
「あ、いや。なんでか君から甘い匂いを嗅ぎ取ってね……前の君ならここまでいい匂いしなかったと思うけど」
「特に変えてないけど……」
自分の腕を嗅いでみる。
……いつもと同じ匂いな気がするけど。
「それに……どうしてか彼女たち……栞菜さんたちも祐介と同じ匂いがするんだよなぁ」
「…………えっ?」
それを聞いて理解した。もしかして……栞菜さんたちと過ごしている間に匂いが混ざり合ったのか。
「……どうしたの?そんな気まずそうな顔をして」
「い、いや……なんでもない」
……これからはシャンプーを変えよう…流石にまずい気がする。
「まぁいいや。そういえば祐介……君って彼女でも出来たのかい?」
「なんだ急に?」
「いや、なんか聞いてみたいと思ってね。君って意外と片隅に置かないからね」
「はぁ……そう評価してくれるのはありがたいけど、俺にはそんな魅力なんてないよ」
「……ふざけてるのかい?」
「なんでそう言われなきゃいけないんだよ。そういうお前こそどうなんだよ?」
「僕は配信者だよ?君みたいに簡単に恋愛なんてできっこないじゃないか」
「……大学だとあんなに告白されたのにか?」
「あっはっは!昔の話さ。まぁ、ファンなら今も継続して増えてるようだけどね」
「……流石はモテ男だな」
「よしてくれ。照れるじゃないか」
……変わらんなこいつは。昔に戻ったみたいに関わっていると楽しくなってくる。
「これからもよろしく頼むよ、親友?」
「……仰せのままに」
そうして、俺たちは久しぶりに男の時間を楽しんだ。
一方、俺たちが飲み会をしている頃……ホテルでは……。
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