第37話 コラボ前の配信者たち
エイジこと祐介がいない頃、家にいた彼女ら....栞菜達はコラボ配信について話し合っていた...しかし。
「...どうしようかしらね...コラボ配信」
「思いついたことは多いけど....なんかこれってものがないですね....」
「....どれもなにか違う」
「もぉおお!!どうするんですかこれ!!これ以上何も思い浮かびませんよ!?」
紗耶香の叫び声が家中に響き渡った。
「そうは言ってもね....ゲーム配信だと私が無双して終わるだろうし....」
「....歌は......冷静に考えたら、初コラボだと微妙な気がする」
「悪かったですね!私、ゲームも下手なら歌も音痴なんですよ!!」
「....別に....紗耶香のことは言ってない....半分は」
「半分はってことはもう半分は私のことじゃない!!」
「....二人とも落ち着きなさい。争い合っても無駄よ」
「うぅ....」
「....むぅ」
栞菜が牽制し合ったことで二人は落ち着き、再び静寂がこの空間を支配する。
「...やっぱりエイジさんに頼るしか...」
「それはだめ」
「....凛明?」
「....そうね。これ以上負担を掛けさせてはだめね....私たちもあの人に我儘言っちゃってるもの」
紗耶香はその二人の言葉を聞いてハッとして、顔を俯かせる。
「そう、ですよね....私達、エイジさんのことを引き止めたりして....迷惑掛けてるんですよね」
「....うん....だからこれ以上.....迷惑掛けちゃだめ....」
「....ふふっ」
紗耶香と凛明の会話を見ていた栞菜が突然何かを思い出すように笑い出した。
「栞菜さん?」
「ごめんなさい...なんだかエイジさんがここにいるのが当たり前と思ったらつい口が緩んで....」
「...そうですね...前まで遠い存在だと思ってたのに...なんだかおかしいですね。今じゃ一緒に暮らしてるんですから」
「....二人はどうしてエイジのことが好きになったの?」
凛明にとってエイジが明確に大事な存在になったのはこの家に来てからだ。そんな彼女にとって、出会う前なのにエイジという存在が大きくなったことが気になっていた。
「...何年か前に、あの人が私たちと同じように配信をしてたの。それを見続けたのがきっかけかしらね」
「....いつから見てたの?」
「私は最初からよ。紗耶香は私が勧めてから。ね?」
「うん.....でも好きになったきっかけは違うんですよ。知ってましたか?」
「そうなの?てっきり見てたら夢中になっていたとかだと思ってたけど....そうじゃないのね」
「栞菜さんほどガチファンではないですよ〜でも....私のことを見てくれたのがあの人だけだったから....」
「....二人とも....なんだか重い」
「それは凛明も同じでしょ?」
「そうだよ。たまにエイジのために歌ったとか独り言で言ってたの、私知ってるからね?」
「......な、なんでそのことを....」
「知ってないとでも思った?にしし。甘いよ凛明、人って意外とそういうこととか知ってるんだから」
「....なら私は紗耶香がむっつりスケベだということをエイジに伝える」
「ちょいちょいちょいちょい!!一体なにを言おうとしてんの!?やめてね?そんなこと言ったらエイジさんに冷ややかな目で見られちゃうから!!」
再び紗耶香と凛明が言い争うことになった。その光景を見て栞菜もまた笑みを深める。
(...そういえば、最初のエイジさんの配信もこんな感じで視聴者のみんなと言い争ってたっけ。その光景を見るのが何気に好きだったのよね....)
思い出させるのはエイジの始めの配信。最初の配信ということもあり、そのコメントのほとんどがアンチのものだったのを、エイジのど怒涛の口撃により、ある種の面白さへと発展していった。今でも覚えてる....彼の配信を。
(...また、やってくれないかしら....あの人の配信...もう一度見てみたいわ)
「ちょっと栞菜さん!聞いて下さいよ!また凛明がエイジさんに私の変なことを言いふそうとしてるんですよね!どうにかしてください!?」
「....仕返し。紗耶香に恥ずかしいこと聞かれた....道連れ」
「それ私何も悪くないですよね!?聞こえたんだから仕方ないじゃない!?」
「...全く、二人とも。そんなことは後にしなさいな。今はコラボ配信でやる内容を考えるわよ」
「....ん。なら今はそうする」
「ちょ、ちょっとまって。それって私の秘密言う前提?凛明、謝るからそれだけはエイジさんに言わないでぇえ!!」
―――彼の知らない所で、配信者たちもまた考え、悩み、笑い合う。
そんな中でも大物配信者達のコラボ配信は間もなく....その時が確実に近づいていく。
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