第43話 心配するな


三人のコラボ配信から数日が経った。


今のところ、あの上司が俺達に被害を被るような事はしてはいないが、まだ完全に安全とは言い難い状況だから油断は出来ない。


それと栞菜さんについてだが見た限り、なんともない様子だ。

彼女もその件については覚えていないらしく、起きたときに俺の手を握ってたことに嘸かし驚いていた。


トラブルはあったものの、俺の目論見通りに栞菜さん達は勿論、リアナと芦戸達のチャンネルも少しずつだが人気が広がっていた。


「……それで祐介。君の資料を見て一通りは理解したけど」


現在は芦戸兄妹の家で真中と宗治と話し合っている所だ。


「えっと……私たちが経営するの?」


「あぁ、前にお前達やりたがってただろ?俺はあくまで裏のサポートだ。表はお前たちの任せる」


「それはそうだけど……中々に厳しいんじゃないか。僕たちだって働いてる身なんだし……」


……そう言ってる割には宗治、お前手が震えてるぞ?お前のその癖はよく分かっている。心の底ではやりたくて仕方ないんだろ?真中だって見てみろ。目がキラキラしてるじゃないか。


でも現実的に考えて、失敗したときのリスクは大きいと考えてるって所か。


「……随分と消極的に考えてるんだな宗治」


「…なに?」


宗治の眉がピクリと動いた。こいつ、案外煽りには弱いんだよな。


「前のお前なら即時にやると答えたはずだ。真中でそうだ、何ここで臆してるんだお前も。らしくないぞ」


「で、でも……」


……もう一声って所かな。二人の様子を見て徐々に心が揺れ動いているのが分かった。


「なぁ、覚えてるか。大学のときにユーチューブを始めようって話」


「あ、あぁ。あのときのことか……今でも鮮明に覚えてるよ。懐かしいよね」


「……えぇ。まさかここまで成功出来るなんて思いもしなかったわ。そういえば、貴方が私たちにやってみないかって勧めてくれたわよね」


「そうだな。その結果お前らは無事芦戸兄妹として成功させてみせた、俺の提案を受けてな……もう言いたいことは分かるだろ?そんな俺が提案してるんだ、成功するのは目と鼻の先だろ」



「……そうだね。確かに君の言う通りかもしれないね」


「……ねぇ宗治兄、やってみない?私、今心がうずうずしてるの。こんなのあのとき以来だわ」


「真中もそう思うのかい?ははっ、やっぱり僕たちは生粋の兄妹みたいだね」


「……決まりだな」


二人の顔が生き生きと輝いて見える。きっと本当にやりたいことが出来て高ぶってるのだろうな。その様子を見て俺は話を続ける。


「心配するな。今度は俺がきっちりと裏でサポートしてやる。経営者のメンタルケアも大事だろ?」


「……私達の前からいなくなったりしない?」


真中が少し不安そうにしながら、そんなことを聞いてくる。何故か宗治の顔も真剣になっている。

まぁ俺は立場上、栞菜さんの所有物ばわけだが……。


「少なくとも、お前達が必要なときにはいるようにはする。だからそんな不安そうにするな」


「……そう。なら貴方の言葉を信じるわ。また、よろしくね」


「あぁ、こちらこそ」


彼女の手を取って握手をする。不思議と彼女が嬉しそうに頬を緩めた気がするが……きっと気の所為だろう。


「おっと、僕の存在を忘れてもらったら困るよ二人とも」


「あら、そこにいたのね宗治兄。空気になったかと思ったわ」


「相変わらず、僕には冷たいのね真中……はぁ、僕と祐介のこの差は一体なんなんだい……?」


宗治のしょぼくれた声が家中が笑いの空間に変わった。


これで二人のことについては大丈夫だろうな。経営のことは任せて……あとは一番大事な子を迎えにいかないとね。


今も俺の言葉と自身の夢を信じて頑張っている……後輩ゆいなちゃんをね。




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