第22話 凛明とのレッスン
紗耶香ちゃんの生配信が終わり、切り抜き動画を投稿した後、眠りに入った。
この時はまだ11時ということで6時に起床するから7時間は寝れると思っていた。
朝の5時に入った頃のことだ。
まだ夢の中でわいわい楽しんでいた時に突然腹部の辺りから急激に重いものがめり込んできた。
「ぐふっ…!」
物凄い痛みで一気に目が覚めてしめてしまう。に、にしても誰だ??
「………エイジ……おはよう」
「……り、凛明?」
そこには馬乗りになってこちらを見下しているパジャマ姿の凛明がいた。
「……今日は私の配信……朝から晩まで付き合って貰う」
「そ、それはいいんだけど……も、もう少し優しく起こしてくれたら嬉しかったんだけどな」
これでも誰かに起こされたら一発で起きるはずなんだけど……。
「……んん。それではだめ……私の配信……及び特訓に寝ぼけることは禁止……」
「そ、そういうことですか……」
無口で表情が変わらないはずの凛明は意外と真面目さんだそうだ。その証拠に瞳に炎が宿っているのが分かった。
「……わ、分かったから、少し着替えさせてもらえないか?」
「………ん。分かった……私も着替えてくる」
そう言って俺の身体から降りて、こちらをもう一度振り返った後、とことこと歩いて部屋を出て行った。
「……あんなに楽しみにしてるの初めて見たな」
……まぁ、まだ数十日しか彼女のことを見てないから断言は出来ないけど……少し足取りが軽そうに見えたのは気のせいかな?
そう考えながら、俺はいつもより早く起きて、着替るのであった。
◇
「....ん。時間ピッタリ....良き良き」
そう言って機嫌良さそうに頭を撫でようとする凛明。しかし身長差で届かないのか「ん〜....ん〜!!」と必死に手を伸ばしている。
「....お褒めにあずかり光栄ですよ」
「....ん.....よい」
彼女の手が届く所まで、身体をかがめる。お姉さんぶりたいのかな?
「....ん。エイジ、ご飯ある?」
「あぁ、一応この前の残りはあるけどそれでもいいか?」
「ん。それで十分」
「分かった。少し待っててくれ」
キッチンにある冷蔵庫の所に向かい、中に残っている残りものをレンジで温め、少しだけ味付けして皿に出す。
「....いただきます」
一昨日の残り物を水色の可愛らしい箸でつまみ、口に運んだ。
「....この前食べたけど、味が違う....おいしい。流石エイジ」
「ありがとう。そう言ってくれると嬉しいよ」
凛明と会話をしながら、二人の分「ん。私も食べる.....」....どうやら彼女も食べるらしいので三人分の朝食を作っていく。
「そういえば凛明、今日はなにやるんだ?特訓とか言ってたけど」
「....ん。毎日私がやってること。外で軽く1キロぐらいランニング。その後喉を傷めない程度に発音練習。後、歌を歌う.....とにかく色々やる」
「お、おぉ.....毎日やってるのか?」
「ん。毎日この時間....今日からエイジも一緒にやる」
「....毎日?」
「.....だめ?」
う、うーん....やるのはいいけど、凛明についていけるかな....。
「最近運動とかしてないからついてこれないかもしれんぞ?」
「....心配ない。エイジに合わせる。だから大丈夫」
どうやら俺のペースに合わせてくれるらしい。運動習慣もつけといて方がいいし、それなら....。
「....じゃあ、それでもいいなら」
「.....そうこなくちゃ」
むふふっと口を緩ませて機嫌良さそうにしている凛明を見て微笑ましくなる。
「....ごちそうさま」
「はい、お粗末様」
タイミングがちょうどいいな、俺も凛明が食べ終わった所で朝食の準備が出来た。
「こっちもちょうど作り終わったから、早速いくか?」
「....ん。そうする.....じゃあ、はい」
こちらに手を差し伸ばしてくる凛明の姿を見て苦笑してしまう。
(血は繋がってないはずなのに、栞菜さんと同じことしてるな)
そう思いながら、彼女に近づいて、差し出している手を握る。
「....一緒にいくか」
「....ん。一緒」
そうして、凛明のとの特訓が始まったのだった。
◇
「ぜぇ....ぜぇ.....ぜぇ....」
「エイジ、もう少し。ファイト〜」
数分で息切れを起こした所、凛明に励まされながら走り....。
「....じゃあ声出す」
「わ、分かった...あ、あ〜.....」
「....エイジ。もっと感情を込めて、あと凄い音痴」
「ぐっ....じゃ、じゃあ凛明がやってみろよ!」
「....🎵〜〜🎶」
「....俺が悪かったですごめんなさい凛明様」
凛明に音楽の才能の差を見せつけられたり...。
「...今日はこの人の曲を聞く」
「その人って確か....Uruだったか?」
「....ん。そう...凄く綺麗な声....私の目標の一人」
凛明のスマホでトップクラスの歌手さんの歌を聞いたり...1時間という短い時間でありながら、濃い時間を過ごしていった。
◇
「それじゃあ、凛明。そろそろ歌ってもらうぞ」
準備運動じみたことを終えそろそろ、彼女に歌ってもらうように促す。
「....ん...エイジの前で歌うの初めてだから....少し恥ずかしい」
「そんなこと言ってたら、人前でなんて歌えないぞ?」
「....それはだめ....ちゃんと歌う」
彼女は少し頬を染めながらも、その場で立ち上がり、歌う準備をしている。
「....エイジ」
「ん?」
「....私の歌....ちゃんと聞いてね?」
「安心しろ。ファンの前だと思って胸張って歌っとけ」
「.....うん」
少しだけ不安そうにしていたが、深呼吸を繰り返していると、いつもの凛明に戻っていた。
「....じゃあ、音楽流して」
「オッケー。じゃあ流すぞ」
肯定の頷きを確認してその音源を流す。
そして、イントロが全て流れた所で凛明が歌いだし....俺はそれを間近に聞いて、思わず絶句してしまった。
(な、なんだ...これ...)
彼女の口から出るその音色はどの歌手にも負けず劣らず....というよりトップクラスに綺麗な音につい声を失ってしまう。
(ど、動画で聞いたのなんて比べ物にならないじゃないか....!い、一体何が....?)
.....もしかして凛明って....。
「....相当の凄腕の歌手だったりするのか....?」
....これが終わったら少し彼女の動画を漁ってみよう。そう心に決めた俺は圧倒的な歌手力を持つ彼女の歌声を鑑賞するのであった。
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《全てを失う悲劇の悪役による未来改変》
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