第33話 提案
部屋の中に入り、高級そうなソファに座る。そしておそらく彼らが準備してくれたのであろう飲み物を一口飲み、芦田兄妹と向き合う。
「大学以来かしら?あの時から滅多に連絡来なかったから、急にきて驚いたわ」
「悪いな。色々と忙しかったからついな」
「まぁ仕方ないんじゃないか?当時話題……今もなってるけど、あのAOブリティアに入社してたんだ。忙しくなるのも無理ないさ」
芦田兄妹。
双子の兄妹であり、宗治が兄で真中が妹となっている。
どちらも容姿端麗、運動もでき、頭もずば抜けて良かった。
大学で偶然知り合ってからは意気投合して昔の友達だったように毎日遊んだり、楽しんでいた。
また、芦田チャンネルにて最近登録者400万人を超えた栞菜さんと同じく、トップクラスのユーチューバーの一組でもある。
「……私たちのことを褒めてるようだけど、私は貴方の方が凄いと思うんだけど?」
「ん?そんなことないだろ?俺はただのしがない一般人ですよ」
「よく言うね。大学時代にユーチューバー活動を始めてここまで僕たち兄弟を大物にしたのは紛れもない君でしょ?」
「そんなことないだろ?ただ二人の力をたまたま見抜いて、それを動画で生かしてるだけ……何も凄いことなんてしてないだろ?」
「それが凄いことだって言ってんのよ。はぁ……まあいいわ。雄介のたまに出るその無自覚さを見て安心したわ」
真中はそう言って俺を見ながら微笑み返す。そんな妹の様子をみた宗治は呆れたようにため息をして……。
「……こっちも相変わらずのようだよ雄介」
「?何がだ?」
「……まぁ、君に言っても無駄か。相変わらず妹の惚れっぷりにはきょうがむぐぅっ!?」
「このバカ兄貴!!雄介の前で何言おうとしてんのよ!!」
「むぐ、むぐぐぐぐぐぐっ!?」
首を締めて口を押さえつけてる真中に対して苦しそうに手を叩いている……その姿を見て俺も懐かしさでつい微笑んでしまう。
「貴方もなに笑ってるのよ!!はっ倒すわよ!!」
「おぉ……怖い怖い」
俺たちの前だけに見るその素顔を見ながら、二人の取っ組み合いが落ち着くまで紅茶を飲んでいた。
◇
「……それで、一体何の用なのよ?」
未だに少しだけ頬を赤らめさせながら、聞いてくる。
「いいものを持ってきたとか言ってたけど……何かやるのかい?」
「あぁ……二人とも、新しいことに挑戦してみないか?」
「「新しいこと?」」
彼らの反応を見て頷き、前から用意していた資料を見せる。
「………株式会社エーブル?」
「あぁ……大物の配信者を中心のグループ会社を設立したいと思っている」
今回、俺が二人に訪問した理由はこれについてだ。
「グループ会社というと……vtuberグループみたいに配信者達を集めてくるのかい?」
「そういうことだ。多くの大物の実況者、配信者、vtuberを集める会社……お前らにはその中心の人物として株式会社エーブルを引っ張って欲しい」
そう言って俺は二人を見る。二人の顔は……とても気難しそうに眉を顰めている。
「……私たちがそのエーブルの中心人物として引っ張っていくのはいいわ……ただ」
「……そのためには人が足りなさすぎる。それに、成功する確率を低すぎる……せめてあと4人いれば……」
「……その心配は無用だ、二人とも」
「「えっ?」」
確かに宗治の言う通り、こいつらだけでは成功する確率は低い……でも、それは人数が……それもネットでも話題になっている配信様が複数いれば解決する話。
「今から言う配信者もそのプロダクションに加入する予定だ……多分協力してくれるはず」
「……その人物とは?」
「まずはゲーム実況者のKANNA、
「ちょ、ちょちょちょちょ!!??ちょっと待ちなさい!!!」
「……?」
二人が一気に驚愕染みた顔へと変貌する。
「KANNAですって!?あのトップクラスのゲームの腕を持っているあの!?」
「あぁ……そっか。登録者でいえばあの人の方が多いもんな」
「い、いや……いやいやいやいや……私たちなんて一歩も及ばないわよ……格が違いすぎるわ……」
「……それに、天晴あおいにスカーレット……つい最近それぞれの配信にてバズりまくった二人……彼女らもまた、配信者としては大物と言っていい」
「あぁ……その3人ともう一人、リアナもエーブルに入れようと思う」
「リアナ……?あの、ゆっくり実況者の?」
「……なるほど、その、4人であれば……」
「具体的なことはまたその資料を読んでくれ。後日にまた説明するしな」
「でも雄介。貴方、仕事の方は……」
真中が心配しているように言ってくるが、その心配は無用だ。
「最近、あそこをやめてきた所だ」
「えっ………じ、じゃあ今は……?」
「実質無職だな……まぁ、これが成功すれば少しの間、忙しくなるが」
「だ、大丈夫なのかい?生活の方は……?」
「まぁ一応大丈夫だ。この通り、しっかりと生きてる」
元気だと示すように、胸を力強く叩く。流石にさっき言った人たちと生活しているなんて言ったら……人間として終わる気がする。
「……ほ、ほんとに大丈夫なの?その……私たちで良ければ、養うわよ?」
「あ、あはは……ほんとに大丈夫だ。色々と悪いな。心配してくれてありがとう」
「う、うん……」
……たまに思うけど急に塩らしくなるよなこいつ。
「……どうやら僕はお邪魔なようだね」
「「余計なお世話だ(よ!)」」
こうして会話してると、昔を思い出すな……でも、今はそんなことに浸っている暇はないな。
「二人には、出来るだけ人気を集めて欲しい。俺もたまにこっちに訪問したりアイデア出したりするから、もし何かあった連絡してくれ」
「えっ……き、来てくれるの……?」
「?あぁ、そっちの方がいいだろ?」
「そ、そうね!うん……そっちの方が断然いいわ……!」
「……はぁ、この妹と親友ときたら……」
なんだその反応は?何もおかしなことはしてないだろ??
不思議に思いながらも、その後は昔のように楽しんでいったのだった。
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