第17話 今日もまた、一日が始まる
《速報 AOブリティア、かの三代財閥の一つ皇グループに傘下入り》
朝のテレビニュースを見て、すぐにその内容が俺の目に入ってきた。
「......何だこれ?」
その内容に関して俺は疑心暗鬼になってしまう。なんで急にあそこが皇グループに所属することになったんだ?
「あ、これ。なんか話題になってるらしいですよ」
チーズトーストを頬張りながら隣で紗耶香ちゃんがそんなことを言ってくる。話題か...そういえば、会社から連絡が少し来てたような...無視したけど。
「そうなの?」
「えぇ。会長の皇光彦もはっきりと言及していました。私も偶然この会社について取り上げましたけど、ここまで大きく問題なるとは......いや〜偶然ていうのは怖いですねぇ」
紗耶香ちゃんは知らん顔をして言ってきたけど......何故か一瞬背筋がゾッとしたのは気のせいだろうか?
「......そんなことはどうでもいい....それよりエイジ、いいニュースある」
「いいニュース?」
「そう!そうなんですよ!!」
お、おぉ...さっきよりもすごい嬉しそうにしてるね紗耶香ちゃん?凛明もいつもよりも口角が上がってるし。
「栞菜さんが許してくれたんですよ!私達の動画も編集していいって!!」
「...ん。やっとエイジと作業できる....嬉しい」
「えっいいんですか栞菜さん?」
コーヒーを飲みながらテレビを少し不服そうにして見ている栞菜さんに聞いてみる。
「....ほんとはエイジさんにそんなことしてほしくないのですが...二人は特別です。頑張ってもらいましたし...ほんっっとうに!!不服ですけどね!!」
「そ、そうですか....なんか、ありがとうございます....」
彼女の様子からして...納得したようには見えないけれど、底しれない圧によりそれを聞くことは出来なかった。
「あぁ、楽しみだなぁ...帰ったら何しようかな?一緒に雑談やるのもいいですし、ゲームもいいですね...エイジさんとやりたいこといっぱいですぅ...」
紗耶香ちゃん?俺、編集はするけど、生配信なんか出ないからね?なんで俺も出る前提で考えてるんだ?
「....エイジには一日中歌聞いてもらう...それでいっぱい褒めてもらう...むふふ」
凛明もこんなこと言ってるし...ほんとに俺、編集するだけでいいんですよね?
「...ん?そういえば凛明。いつも首にかけてあったネックレスはどうしたんだ?無くしたのか?」
特徴のある紋章が刻まれていたネックレスをつけてないことを聞くと、凛明はまるで気にしてなさそうに言う。
「....あれ、役目果たした....もう私には必要ないもの」
「役目?無くしたとかじゃなくて?」
「ん....私が手放した...だから心配する必要ない」
「それならいいけど...遠慮しなくていいからな?」
「...ん。ありがとう....むふ」
特徴的な笑いをしてから、席を立って俺に抱きついてきた。
(...これが父性というものなのだろうか?)
凛明の甘えてくる姿を間近に感じ、そんな感想を心の中でつぶやいてしまう。
「こら凛明!エイジさんに抱きついちゃだめ!!迷惑になるでしょ!!」
「....エイジ、迷惑がってない....だから大丈夫....それより、紗耶香は学校いったらどう?」
「くっ....!相変わらず痛いところついてくるね....まぁそろそろ時間がやばいので、出ていくけどね」
紗耶香ちゃんはそう言って、最後に一口だけパンを口の中に入れて、椅子の下に置いてあった手提げカバンを持って、立ち上がる。
「じゃあ栞菜さん、エイジさん。いってきますね!」
「気を付けて登校するのよ」
「いってらしゃい。学校、楽しんできてね」
「はぁ〜い!」
満面の笑みを浮かべながら、紗耶香ちゃんはリビングから出て、学校に向かっていった。
「...ん。じゃあ私も...歌の練習してくる」
「そっか。今日も頑張れよ」
「ん...頑張ってくる」
こっちにサムズアップをしてから、凛明も二階へと向かっていった。
(....さて、栞菜さんは...今も不機嫌そうにしているな)
「....私がエイジさんを拾ってきたのに....エイジさんは私のものなのに....」
これ、かなり不貞腐れるね...はぁ、仕方ない。
「栞菜さん」
「...なんですか?」
「これから配信用にゲームをするんですよね?もし良かったらそばで見てもいいですか?」
「えっ....い、いいんですか?」
「栞菜さんが良かったらですけど....」
そう言うと、栞菜さんは少しの間呆気に取られてたが、さっきの不機嫌そうな表情が嬉しそうに笑顔を浮かべてくれた。
「....ふふっ、はい。じゃあ今日も付き合ってください」
「分かりました。じゃあいきましょうか、今日はなにをやるんですか?」
「今話題になっている人生ゲームをやろうかと――」
―――会社に捨てられても尚、俺は大物の配信者の家でなんとか過ごしている。
さて、今日はなにがあるのだろうか?少しだけこの先が楽しみだ。
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