第45話 大物の配信者たち
「……それでは、株式会社エーブルについて会議を始めたいと思います」
少し緊張しているようにみえる宗治の声がオフィス内に響き渡る。
そして、その中には何故かいつもより目つきが鋭い栞菜さん達やあわあわ……としている真中と結奈ちゃんがいる。
「今回、祐介の提案のもとこの株式会社を設立させてもらいました…ってこんな堅苦しいのは似合わないな」
と言って彼は苦笑しながら、いつも通りの口調に戻す。
「みんなは祐介に集められた人たちなんだよね?じゃあそれぞれ自己紹介をしようかな……まずは僕たちからだね」
そうして、宗治と真中がみんなの前に立っている。
……真中、そんな緊張しなくてもいいんだぞ?
「世間からは芦田兄弟で知られている宗治と……」
「……ま、真中です。よ、よろしくお願いします……」
自己紹介が終わり、少数の拍手が響き渡る。
「……あ、あの!芦田兄妹ってほんとにあの宗治さんと真中さんなんですか!!」
「え、えぇ……そうだけ、ど」
「わぁ…!私、ファンだったんです!あとでサインしてください!!」
いつもと様子の違い、目がキラキラの結奈ちゃんと少し控え気味の真中が会話している。
なんだか、いつも違う二人の様子に和んでしまうな。
「あはは。その前に自己紹介をしてくれると嬉しいかな……」
「あ、そうでしたね。んん……ゆっくり実況者のリアナとして活動している安藤結奈です。皆さんよろしくお願いします」
手を前に重ねて勢いよくお辞儀をする彼女の姿が新入社員の歓迎会を思い出される。
感慨深いなぁと思ってると……何故か凛明と紗耶香の目つきが鋭くなるのを感じてしまった。
栞菜さん言わずもがなだ。
「さ、3人とも……?」
な、なんでここまで敵意丸出しになってるんだ……?
「じゃあ、その……そこにいる皆さんも自己紹介をお願い出来ますか?」
その様子に思わず怯んでいる様子の宗治が3人に話しかける。
話しかけられた3人はお互いに目を合わせてから、席に立ち上がりみんなの前に立つ。
みんなは注目……特に栞菜さんのことを注目してるのか視線が一気に彼女の方に集中された。
「……皆さん、初めまして。世間からはゲーム実況者KANNAとして活動しています。宮本栞菜です」
「Vチューバー……天晴あおいとして活動している由桐紗耶香です」
「……皇凛明……スカーレットです」
たったそれだけ。しかし、元々のキャリアのせいなのかそれだけでも結奈ちゃんたちには衝撃を与えていたようだ。
「……ゆ、祐介……!あれ、あれ本当にKANNA……!?」
「うん。正真正銘、本物のKANNA」
「う、嘘……!ど、どうしよう!緊張してきたわ……!」
「いや真中。お前が緊張して……ん?」
「せせせせせせせせせせ、先輩!?め、目の前に……目の前にスカーレットが!?天晴あおいが!?」
「……とりあえず落ち着こうか二人とも」
宗治なんて見てみろ。ずっと黙ってて……あ、いや違う。あれまさか言葉発してないだけで凄い緊張してるんだな。
……改めて三人とも凄い配信者なんだな。
「……一つ伝えたいことがあります」
すると、栞菜さんが何か伝えたいことがあるのか、そのように言ってくる。
「……皆さんとは、仲良くしていきたいと思っております……」
「……ですが、今そこにいる祐介さん……エイジさんは」
「……誰にも、渡さない……肝に銘じて」
「「ひぃっ!?」」
いつもよりも数段低い三人の声に思わず二人が怯えてたような声色を出してしまう。
「さ、3人とも?お、落ち着いてください。どうしたんですか?いつもよりも態度が冷たい気が……?」
「……ご、ごめんなさいエイジさん……でも、何故か人前に立つと……」
……ん?あれまさか……。
「……緊張してるの?」
「だ、だだだだってここここんな人前に立つことなんてほとんどないんですよ!?そんなの緊張なんかするに決まってるじゃないですか!!??」
「……………胸が痛い……助けてエイジ…」
「………」
……あぁ、そういうことね。てか画面外では全然喋れたじゃないですか。
……それとこれとは別なのか?そう思ったら苦笑してしまう。
「とりあえずまずは席に座りましょう。帰ったら好きなもの食べていいですから」
「ほ、本当ですか……?」
「あ、じゃあ私エイジさんのハンバーグ食べたいです!とても美味しかったので!」
「……カレーもいい……とても美味」
とりあえず、3人はこれでなんとかなったようだ。
今はいつも通りに会話が成立している。
「……な、なんだか個性的な人ね」
「まぁ、とてもいい人たちではあるからね」
「ふーん……というか祐介。エイジってなによ?貴方そんな名前で呼ばれてたの?」
「あー……まぁあだ名みたいなもんだ」
「?ならいいけど……それにしては変なあだ名ね……」
エイジという名前に疑問を持っているのか微妙な顔をして首を傾げている。
どうやらこっちもいつも通りになったようだ……そんなことより。
「結奈ちゃん、そんなぼーっとしてないで早く席に座るよ。宗治、お前がそんな様子でどうするんだ、話したいこともあるから早く始まるぞ」
「……あ、す、すみません」
「衝撃でついね……本物を見られるとは」
……これ、大丈夫かな?ていうかみんな、凄い緊張してたんだな……配信の時とは大違いだ。
「……祐介、進行をお願いできるかい?なんだか緊張してきて進められそうにないや」
「お、お前……」
……はぁ、仕方ない。ため息を吐きながらも席に立ってみんなの方に向き合う。
「じゃあ皆さん、早速この会社について話し合いましょう」
——世間が注目する会社にするために、ね。
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