第25話 伝わり出す彼女の歌声
彼女……凛明の歌の影響は日本中に瞬く間に広がっていった。
スカーレットの魅力とはその作曲力だ。しかし、あらゆる改善点を治すことで彼女の本当の歌がついに人々へと届いたのだ。
彼女の音楽の才能、それは彼女を知っている人も例外ではない。
◇
:なぁ、またあいつの動画が投稿されたぞ。
スマホを見ると、LINEで学友がそんなことを呟いているのが目に見えた。
その内容を見た俺は笑いが止まらなかった。
:あの無口が?かぁ、また痛い動画なのか?w
きっとそのはずだ。元々あいつは気に入らなかった。誰もが俺に近寄る中、あいつだけが俺のことを興味なさそうにしている姿……未だに腹が立つ。
だから根回しをしてやった。あいつの悪い噂……といっても作り話だがな。それをを学校中で広げて、孤立させてやった。
いじめもしてやった。勿論、あの
でもあいつ、何も気にしてなさそうにしてた……まじで気に入らなかった。
だから、あいつの歌をバカにしてやった。そしたらどうだ?ずっと表情が変わらなかったあいつが涙を流したんだぜ?
傑作だったよ。もう笑いすぎて今でもその動画が残ってるわ。
あんな奴の動画なんてきっと誰も見るわけがない……そのはずなのに。
:それがさ。なんかバズってるらしいぞ?再生数ももう300万いってるらしいし。
……は?
:いやいや冗談だろ?なんであんなやつがそんな注目されてんだよ?
……俺よりも注目されてる?あいつが……?んなこと許されるわけねぇだろ。
:俺もまだ動画見てないし、一緒に見ていつも通りアンチコメント書いたろうぜw
……ははっ、そうだな。きっと炎上しているに違いない。そう思えばさっき湧いてきた怒りが治って逆に笑みが止まらなくなってきた。
:そうだなwじゃあ見終わったらまた連絡してくれ。
そして、あいつの最新の動画を探していく……あった。
「……まじかよ」
さっきあいつ再生数が300万とか言ってたよな?もう400万いきそうだぞ。
「そんな酷かったのか……はははっ、こりゃあバカにするしがいがあるぜ」
さぁて、今日はどんだけ笑わせてくれるのかな……そう思って動画をタップして……言葉を失ってしまった。
「………な、なんだよ……これ……」
あの雑音の入った声じゃない……透き通るような繊細な声……涙が出そうになるほどの感情のこもった歌……いや、いやいやいや!
「なんだこれ!?」
これがあの無口?ふざけんのも大概にしろよ!!
確かに直接あいつの歌は聴いたことはねぇ……でも今まで散々この動画で散々流れてきたじゃねぇか!!
「こんなの加工だ!加工!!」
許さねぇ……こんなもに騙されるところだった。
「世間を騙そうたって俺はそうはイカねぇぞおい。くくっ……またお前を泣かせてやるから安心しろよ?」
じゃあ早速コメントに書いてっと……。
:こんなんが注目してるとからおかしいw絶対に加工してて笑。
「これでいいだろ。はぁスッキリした。さっさと寝よ」
満足した俺はスマホを置いてベットに寝転がり込んだ。
さぁて、これでみんな正気に戻るはずだ。あいつの歌が凄いなんて……そんなの認めない。
◇
「……あ、なんかアンチコメント届いたよ」
紗耶香ちゃんが凛明のスマホを見ながら顔を顰めながら言ってくる。
「仕方ないわよ。私たちでも混乱しているもの。急に受け入れられる人も多くはないわよ」
「でも栞菜さん。こいつバカじゃないですか?多分何にも考えずにコメントしたんでしょうね。すごいことになってますよ」
そう言いながら紗耶香ちゃんは先ほどのアンチコメントの返信蘭を見せてくる。そこにはこいつはバカだの、何も聞いてないんだろうなだの、これで加工は森林生えるわなど……なんかこっちもこっちで色々と炎上してるらしいね。
「……ふへぇ……」
「……凛明。大丈夫?」
そこには未だに現実かどうか分からないのか、頭をぷしゅうと湯気を出しながら、ソファに寝転がっている凛明の姿がある。
「……エイジさん。一体いつから?」
「俺も今日気づきました。それで改めて機材を揃えてから、一回彼女の歌を投稿したんです」
「そ、そうだったんですね……長年一緒にいましたが、私たち一度も気がつきませんでした……」
「うん。あの動画でも私よりも何倍も上手だったのに……凛明って凄い歌手さんだったんだね」
紗耶香ちゃんがそう言って凛明の頭をゆっくりと撫で始める。
「……紗耶香……やめて……恥ずかしい」
「おやおや恥ずかしいのかな?にししっ、このこの〜」
「にゅうう……やめてぇ……」
……ほんとにあの光景を見てるとほんとの姉妹を見ているようだな。
「ふふっ。紗耶香も嬉しいんですよ。やっと世間に凛明の歌が認められて……あ、そうだわ」
栞菜さんが手をパチンと手を叩いて、凛明の方を見る。
「ねぇ凛明。私たちも直接聴かせてくれないかしら?」
「……え?」
「あ、それいいですね栞菜さん!私も凛明の歌聴いてみたい!」
「え、え、で、でも……」
助けを求めるように凛明がこちらに向いてきている。
「……凛明……ここで二人の前で歌えないようじゃ、憧れの人になんて近づけないぞ?」
「う、うぅ……」
……まぁでも。
「とりあえずまずは晩御飯を食べましょうか。その後に凛明の歌を聴きましょう」
「……そういえばまだご飯食べてなかったですね。凛明の件で忘れてました」
「私もです。あ、凛明。食べ終わったらちゃんと歌ってよ?私ブルーマリン聴きたーい」
「……うぅ……うぅぅぅ……みんなのバカぁ……」
……その割には凛明……今のお前……凄く嬉しそうだぞ。
でも、まだまだだぞ?お前の歌声はもっと日本に……世界に響き渡る。
だからその時は今よりもっと嬉しそうな顔してろよ……しっかりと支えてやるからさ。
まぁ俺が言えることではないと思うけどな。
………さて、晩御飯でも作りますか。
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