第27話 紗耶香ちゃんとのホラゲー〜本番〜
「みんなー今日も見てるー?快晴の空とともに現れた期待の新人Vチューバーのぉ……天晴あおいで〜す……うぅ……こんぱれぇ……」
:草
:もう既に泣きそうになってるw
:元気出してあおいちゃん!
:ついにあおいのホラゲー生配信……楽しみw
「うぅ……みんなぁ……」
紗耶香ちゃんと一緒にホラゲーをした翌日、天晴あおいの生配信……及びホラゲー配信が始まった。
勿論彼女は既に涙を流してるし……俺も隣に居させられてます。
「……あおいさん?無理してやらなくても……あ、皆さん。今日もゲストとして呼ばれてますエイジです」
:エイジだw
:流石にあおい一人だとね……。
:今日のあおい、この前の配信と違って気分が悪悪なの草。
:エイジいても元気にならない…そんなホラゲーが嫌いなんだ。
「うぅ……で、でもここで一歩踏み出さないと…!」
「……その割には手が震えてるよ?」
「だ、だだ大丈夫です!!」
うーん、昨日もそんなこと言ってたけど、大丈夫には見えないかなぁ……。
「……今日はこれやってくよぉ……」
:うわっこれ大丈夫か?
:あおいちゃん泣かないかなこれ?
:めちゃくちゃ怖いんだよねぇ
「ね、ねぇみんな?そんなこと言わないでよ!うちが一番怖いんだからさぁ……うぇぇん……」
涙目になっているあおいが今回やるのは、昨日と似たゲームだ。
ただマウスをぽちぽちと押すだけでクリアできる操作性は優しいゲーム……演出を除けばね。
今回は昨日よりも何十倍に怖いシリーズだ。舞台は辺境の田舎…‥昭和が関わっているらしいね。
「え、えええエイジさん……こ、これ、昨日やったものよりも……」
「……うん。俺もびびったシリーズ……多分一番怖いんじゃないかな?」
「……やめたい」
そう言いながらも、痙攣が起こしそうな手でマウスをクリックしてゲームをスタートする。
「ひぃっ!?……ふ、ふぇぇん!こわいよぉおお……!!」
:草
:草
:草
:涙目あおい、助かる。
「……とりあえず、進んでみようか。あおいさん」
「は、はい……」
……ちゃっかりと俺の手を放さんと言わんばかりに握りしめながら、ゲームを進めて行った。
◇
紗耶香ちゃんがクリックするたびに左に女の子が進んでおり、今はおばあちゃん家を歩いている。流石に初日ということでまだ違和感は見られない。
「……い、田舎って妙に怖いイメージありますよねエイジさん?」
「?ま、まぁそういうイメージはあるけど……どうしたの急に?」
「気を紛らわすための会話に決まってるじゃないですか!!い、今は怖くないからこうして会話をして少しでも怖さを和らげるんですよ!!」
「そ、そうなんだ……なんかごめん」
:怒られてて草
:エイジ可哀想w
:八つ当たりなんてサイテー
「うるさい!みんなもプレイしてみればわかるよ!!めっっちゃ怖いからねこれ!?……あ、あぁあああ!なんかいる!なんかいるエイジさん!!」
すると何故か階段の隙間から謎の女の子が出てきた。今冷静に見て思ったけどどこから出てるのこの子……。
「な、なんでそんな冷静なんですか!?出たんです!幽霊がきっと出たんですよ!!」
「で、でももしかしたら友好的な幽霊かもしれないよ?偏見はよくないんじゃないかな?」
「偏見も何もありませんよ!!ホラーなんですよこれ!?」
:確かにw
:的確で草
みんなのコメントを見ながら少し進んでいく。
「……あ、あれ?誰か部屋にいない?」
紗耶香ちゃん気づいたんだ。そこにはおばあさん以外誰もいないはずなのにベットで座っている人影が……。
「……え、エイジさん。確かこの家にはお爺さんも住んでたんですよね?」
「そうだね。もう亡くなっていないはずだけど……」
「もぉおおおお!!絶対脅かしてくるじゃあん!!」
涙目で叫びながら、少しずつ出てくる違和感を醸し出して、1日目が終了する。
2日目……早くも異変が出始める。
「……と、とりあえずお婆さんの家に着きました……特に何も異変が……………」
「……あおいさん。気持ちは分かりますが、ゲームが進みませんよ?」
「こ、心の準備をさせてください!!か、階段にあの幽霊女子いるんです!その横通るんですよ?どんだけ勇気が必要だと思いますか!?」
:逆ギレ笑
:そんなことより進めー
:草
「うぅ……そうやってみんなはうちのこといじめて楽しいんか!!」
:楽しい
:当たり前だが?
:あお虐最高w
「……うちに味方がいないということが分かったよ」
あとで覚えとけよ?とアバター越しに睨みつけ、そのまま進み……女の子の首が曲がった。
「ぎゃああああ!!首、首が曲がったぁあああ!!」
「うわぁ……首痛くないのかなこれ」
「そう言う問題じゃないですよね!?エイジさんホラゲーのやりすぎでついに頭イカれましたか!?」
そこまで言う必要あるかな?
