第20話 次の配信は……


栞菜さんとのデートが終わった後、とりあえず彼女を落ち着かせるためにコーヒーを用意した。


普段の彼女ならそれでなんとかなるはずが、それでも効果があまり発揮されず、何故かまた泣いてしまった。


学校から帰ってきた紗耶香ちゃんと凛明と一緒に慰めてやっといつも通りの栞菜さんが戻ってきたところだ。


でも、紗耶香ちゃんから「エイジさんは晩ごはんの用意をしてください!」と除け者にされてしまう始末……うーん悲しい。


まぁ一応この家に居させて貰っているので、文句も何も言えずにそのままカレーを作った。それも結構の量用意したはずだ。


....そのはずなのに案の定、そのカレーは無事3人の……特に今日は栞菜さんの胃袋の中へと飲み込まれていった。


今は食事後の洗い物をしていて、三人はソファに座っている。


「か、栞菜さん?落ち着きましたか?」


「....えぇ...ありがとう紗耶香...少し落ち着いたわ」


「でも何があったんですか?エイジさんとのデート...正直凄い羨ましいですけど、栞菜さんがそれで泣くとは思えないし」


「....そういえば栞菜....指になにかついてる....」


「あー....その、これは....」


「あ、ホントだ。凄い綺麗な指輪ですね。栞菜さんが凄い好きそうものです」


「.....あ、もしかして....」


「......エイジさんから.....貰ったの....その、初めて人から....それもエイジさんから貰っちゃって、泣いてしまったわ」


そう言って少し目を細めてこちらの方に向いている栞菜さん。そんな目で見ても何も言えませんよ俺は。


「う、嘘....エイジさんからの贈り物....ず、ずるい....ずるいですよ栞菜さん!!」


「....同意。栞菜だけエイジからプレゼント....羨ましい」


さっきの心配した顔はどこにいったのか、今はどちらかというと嫉妬のような感情を宿して彼女を見ている。え、えっと....そんなに欲しいものがあったのかな...?


「2人とも?そんなにほしいものがあるなら今度どこかに行こうか?」


「いいの!?」


すると立ち上がって、ぱたぱたとこちらに近づいてきた紗耶香ちゃんがいた。


「うん。良かったらだけど」


「行きます!絶対、ぜっっったい行きます!!勿論デートですよね!!」


「う、うーん....まぁ確かにそうなるのかな?」


男と女が一緒にどこか行くんだし....そうなるのかな。


「.....ん。私も、絶対に行く」


「そ、そう?じゃあ二人のタイミングで任せるよ。いいですよね栞菜さん?」


一応、確認を取っていく。最近、思わないところで許可が得られないことがあるから聞いてみたけど....。


「....勿論、いいですよ」


栞菜さんは微笑みながらそう答えてくれた。


「いいの栞菜さん!?ほんとに?ほんとに!?」


「そう言ってるじゃない。二人とも、エイジさんと楽しんできてね?」


「....ん。そうする」


「はいっ!ありがとうございます栞菜さん!!」


二人はそう言って栞菜さんに抱きついた。それだけ見ていると本物の親子を見ているようで思わず笑みを浮かべてしまう。


「....じゃあ俺、お風呂沸かしてきますね」


洗い物が終わったのでそのまま風呂を沸かすべく、洗面所へと向かおうとする。


「あ、エイジさん!もしやること終わったら私の部屋に来てくれますか?」


すると、紗耶香ちゃんがこちらの方を向いて、そんなことを言ってきた。


「それはいいけど...何かするの?」


「ふっふっふ...それはですね....って痛!イタタタタっ!?ちょ、ちょっと凛明!?け。蹴らないで!?痛いってば!!」


「....むぅ....エイジとデートは嬉しい....でも、それとこれとは別....」


「い、いいじゃない!凛明も次やってもらうんだからさ!!」


「....紗耶香の方が先....なんかむかつく」


「ひどくない!?」


...この反応、もしかして....。


「もしかして紗耶香ちゃん。生配信でもするの?」


「そ、そう!そうなんですよ...!ちょ、凛明!いい加減にして!!」


「...むぅ...ずるい」


....なんか、年の近い姉妹を見ているみたいだ。いや、二人からしたらそれに近い感覚なんだと思うんだけど....栞菜さんにいたっては、今も指輪を眺めてるし...。


「....ふふふ。ついに...ついにこのときが来ました....エイジさん!」


「う、うん?」


紗耶香ちゃんは高校生らしい楽しそうに表情を浮かべなら、宣言してくる。


「ぜひ楽しんで、そして見てくださいね?私の....うちこと、天晴あおいの生配信をね」


「っ!」


「栞菜さんでは味わえない楽しさを、エイジさんにお届けします!」


にししと彼女の....天晴あおい独特の笑いを見て、俺は思わず心が踊ってしまった。


(....一体、俺に何を見せてくれるんだろうか...)


少しだけ...いや、だいぶ楽しみにしながら、俺はリビングを出ていったのだった。



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また、こちらの作品の方も見てくださると嬉しいです。


《全てを失う悲劇の悪役による未来改変》


https://kakuyomu.jp/works/16818093076995994125


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