第36話 芦戸兄妹の配信
翌日、今日は朝早くに家を出て、今はとあるプール場にいる。
その理由として、大規模企画をやるとのことだ。朝から連絡来た時はびっくりしたよ....思わず会社のことを思い出してしまった....。
「宗治〜!これでいいか!?」
「オーケーだよ祐介!僕が合図をしたら入れてくれ!」
宗治のその言葉を聞いて、今手に持っているそれ....水風船を持ちながら頷く。
「じゃあ真中。動画の撮影するか準備してくれ」
「え、えぇ....へ、変じゃないかしら?」
「ははっ。祐介の前だからって緊張し過ぎだよ。もっとリラックスに行こうよ」
「.....あんたは気楽でいいわねバカ兄貴....それだけはほんとに羨ましいわ」
そんな会話をしてチラッチラッと遠くからこちらを見てくる真中の姿が映る。
試しに手を振ると....何故かそっぽ向かれてしまった。一体なんなんだ?
「じゃあ始めようか」
そして、宗治は動画撮影用のカメラを起動した。それと同時に一気に二人の顔つきが変わるのが目に見えた。
「はいどうも〜皆さん!兄のソースケです!」
「妹のマナカです!二人合わせて....」
『芦戸兄妹です!!』
声を聞いてるだけなのに豪盛な字幕と演出が映ってるように見える。流石は四年もやってきてるだけはあってか、そこにいるのはベテラン配信者の姿であった。
「はいということでね皆さん。今日の格好見て下さい。なんと僕たち.....水着姿ですよ!」
「そうなんですよ~ほらほら見てみて。じゃーん!可愛いでしょ?」
水着全体を見せつけるかのように真中がその場でくるりと回ってみせる。
「まぁまぁ。そこにいる妹ちゃんは置いておいて」
「ちょっとぉ。それってどういうこと?」
そんな兄妹みたいな語り合いが暫く続く。素の時みたいな乱暴な所はないものの、それでもその光景を見てるだけでも微笑ましくなる。
「それでお兄。今日はここでなにするの?」
「よくぞ聞いてくれたねマナカ。今日はね....ここでとある企画をやろうと思ってるんだ!」
宗治はそう言って、大袈裟に手を広げて規模の大きさを示そうとしている。
「その名も!プールに大量の水風船を入れてみた〜!」
「いぇーい!」
「いやね。この企画は前からやりたいと思ってたんだけどね...中々準備に手間が掛かって出来なかったんだ」
「この企画を実施出来るのは今日まで協力してくれた人達のおかげだよ。ほんとにありがとうございます」
「ありがとうございます」
オジキをして感謝を示す二人とも。そう、今日やるのはドデカイプールに大量の水風船を入れようという企画なのだ。
ここの責任者にもなんとか了承してもらい、今さっきまで水風船を用意していた所だからほんとに労力が凄い...。
「じゃあ早く始めたいので、早速入れていきましょう!お願いしまーす!!」
真中がこちらに向かって叫ぶように言ってきた。どうやら合図のようだ。
俺はそこにあるトラックを動かして、トラックの上にある大量の水風船....最大五万個をプールの中に一気に入れていく。
「うわああああ!!凄い凄い凄い!これ何個あるの!?」
「確か五万はあるって話だっけ......そうこうしているうちにプールがもう水風船でいっぱいになってくよ」
真中ははしゃぎ、宗治はあくまで冷静に分析していく。ただ、衝撃の光景の驚く他なかった。
「お兄お兄!はやく入ろう!私遊んでみたい!!」
「そうだね。僕も入ってみたいし....じゃあ入ってみようか」
二人とも大量の水風船を見て、ワクワクしているのか勢いよくプールみ飛び込んだ。
「うわっ!凄い水風船の量...てぶへぇっ!?」
「あははっ!ほらほらお兄!こんだけあるんだからボーっとしてないで遊ぼうよ!」
「やったな....ほらっ!お返しだ!」
水風船を大量に持って、雪合戦というなの水風船合戦が始まった。
どちらも顔面偏差値が高く、それだけでも絵になるんだから困ったものだ。
「....これがの今の芦戸兄妹か」
....昔から何も変わってないな。大学のときもこんな感じだっけ?俺が裏でサポートして、二人がそれを実施する....あのハイスペックな兄妹だからこそ出来たものもあった。
「まさかもう一回二人のサポートが出来るなんて....」
....なんだか嬉しいな。そんな言葉しか出てこない。
そうして、水風船がなくなるまで二人が散々遊んでいる姿を見守るのであった。
◇
「....ふう、流石にはしゃぎすぎたわ」
「同感。でも久しぶりに本気で遊んだ気分だったよ」
企画が終わった後、二人は遊び疲れたのかその場に座りこんでプール場を見ながらそんな会話をしていた。
「お疲れ二人とも。面白かったぞ」
「....祐介。それほんとに言ってるの?ただただ遊びつくしただけの映像よ?」
「そうか?俺は見てて楽しかったけどな。なぁ宗治?」
「うーん。僕に言われても困るな...でも祐介が面白いって言うならこの企画も成功ってことじゃないかな?」
「...それもそうね。この人が面白いって言ったら物は何故か好評が高いもの」
「おいおい。どういうことだそれ?」
二人にタオルを渡して、昔のように会話を繰り広げる。
「....じゃあ僕は片付けをしようかな。祐介はその場で座っててくれ」
「えっ...でも、お前だって疲れてるはずじゃ」
「いいんだよ。僕は空気が読めるいい男だから...ね?」
「....余計に腹立つわね...さっさと行きなさい宗治兄」
「あはは。そうさせてもらうよ」
爽快に笑ってから宗治はその逞しい身体で立ち上がって、再びプールに入って水風船の残骸を片付けていく。
「....その....祐介」
「ん?」
「....どうだった....私の、水着姿」
「えっ?」
彼女が恥ずかしそうに言ってるのを見て、改めて真中を見やる。
ひらひらなフリルがついている水色の水着。彼女の勝気がある性格とは裏腹にとても可愛らしいもので、それがついギャップを感じてしまう。
「...いいんじゃないか?でも真中はスタイルがいいからな。堂々としたらもっといいと思うぞ」
「か、過激なものを着ろっていうの?」
「なんでそうなる?そこまでは言ってない。でも、それくらい自信を持てってことだ」
「....そ、そういうことね....うん....ありがとう.....」
照れくさくしながらお礼を言ってくる。その姿に思わず笑みが浮かんでしまう。
「な、なによ?」
「いや、またこうしてお前らの配信を間近に見れたのが嬉しくてな」
「...ほんとに言ってる?」
「なんだ?自信がないのか?」
「....私、素の姿と動画の姿だと全然違ってくるじゃない....キャラ作ってるとか思ったりしてない?」
「まぁ、確かに全然違うのは感じるな。でも、それくらい動画に熱心ってことだろ?寧ろ応援したいくらいだよ。頑張れってな」
「....相変わらず変な人ね」
「これが俺だからな」
「...そうね。ほんと....祐介らしいや」
そう言って、真中は控えめに笑ってみせた。
彼女のそんな姿を見て、俺も再び顔が緩んで....嘗ての友との共同作業を楽しむのであった。
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