第35話 ゆっくり実況者リアナ


「....コラボ配信、ですか」


栞菜さんが絞り出したように声を発した。


「はい。これならば、一気に人気をあげることが出来ます。それに三人の登録者も大勢いますので、認知度はさらに上がるかと」


「....コラボ配信かぁ。いつか三人でやってみようって話したよね」


「....ん。みんなが人気になったらって....私のせいで随分待たせちゃった....ごめん」


「貴方が謝る必要はないわ凛明。だってこうして今、その時が来たんだもの」


三人それぞれが話し合い、俺の方を向いてくる。


「エイジさん....コラボ配信についてですけど、私達で考えてやってもいいですか?」


「はい、それで構いません。色々本当にありがとうございます」


「何言ってるんですか?謝る必要なんてありません.....寧ろお礼を言いたいくらいですよ」


そう言うち、紗耶香と凛明も口を綻ばせて俺と向き合う。


「そうですよ。私達もその時はあまり余裕はなかったから、コラボ配信のこと....つい忘れていました」


「....それに、エイジのおかげで私も人気になっている....エイジには感謝しかない」


「二人とも....」


「....そういうことですエイジさん。改めて....私達のために動いてくれてありがとうございます....とても、嬉しいです」


そう言っていた時の栞菜さんの表情は....とても眩しかった。紗耶香も凛明もそれに釣られるように表情が豊かになっていった。


「...にしし!さぁ栞菜さん!凛明!早速どんな配信にするか考えよう!私、楽しみで仕方ないよ!」


「....ん。ここはやっぱり歌ってみた配信...バズるに違いない」


「それなら、最近話題になっているホラーゲームなんてどうかしら?アクション性もあって面白いわよ」


「....それもいい。面白そう」


「ちょ、ちょちょちょちょ!!??何ホラゲーをやろうとしてるんですか!?ぜっったい反対ですからね私!!」


そこからはコラボ配信について夢中になっていて、今は周りが見えてないっぽいけど....。


(....あんなに楽しそうに話してるし....俺は邪魔にならないようにしよう)


そう思いながら、俺は三人の和気藹々と話し合っている光景を見て夕食を作っていくのだった。





一通りやることが終わった夜の時間、俺はパソコンを開いて、ある動画を見ている。

そこに映っているのは饅頭のような生き物がゲーム実況をプレイしているものである。


「....ふむ、前よりも面白いんじゃないか?」


動画を見終わってそんな感想を呟く。

ゆっくりという個性があまり出しきれない仲で個性を生みだしつつも、テンポ感があってよい。

少し動画時間が長いのはどうかと思うけど.それも個性か..アドバイスがあればそれくらいか?


そう思い、俺はその子に連絡を取る。



:リアナちゃん。動画見てみたけど前よりもテンポ感あって良かったよ。もう少し動画時間を短ければもっといいかも。


それを送信してスマホを置く....前にすぐに通知が来る。


:.....その呼び方、あまり先輩に呼んで欲しくないです。


:あれ?だめだった??


:いつも普通に呼んでるじゃないですか。何勝手に活動名で呼んでるんですか。馬鹿ですか?


:そこまで言う?ごめんごめんちゃんと名前で呼ぶから....結奈ちゃん。


相変わらずの毒舌に苦笑しながらも、彼女と連絡を取り合う。


彼女、安藤結奈はブリティアで働くと同時に動画投稿をしている。ゆっくりという人気ジャンルということもあり登録者は今の凛明と同じくらいだ。


:うーん...動画時間をもう少し短くしろ、ですか。


:うん。出来るなら10分、長くても15分くらいの動画にした方がいいかも。そっちの方がテンポよく見ることができるし。でもそこ以外はいい感じだと思う。


:....分かりました。できるだけ頑張ってみます。


そうして彼女との連絡はこれで終わり....ではなかった。ピコンっとまたまた通知音がなる。


:...先輩、ほんとに大丈夫なんですか?私、不安でいっぱいなんですけど。


あぁ...どうやらあのことについてらしい。


:うん。今順調に進んでるよ。結奈ちゃんはそのまま動画を投稿していれば大丈夫。


:本当なんですね?先輩を信じますよ。私、残りの人生を全部先輩に捧げていますからね?


:あ、あはは...責任重大だねそれは....。


その言葉に思わず顔を顰めてしまう。いや仕方ない気がする。だって人生を捧げるって普通出来ないことだから....そう考えるとなかなか凄いことするよねこの子も。


:.....先輩を信じてるからですよ。


:えっ?


:なんでもありませんよ。とにかく動画を投稿すればいいんですよね?


そんなメッセージが来た時、さっき送っていたであろう彼女のメッセージが消えた。あれ?見せちゃダメなヤツだったのかな?


:じゃあ先輩、私も一応会社があるのでそろそろ寝ますね。


:分かった。夜遅くなのにありがとうね。おやすみなさい


:はい、おやすみなさい。


そうして、可愛らしいスタンプが来てから今度こそ彼女との連絡を終えた。


「...さて、こっちもこっちで色々と準備しないと」


改めてパソコンと向き合ってから、残業というなの徹夜作業をしたのだった。



【もし面白いと感じたらフォローや⭐️、❤️をお願いします!!!】


また、こちらの作品の方も見てくださると嬉しいです。


《全てを失う悲劇の悪役による未来改変》


https://kakuyomu.jp/works/16818093076995994125



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る