第32話 音楽系ユーチューバーとのデート
紗耶香とのデートから翌日。今度は凛明とのデートだ。
栞菜さんと紗耶香のデートはどちらも外での買い物だったり遊びであったが……。
「……凛明。ほんとにこれでいいのか?」
「……ん。寧ろこれでいい……」
今俺たちは……凛明の部屋にいる。所謂お家デートというものだ。
「……エイジ、もっと抱き寄せて……エイジの体温が感じられない」
「わ、悪い……こうだな?」
「……ん。よろしい」
むふふ〜♪と俺の腕の中にすっぽりと入ってルンルン気味に身体を動かしている。
ちなみにだが、ドアの前で『エイジとデート中』と看板に書いてあるため、二人が入ってくることはない。
「……たまにはこんな時間もいい」
「そういえば、凛明っていつも歌の練習で殆ど休んでないよな」
「……ん。だからこうしてのんびりするのは稀……本来なら休むことなんて許されない……でも」
顔を上に上げて無垢な瞳でこちらを見てくる。
「……エイジのデートなら……休んだって構わない」
「……そっか。ありがとうな」
「……感謝はいらない……私も、癒されるから」
そう言って心地良さそうに俺の身体にもたれかかって目を閉じている。その姿だけでも、ある意味神秘的と表現出来る。
(……栞菜さんはクール、紗耶香は無邪気、そんで凛明は……お淑やかって言えばいいのか?)
何処かのお嬢様の素質を感じ、ついそう思ってしまう。
「……エイジ……他の女のこと考えたらダメ……今は私のことだけ考えて」
「わ、悪い……というかなんで分かったんだよ……」
「……最近、エイジの動画見てきたから、そういうのが分かるようになってきた」
そんなことだけで普通は心の中にとか分からないんだよ……。
「……私は特別。だから、分かる」
「……頼むから心の中は読まないでくれ……」
口に出さなくても心の中で話せば対話出来るってどんな能力だよ……そんなことを思いながら、しばらく俺は凛明と一緒にリラックスしていくのだった。
◇
「……ん。満足満足……では、次のプランに移そう」
そう言って凛明は立ち上がる。
「何か他にやりたいことがあるのか?」
「……こういう時こそやれるものがある」
そう言って凛明は自身の部屋にあるパソコンを広げて何かのサイトを開いた。
「これは?」
「………ん。エイジと二人っきりでやることといったらこれ……カラオケ」
「………嘘だろお前」
むふぅ……と胸を張っている凛明に一瞬恨みがましい視線を向けるが特に動じた様子はない……解せぬ。
「……じゃあ早速マイク準備して」
「えっ……ほ、本格的じゃないですか……」
「……当たり前。やるなら全力……これ、絶対」
……はは。どうやら今日は凛明さんに付き合わさないといけないらしいな。
「……分かりましたよ凛明さん。今日はとことん付き合わせていただきますよ」
「……ん。それでいいのだ」
口角が約4mmぐらい上がった凛明の顔を見ながら俺はその場で立ち上がり、彼女とともにカラオケを楽しんだ。
◇
「……エイジ……相変わらず下手くそ……ぷふっ」
「くっ……わ、笑うな……人にも得意不得意があるってことだよ……」
「……だとしてもあの下手くそさは異常……」
「ぐはぁっ!!!」
凛明に渾身の発言を言われてノックダウンしてしまう。その時何故か人の笑い声のような幻聴が聞こえた気がした。
「……んしょ」
すると、歌い終わって満足した凛明が再び俺の膝へと乗ってきた。
「……満足ですか凛明様?」
「……うむ……くるしゅうないぞ」
そんな中身のない会話。しかしそれが落ち着くのか、彼女は心地良さそうにしていた。
「……なんだか、懐かしい気持ち」
「ん?」
「……昔、こうやって誰かの膝にいた気がした……それが誰なのかは……分からないけど……」
「……そっか」
凛明の頭に手を乗せた。何故かは分からない、けどこうした方がいい気がした。
「っ!え、エイジ?」
「なら今はその懐かしい気持ちに浸っとけ。俺でよかったらいつでもこうしてあげるから」
「……うん…………エイジ」
「うん?」
「…………ありがとう」
「……どういたしまして」
二人の時のような外での楽しいデートとは違う、こうしたゆったりとしたデートも悪くないな。
そう思いながら、俺は一日中凛明とのお家デートを楽しんで行った。
◇
凛明とのデートから数週間後、俺は時間をかけてやっと準備が出来て……今はとある奴らと会う為にある場所へと向かっている。
「……相変わらずここは変わってないみたいだな」
そのデカすぎるマンションを見た後、俺はその中へと入っていく。
そうしてエレベーターで登っていくにつれて、目的の部屋に着いた。
俺はその隣にあらチャイムを鳴らそうとして……やめる。
どうやら来たみたいだ。部屋の中で足音が聞こえてきて……ドアが開かれる
その正面には薄い水色の髪を纏めた女性とその後ろに似たような男がいた。
「来たわね、雄介。待ちくたびれたわよ」
「君から連絡きた時は驚いたよ……何かいい物をくれるのかい?」
何年経っても変わらないその姿と性格を見てふと口が緩んでしまう。
「あぁ……喜べ。久しぶりにいいものを持ってきたぞ」
——さて、この二人……
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《全てを失う悲劇の悪役による未来改変》
https://kakuyomu.jp/works/16818093076995994125
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