「あ、あぁああついてきてる!ついてきてるよ!!どっか行ってよぉおおおお!!」
「スゥウウ……」
「……あ、どうもお爺さん。ご無沙汰しております……」
襖が開いてお爺さんが現れた。それに対して紗耶香ちゃんは男性では出せない甲高い声を出している。
:幽霊大集合やな。
:よかったなあおい。モテてるぞ。
:あれ?貴方死んだはずじゃ……。
「……もぉおおお!!たすけぇえええええ!!」
——そしてそこから、彼女に数々の異変が襲いかかった。
「……ま、またいたよ……い、いや!ここは特に何もして来ないはず!だから動じず「ワタシノコトミエテルンデショ?」………」
「あおいさん。そんなカチカチ押しても早く進みませんよ?」
「い、いや、いやいやいやいや……きっと幻聴……
「ワタシノコトミエテルンデショ?」
「……耳がおかしくなっちゃったなぁあ……あはは」
:ついに壊れた。
:ここから怖いんだよなぁ……
:頑張って!!
女の子の不気味なボイスというなのASMRを聞いて涙目になったり……。
「うわっなんかおじいさんいるよぉ……どうせここで脅かしてくるんでしょ?昨日プレイしたうちなら分かるよ!さぁいつでもこいやぁああ」
「アァアアアア!!!」
「ぎゃあああ!ゾンビ、ゾンビになってるよおおおお!!!」
襖を破りそこから映り出しているお爺さんに驚いたり……。
「……な、なんか女の子の顔、日に日にはっきりしていませんか?」
「うーん……可愛いんじゃないかな?」
「……エイジさんがホラーが苦手なのか分からなくなってきました……ほ、ほらゾンビお爺さんきてる!なんかお婆さんが語ってるけどそんな暇ない!は、早く!早く先進んでぇええええ!!」
「あ、そのまま行くと……」
「え?」
「……ワタシノコトミエテルンデショ?」
「……ま、またきたよぉ……ひぃっ!な、なんか鏡に映ってる!あ、あぁあああ聞こえないんだ!何も聞こえなーい!うちはなーんにも」
「ウゥウウウウ……」
「ぎゃあああっ!」
様々な所から出てくる女の子にビビり散らかしたり……とにかく紗耶香ちゃんの叫び声はこの部屋中に轟響いた。
◇
「……つ、ついに最終日……ここさえ乗り越えれば……うちの勝ち……!」
長い時間をかけて最終日へと突入した。だがここで俺は少し焦っていた。
(……腹が痛くなってきた)
そう、トイレに行きたいのだ。最悪、今紗耶香ちゃんはゲームの方に集中しており、俺の手も離している……それに部屋も暗いからバレる可能性が低い。
(い、行けるか?流石に限界が……)
そっとその席から立ち上がり、部屋へと出ていく。だ、大丈夫……早く帰ってこればいいだけの話だから……。
◇
「あ、あぁあああ!お婆さんが!!化け物お爺さんに取り込まれて……!」
……で、でもここ大丈夫!これでも昨日やったお陰でまだ耐性はついている!このまま進んで……!!
:あれ?そういえばエイジは?
「……………え?」
そんなコメントが目に映った。え、だってエイジさんはここに…………い、いない……。
「え、エイジさん?どこですか?いるなら返事してくださ〜い!エイジさーん!!」
……反応がしない。
「……え、エイジさんがいない……ど、どうしようみんな!知らないうちにエイジさんがいなくなっちゃった!!うちここから一人で進める気がしないよ!?」
:草
:エイジも取り込まれたか……
:頑張れ!
「えっ……みんな、嘘、だよね?このまま進めって言うの?」
コメント蘭には応援のコメントしかなく……それを見た私の心はすでに限界に達していた。
「は、ははは……ははははははは!!!!………もぉおおおおおお!!!!!」
カチカチカチカチと早く終われという想いを込めて今まで以上に連打した。
「あ、あぁああ。ついてくる!こないで!!こないでよぉお!!は、早くどっかに行ってえええ!!」
化け物になったお爺さんに追い込まれ……。
「……え、な、なんでこっち見てるの?や、やめてよそんな顔して」
「ソコニモイタノカ」
「……待ってよ。待って待って待ってそれは無理!それはほんとに無理!!」
主人公の女の子ではなく、まるで私に問いかけるように言われたり……。
「え、待って待って待って!こっち見ないで!見ないでよ!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!こっちこないで!うちそういうのほんとにむりなんだって!!」
「ワタシノコト、ミエテルンデショ?」
「………ふ、ふぇええん……」
ラストにこっちにだんだんと近づいてきて最後に鳥肌級の怖さを私に刻み込んで……ゲームは終わった。
◇
「………ごめんね紗耶香ちゃん」
「バカあ……エイジさんのバカぁああ!!」
昨日よりも悪化してないかこれ……いや部屋に戻った時にもう紗耶香ちゃん、号泣寸前で凄い驚いた。
彼女曰く、コメントで俺がいないことに気がついたらしい。コメント欄め……覚えてろ。
「なんで急にいなくなったんですかぁ……言ってくれれば、ゲーム止めましたのにぃ……」
「……ごめんなさい」
「もおぉ……こわかったんだよぉおお……」
「……うん、ごめんね。それとよく最後までやりきったね。偉い偉い……」
「……もうホラーはこりごりです」
そう言ってるが……紗耶香ちゃん。残念なことに視聴者からはとても好評だったよ?
だから近い将来、またやるんじゃないかな……それを言うのは野暮なのだろうな。
こうして、紗耶香ちゃん……天晴あおいのホラー実況はひとまず終わりを迎えた。
……しばらく紗耶香ちゃんが一人で寝れなくなったのはここだけの話だ。
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