第46話 私の夢は……〜結奈〜


あの日、ブリティアを辞めてエーブルに入社から数日が経った。


まだ月日が経ってないため、世間はまだ認知してないらしいが、栞菜さんたちを中心に様々な宣伝をしたことで日を追って人々から知られるようになった。



私は画面の前にいる芸能人の人やアイドルが好きだった。


人々に感動を与え、舞台で輝いている……そんな人みたいに私はなりたかった。


でも、元々才能が平凡だった私にはそれが無理だと時間につれて現実を突きつけられるように分かった。


だから、せめてそんな人たちのサポートをしたい。世間に面白いものや楽しいものを提供できるようになりたい……そんな思いから私はAOブリティアに入った。


最初は楽しく仕事が出来たと思う。でも……周りを見れば仕事に誇りやプライドなどない人ばかり。


私ばっかりに言い寄ってくる人もたくさんいた。

その時から、色々失望をしていたかもしれない。そこから生まれたのが……私の毒舌だ。


そんな人たちと話なんてしたくなかった。だって夢も希望のカケラもない人たちとなんて話すなんて……私には無理であった。


それで毒舌魔女と呼ばれようとも構わないとその時は思った。


そんな時に、私の行進育成の担当として……あの人と出会った。


どこにでもいるような平凡そうな人……それが私の初めの印象であった。


だから、同じだと思った。この人もどうせ、私のことを狙って……。


でも、そんな思いとは裏腹に彼は……先輩は私とその夢に向き合ってくれた。


最初は何かを言うたびにオドオドしていたり凹んでいたりもしたけど、先輩に夢を語ったことで少しずつ彼は向き合ってくれて一生懸命になってくれた。


嬉しかった。私の見た目ではなくその夢を……私の本当の姿を見てくれたのは、会社に入って彼が初めてだったから。


先輩の元で学びたい。もっと、もっと彼と一緒に世間にたくさんの感動を与えたい……そう思ってた時に、彼はここから去った。


その時の私は癖にもなり始めている毒舌なんて吐いてる余裕などなかった。それぐらい……とてつもない喪失感と悲壮感に覆われたからだ。


それと同時に襲ってきた皇グループによる仕事の削減。


私のやりたいことはどんどん奪われていった。夢もやりがいも……先輩もいなくなった私には……会社そこが地獄としか思えなかった。


「結奈ちゃん!少しこっちを手伝ってくれないか!」


「あ、はい!今行きます!」


だから、彼と再会出来た時、そこから救いだしてくれた時は本当に嬉しかった。そのせいで涙も出たこともあったけど……。


今目の前にいる先輩……今では裏方で私たちをサポートしてるようだが、そんなもの私には関係ない。


彼に八つ当たりをした時だってあの時みたいに私と向き合ってくれて……助けてくれた。


先輩は取り戻してくれたのだ。夢とやりがい……私にとってかけがえのなく大きなものを。


「ん?どうしたの結奈ちゃん。そんな嬉しそうにして」


「えっ?そうですか?きっと先輩の気のせいですよ〜目が悪くなったんじゃないですか?」


「勘弁してくれ。まだ老眼になんてなりたくないぞ」


「……ふふっ」


なんでだろう。彼と……先輩と話すととても楽しい。

この気持ちはなんなのだろうか?仕事のことを話してるわけでもない、ただありふれたような会話。


私は、先輩と話してとっても楽しいと……嬉しい思ってるのだ。


「そういえば先輩。紗耶香ちゃんに聞いてみたことがあるんですけど……」


「ん?なにかな?」


「……先輩って昔ユーチューバーだったんですね」


「えっ!?う、うそ……か、彼女から聞いたの?」


「えぇ。先輩のことについて知りたいって聞いたら教えてくれましたよ……エイジのこと」


「……そ、それを結奈ちゃんに言われると羞恥心が半端ないんだけど」


……ふーん。


「……エイジせ〜んぱい♪」


「や、やめてくれ……!それは俺の黒歴史なんだ!」


「えっへへ〜いいこと知っちゃった♪ふふっ」


「あぁ……ついに結奈ちゃんに知られてしまった」


「えっ、なんですか?私には知られたくないって」


「い、いや……だってなんか先輩の威厳が無くなっていくから……」


「そんなもの先輩には元々ないので大丈夫ですよ」


「なんか酷くない!?」


「ふふっあはは!!」


あぁ、なんでこんなにも楽しいのだろうか。この胸の高まり、今まで感じたことがない気持ち……それは、今の私には分からないけど。


「せーんぱい!」


「な、なに……?」


きっと……彼と一緒にいれば知ることが出来るだろう。

そう思えば思うほど、私はこの先が輝いて見えるのだ。


「これからも、よろしくお願いしますね?」


——私の夢は今でも変わらない。

たくさんの人たちに画面を通じて感動や笑いを提供すること。



そして……先輩、いつか貴方の隣で胸を張って歩くことだ。




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《全てを失う悲劇の悪役による未来改変》


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