第39話 コラボ配信〜コメント返信


「今日はな、ななななんと!最近有名実況者のKANNAさんと歌手のスカーレットさんに来ていただきました〜!いえーい!!」


紗耶香はパチパチと拍手するとともに、アバターを左右に動かしている。二人もそれに釣られていぇーい!と彼女と一緒の動作をしている。


「いやぁ今日はわざわざうちのチャンネルに来てくれてありがとうございます二人とも」


「いやいや、それはこっちのセリフだよ!あの天晴あおいさんのチャンネルに招待された時はびっくりしましたよ」


「……正直、私がここにいていいのかが不安」


「いやいやそんなこと言わないでください!スカーレットさんとコラボできて私、凄い嬉しいので!」


そんな会話が繰り広げられる。そんな中でもコメントは興奮が収まらないのか、次々とコメント欄に表示されていく。


:あ、あおいのチャンネルにKANNA……。


:これどういう状況?今来たけど二人がいるけど……これって夢?


:歌姫のスカーレットだ!あおいと一緒に歌って欲しい……!


:あおい……何かやらかしたか?


「ちょいちょいちょい!今うち見たからね?何もやらかしてないわ!二人にDM送って貰ってコラボ配信しませんかって送ってオッケーを貰ったの!どうよ!うちがどれだけ凄い人かみんな分かったでしょ?」


:……ソウダネ


:なんかパッとしない


:微妙w


「えっ!?なんでそんな薄い反応なのみんな!?」


相変わらずのコメントとの口論。それを見て二人は少し苦笑してる。


「まぁいいよ。まぁ今回はね折角二人がいるんだし、特別な事でもやりたいなぁって考えてみたの。ということで……!」


そして、紗耶香は今回やる事を言い放った。


「初めてのコメント配信をしていきたいと思いまーす!」


:来た!コメント返信!


:待ちくたびれた!


:一体どんなものがくるのか……。


「今日はね。事前に私がXにあげたと思うけど、みんなにコメントを募集したから、二人と一緒にコメントに答えていくよ!」


「コメント配信かぁ。私、ゲームしかやってきてないからしたことないんだよなぁ。ちょっと新鮮で楽しみだよ……!」


「……答えられるか分からないけど……頑張る」


「二人もそう言ってることですし、早速始めていきましょう!まずはこちら!」


あおいが最初のコメントを読み上げる。


「あおいさんうぽつです。今日はとてもいい天気ですね。こんな日にはどこかに出かけたくなるお年頃です。私は今釣りをしに車でとある湖に行っております。出来れば大物が釣れれば嬉しいなぁ……そんなあおいさんに質問です。あおいさんってなんで名前が天晴あおいなんですか?それの由来とかきっかけを教えてくれると助かります……」


「名前の由来……確かに、あおいさんの名前の由来は気になるかも」


「……聞いたことない……なんで?」


「あぁ……なるほどなるほど。思ったより普通のコメントだったね。いやこれね、確かに話したことないなぁって思った」


そう言いながら、思い出に浸ってるように紗耶香は話し出した。


「……ある人がこう言ってくれたのがきっかけなのかな。君の言葉で自分は元気になった。快晴の空が現れたように心が軽くなったってね……その時がきっかけなのかな。うちそれが凄い嬉しくて、今でも覚えてるの」


「へぇ……それって誰の配信なの?」


栞菜さんがそう言うと紗耶香はこちらをじっと見た後、にししと笑い出して……。


「……それは……ひ・み・つ!」


「えぇ!教えてくれないの!?」


「……話したっていいじゃない」


「いやいや。秘密のある乙女って魅力的でしょ?こういうのは言わないのがいいんだよ」


:あおいが……?


:魅力的?


:あおいはバカっぽいのがいいんだよ!


「ちょ!?そこまで言うの!?んもぉ……こんなの捌いてたらキリないから次いくよ!」


釈然としない様子のまま、彼女は二つ目のコメントを読み上げる。


「やぁあおい。元気にしてるかい?僕は元気さ。また君と一緒にランデブー出来るの日を楽しみにしてるよ………」


「あはは……こういうコメントもあるよね?」


「……ハズレのコメント」


「まぁ……まぁまぁまぁこんなコメントもあるよねぇ……いやほんとに誰?いつも通りならツッコむけど、それだと進まないから今回はさささっと行くよ」


ゴミ箱のごとく投げ捨てたコメントを横目に次のコメントを読み上げる。


「うぽつです。あおいさん歌がうまいですよね?ぜひ歌が上手くなるためのアドバイスを教えてくれると嬉しいです……煽ってんの?うち、歌上手くないんだけど?」


「ま、まぁまぁ。丁度ここにスカーレットさんがいるから答えて貰おうよあおいちゃん?」


「……そうだね。じゃあスカーレットさん、歌が上手になるために大事にしてることとは!」


「………毎日ひたすら練習する」


「えっと……具体的には?」


「……ランニング1キロ。歌のレッスン3時間、肺活量上げるために、またランニング5キロ、有名な歌手の動画を見るのに1時間、そしめランニング10キロ……これ大事」


「………とりあえず、毎日ひたすら練習することが大丈夫らしいよ?」


「……あおいもKANNAやってみる?」


「い、いやぁ……うちは遠慮しとこうかな……あはは」


「……私はやってみたいんだけどな」


「えっ、マジっすか?」


「?うん……?」


「………じゃあまたの機会にみんなでやる」


「うげっ!とんでもない約束をされてしまった……」


:草


:あおいがんばがんば。


:毎日やってんのこれ……?


「………とりあえずこの話はまた後でね。じゃあ次!」


「えぇっと……好きな配信者は誰ですか?」

「エイジさん!」

「エイジ」

「………あ、あはは。二人が言う前に言われちゃった」


二人のあまりの即答っぷりに思わず紗耶香が苦笑してしまう。それにしてもここで俺の名前を出していいのか?というか栞菜さん?少し目がキラキラしてませんか?


「いまはもうやめちゃったんだけどね。昔、エイジさんっていう配信者がいたの!それで私、ファンになっちゃって……あぁ、今でも思い出しちゃうよ!エイジさんの一つ一つの配信!また見たいなぁ……」


「……私も最近見たけど……これはおすすめ。みんな、ぜひ観よう」


:ま、まさかのエイジファンがここにも……。


:ほんとにエイジって何者なんだ……?


:もしかしてエイジグループでも出来るのか?


「あ!折角ですからみんなでエイジさんのいいところ話してみない?」


「わぁ!それ凄くいいね!一回してみたかったの!」


「………ん。私もやったことないから楽しみ」


そうして、突如として始まったエイジこと俺の話。

それをまた視聴者は呆れたのと同時に、二人も紗耶香と同じエイジファンということで新鮮な気持ちで見ていた。


俺はというと……正直な話、ここから出ていきたかった。


そして、そのままコメント配信からエイジのいい所という配信に変わっていき……なんとそのまま配信は終了した。


………これ、成功って言っても大丈夫なのかな……?



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また、こちらの作品の方も見てくださると嬉しいです。


《全てを失う悲劇の悪役による未来改変》


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