第51話 観光


「うわぁ……凄い綺麗……!」


感銘を受けている紗耶香がスキー場及び雪山を見ている。


他の人たちもその圧巻とした景色に言葉を失っているのか、誰も声を発さない。


荷物をそれぞれの部屋に置いてきたところで、今俺たちは観光も込めてたくさんの場所を周っている。


その中でも、名物の一つであるスキー場を見ているのだが、これもまた凄い。


山全体が雪で覆われているという白銀の世界に様変わりしており、今日スキーをしにきたであろう人たちはスノーボードに乗って滑っている。


「……凄い……けど、流石に寒い……」


「そうですね……上着を着てきたとはいえまだマシですけど……」


そう言って身体をさすって、寒さを和らげようとする凛明と結奈ちゃん。


「なによ凛明。これぐらいで寒がってたら明日スキーなんて出来ないよ?」


「……バカは風邪を引かないっていう……紗耶香は感覚が鈍感だから、寒いと感じない」


「ちょ、ちょっと!それってどういうこと!?私が馬鹿って言いたいの!?」


「あ、あはは……」


いつも通りに姉妹喧嘩を始める二人に結奈ちゃんも苦笑している。

その光景を見た栞菜さんははぁ……と呆れたようにため息を吐いていた。


「はい祐介。これホットドリンクだよ……二人っていつもあんな感じなのかい?」


「あぁ。大物だから凄いと思ったか?」


宗治からホットドリンクが入った缶を受け取りながら答える。


「……なんだか、人間味に溢れてるね」


「だろ?お前らと一緒さ……ほら、そこにいる真中なんて見てみろ。子供みたいに目をキラキラさせているぞ」


「あはは。それは確かに。意外と子供っぽい所もあるからね」


そんな真中の様子を相似とともに見ていると、見られていることに気がついた彼女が少しだけ頬を赤らめ……何故か宗治の足を蹴り始めた。


「いたっ!いたたたっ!?な、なんで僕だけなの!?」


「うっさいこのバカ兄貴!そのまま雪に埋もれて死んじゃえ!!ジロジロ見んなぁ!!」


ここでもその仲の良さを見せつけてやがる。流石は生粋の兄妹だな。


「……綺麗ですねエイジさん」


「えぇ、そうですね。なんだか新鮮な気分です」


「明日ここでスキーをするんですよね?私、運動音痴なので出来るかが不安です……」


「そんな心配しなくても大丈夫ですよ。俺が教えるので、楽しましょう?」


「……そういえば、エイジさんってスキーも出来るんでしたね。なんだか何でも屋みたいです」


「栞菜さんの言うことなら一通り聞きますよ」


「あら、それはそれは。とてもいい事を聞きました。ふふっ」


「……冗談ですよ」


真に受けないように彼女に言ってるが……何故だか聞いてる気がしない。なんでだ?


「……栞菜さん。今日一日機嫌が良くないですか?」


「えっ?そう見えます?」


「はい。ずっとニコニコでしたので」


「あ、やだ。それならそうと言ってくださいよ……恥ずかしい……」


「なんだかいつもと違ってとても可愛かったので」


「……きゅ、急にそういうことを言わないでくださいよ……もう」


頬を膨らませているが、栞菜さん。それを可愛いというのですよ。


「……きっと、新鮮な気持ちだからなんでしょうね……旅行に行ったことなかったので」


「そうなんですか?栞菜さんってもっと外に出歩くイメージがあったから驚きです」


「……家庭の事情でそんな時は滅多にありませんでしたから……だからきっと、楽しいんでしょうね……それに」


ゆっくりとこちらを向いて微笑んでる栞菜さんに首を傾げる。


「……安心出来るんです」


「安心?」


「はい……エイジさんがここに居てくれる、そばで見守っててくれる……そう思うと自然と心がポワポワするんです……不思議ですよね」


「……栞菜さんにそう言ってくれると嬉しいものですね」


「ふふ。ありがとうございます……この前のお返しですよ」


「ん?お返し?」


俺、彼女になんか言ったか?


「……そ、その……エイジさんは……私のものって……」


「??」


「と、とにかく!!」


急に大きな声を出してきた栞菜さん。何故か寒いはずなのに頬は赤い……いや、寒いから当然なのか?


「……旅行、楽しみましょうね。エイジさん……!」


「……そうですね。思いっきり楽しみましょう」


「はい!」


こうして、俺たちはもうしばらく雪景色を眺めて日が暮れたところでホテルへと帰るのであった。






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