第50話 ポテンシャル
「さ、さぁ上がりましょ!早く荷物を置いてかなくちゃ!」
「……なんか嬉しそうだな」
謎のじゃんけんの大会をし終えた後の真中が妙に機嫌が良さそうにしてるな……何があっのか?
「当然じゃない。だって……ゆ、祐介と一緒の部屋になれたんだもの……」
「お、おう……?」
身体をもじもじとさせてそんなことを言ってくる。その仕草が妙に女っぽくて……いやそれが普通か。
「……変なこと考えてないわよね?」
「……そんなことないさ」
「ちょっと!なに顔逸らしてるのよ!貴方、そういう時に限って余計なこと考えてるじゃない!」
「なんでもいいだろ?とにかく中に入るぞ」
いつも通り軽く真中をあしらってから部屋の扉を開けて……おぉ……。
「……凄い豪華だな」
「え、えぇ……つい躊躇しちゃうわね」
そこには普通のホテルとは比べものにならないくらいの広い部屋があった。
それに少し和風寄りなのな、床がすべて畳になっており、窓も広大な景色を見ララくらいには大きい。
「……もしかして私たち、凄い所に泊まっちゃったのかしら……」
「……考えないようにしよう」
そういえば紗耶香達に全部任せてあったけど……あの人たちもしかしてスペシャルコースとか頼んでないよな……?
「……ね、ねぇ祐介」
「ん?なんだ?」
「その……今日おしゃれしてきたの……どう、かな?」
ロングスカートを少しだけ持ち上げて羞恥心を感じてるのか、頬が染まっている。
見た目は……確かにいつもは髪をまとめ上げてるけど、今日は珍しくロングなんだな。
服も白色のカーディガンを羽織っていて少し大人っぽく感じる。
「……確かに、いつも以上に磨きがかかってるんじゃないか?綺麗だぞ」
「〜〜!?!?そ、そう……それなら、良かった……ありがとう……」
……変な奴だな。人が褒めたってのに顔俯いてしゅんとしてどうしたんだよ……女心というのは未だに分からん。
「……そういえば配信用のカメラも持ってきてるんだな。ここでも撮影するのか?」
「えっ……え、えぇ。一応スキー道具も持ってきたわけだしね。ここで撮らなきゃプロの名前が腐るわ」
プロ意識ね……真中の中に入ってあるカメラを見て思う。
栞菜さんや紗耶香、凛明も撮影用のカメラとか道具持ってきてたし……やっぱり、配信者の意識ってあるんだな。
「俺も何か協力するか?」
「あ、なら撮影してくれない?祐介って運動神経いいんでしょう?私たちが滑ってるところを撮るなんて出来るんじゃない?」
「いや無茶を言うな。そんなこと出来るわけないだろ?普通の人間だぞこちとら」
「………ふーん………普通ねぇ……」
「な、なんだ……?」
じっ……と目を細めてこちらを見てくる真中に思わず怯んでしまう。
「……祐介。貴方……配信者にはならないの?」
「配信者……?何言ってるんだよ。俺にはそんな才能がない——」
「——嘘ね」
「……どうしてそう思う?」
「聞いたわ、栞菜さんたちから。エイジって名前で活動してたそうじゃないの」
「……それがどうした?」
「貴方の動画、見てきたわ……正直に言って凄く面白かった。私が思わず嫉妬しちゃうほどにね……その才能をまた開花させる気はないの?」
「……こっちが合ってるからな。配信者は俺には似合わないって思っただけだよ」
「……栞菜さん以上のポテンシャルを秘めているって言っても?」
「そうだな。俺は裏方の方が割にあってる」
彼女にはっきりと言い放つ。真中は過大評価してないか?でも、他人にそう思われるのも悪くないな。
「……そう……なんだか勿体無いわね」
「勿体無いなんか言うな。あの時やめた事を後悔しちゃうだろ」
「だったら続けなさいよ。今でも間に合うわよ。なんなら、コラボ配信でもしましょうか?」
「遠慮しておく。配信者はやり甲斐はあるけど、今の方が幸せなんでな」
「……釣れないわね」
「まぁな。そういうことだからお断りさせてもらう」
「……はぁ、分かったわよ。でもまた配信やるなら真っ先に私たちに言いなさいよね」
「はいはい。考えておくよ」
そんな会話をしてるといつの間にかドアがノックされた。多分栞菜さん達なんだろう。
「じゃあそろそろ行くか」
「……そうね」
そうして俺たちは荷物を置いて、部屋を出ていくのであった。
◇
(……祐介)
先ほど見た彼の……祐介の表情。それが彼女の脳裏に深く刻み込まれていた。
(なによ……貴方、今の方が幸せだって言ってたじゃないのよ……なのになんで……)
——そんな、悲しそうに笑ってるのよ。
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