第二章
第18話 雄介ことエイジの異常さ
あの後、俺は栞菜さんの配信を隣で眺めていた。今回は生配信ではなく、普通の動画だ。
じゃあただ隣で見ているだけなのかというと……そうではない。
「あ、YUSUKE。起業に失敗してまた借金増えてるよ」
「えっ、嘘!?」
……現在俺は、栞菜さんと人生ゲームをしております。
いやほんとは参加するつもりはなかったんなけど……断ったら泣きそうな顔してたもんだから拒否出来ず、今に至るところだ。
一応、動画では声は普段よりも高くしたり、本名も隠して栞菜さんの友達という設定にしてるからいいけど……。
「……あ、またお宝ゲットしちゃった。なんかごめんね〜」
「ちょっ嘘でしょ!?どんだけ運がいいんですか!?」
「いやいや、貴方の運が悪いだけだよ〜……あ、ネットにバズって登録者1000万人のユーチューバーになったよ」
「えぇ!?やっぱり運良すぎじゃないですか!?……ちょちょ、収入多すぎやありませんかそれ!?」
……ほんとに運だけが原因なのか疑問を抱いてしまうほど圧倒的に差が開いています。
「というか他のNPC二人にも負けてるじゃん。あはっ!よわよわYUSUKE〜♪」
「ぐぐぐっ……い、いやまだ勝負は終わってない!!ここから一発逆転狙います!!」
ここマス目を踏んだら宝くじ10億……これでまた起業して今度こそ成功してやる!!
「いけぇえええ!!」
全身全霊をかけてルーレットを回したその結果……。
「…………借金、さらに増えました……」
「えっと……ドンマイ?」
……宝くじマスには踏めず、さらに詐欺に騙されて数倍に借金が膨れ上がった。
そしてそのまま形勢逆転のチャンスが訪れるはずがなく……。
「……借金、計28億円……」
「えっと……私は37億で、一位だけど……」
「くそぉ!差がデカすぎる!!なんで人生ゲームもそんな上手いんだ!?」
おかしいだろ!?俺、何か悪いことしたかってぐらい悪運が凄かったぞ!!
「えっと……これは私というよりかはYUSUKEの方が凄い気がするけど……」
うぅ……そんな慰めの言葉なんていらないよぉ……。
そんな波瀾万丈の人生ゲームは幕を閉じた。
◇
「あの、エイジさん?その……大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫です。でも、まさかあそこまで転落した人生を送るとは思ってみませんでした……」
あれには驚いたよ。いや栞菜さんには勝てるとは思ってなかったけど、流石にNPCにも負けるなんて……相当運が悪いと出来ないことじゃないのか?
「でも、栞菜さんと一緒にゲームして楽しかったです。誘ってくれてありがとうございます」
「あっ……ふふっいえいえ、エイジさんが楽しんでくれたようです。また一緒に遊んでくださいね?」
「はい。その時はぜひ……出来れば俺でも勝てるようなゲームであれば……」
「考えておきますね。ふふっ……」
嬉しそうに鼻歌混じりに身体を揺らす栞菜さん。
どうやら朝のご機嫌斜めの様子はもうとっくにないみたいだ。
「……さて、じゃあ俺はまた動画の編集をしていきますね」
そう言って編集用の部屋に行こうとして……栞菜さんに止められた。
「えっ?」
「今日の編集はいいですよ。ゆっくりと休みましょう?」
「でも、今日まだ1本しかあげてないですよ?」
「1本って……それだけで十分じゃないですか?最近チャンネルのアカウントを見てないのですが……どれくらいあげてるのですか?」
どれくらいって確か……えっと……。
「……生配信の切り抜きを3本と栞菜さんの動画1本だから……合計、4本ですかね?」
「よ、よんっ!?」
……ん?何か変なこと言ったか?
「い、一日に4本もあげてるんですか!?」
「えっ?だって多い方がいいかなと思って……」
「……エイジさんが夕方まで編集終わらない理由って……もしかして……!」
「あ、はい。流石に多いですからね。少し時間がかかってしまいます」
だって普通の動画に関しては字幕入れて少しカットやらエフェクト入れてテンポよくしたら面白いし、切り抜きに関しても栞菜さんの神プレイ集という名目で集めてまとめれれば全然いい動画になると思うし……そこまで時間が掛からないと思うが?
「……エイジさん。今貴方が思ってることは普通ではないです。少なくとも4本投稿するなら丸一日かかりますよ」
「えっ?そうなんですか?」
「そうなんですよ!!普通は1本だけでもいいんです!!ま、まさかエイジさんが逸材だったとは……」
う、うーん……会社にいた時なんて一日何人の動画の編集とかしてたから、6本以上は投稿してたけど……これは俺が異常なのか?
「……とにかく、私の動画と切り抜き動画それぞれ1本で十分です。それに、普通の動画に関しては私も出来ますから」
「そ、そうですか……栞菜さんがそういうなら」
……それなら今日はいいかな?栞菜さんの動画も夜に編集すればいいし。
「……今日は私が編集します」
「えっ?いいんですか?」
「エイジさんがそこまでやってくれるとは思いませんでした。だから今日は私がやります……その代わり」
「その代わり?」
栞菜さんは珍しく大人っぽい笑みを浮かべてから俺に言い放った。
「私と一緒に、買い物デートしませんか?」
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《全てを失う悲劇の悪役による未来改変》
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