第5話 同棲生活の始まり
「着きましたよエイジさん。ここが、私たちの家です!」
栞菜さんが嬉しそうな雰囲気を醸し出しながら俺に言ってきた。
そんなに嬉しいのかな?と思い、彼女が住んでいる家を見てみると……へぇ。
「意外と普通の一軒家なんですね。」
あまり周り人気がない気がするが、それも一つの魅力だ。どこにでもありそうな家で少し親近感が湧いてくる。
「エイジさんはもっと豪華な家の方が良かったですか?」
「いやいや。少し意外だなと思っただけですよ。登録者500万人の配信者の家ってもっと凄いイメージがありましたので。俺的にはこちらの方が親近感が湧いていいと思います」
「そ、そうですか?それなら良かったです」
ふぅ…と安堵するように息を吐いている栞菜さん姿が見える。
「……もしエイジさんがお気に召さなければ、危うく売ってしまう所でした」
「ん?栞菜さん。今何か言いましたか?」
何か凄い物騒な事が聞こえた気がするが……彼女はまるで何事もなかったように言ってくる。
「なんでもないですよ〜。さぁエイジさん!早速家の中に入りましょう!」
「そうですね。では……お邪魔します」
彼女にそう促され、家の中に入っていく……のだが。
「こ、これは……凄まじい、ですね」
「あはは……その、お恥ずかしい限りです」
彼女から恥ずかしそうに顔を下げて、俯いている。
その家の中の有様に思わず顔を顰めてしまう。だって、一目見ただけで廊下にゴミがそこら中に散らかっている。
「私も、なんとかしようとせめてお掃除しようとしたのですが……そのせいで家がかなり散らかってしまって……」
も、もしかしてこの惨状って栞菜さんが掃除しようとして失敗したのが原因?
意外だ。いやすごく意外だよ。見た目だけでと家事や仕事が出来そうな完璧超人だと思ってたけど……どこか抜けているところがあったようだ。
「……じゃあ初仕事ということでまずはこの家の中のゴミを掃除しましょうか」
そのために、自身のカバンの中から自分愛用のゴム手袋とゴミ袋を取り出す。
「えっ?エイジさん?なんでカバンの中にゴム手袋とゴミ袋が入ってるのですか?」
「え?あぁ、実は前の会社で配信者の家に赴いた時があるんですけど、その人の家がとんでもないくらいにゴミが散らかっていて、大変なことになったので……その反省も込めて、あらかじめ持ってきてるんですよ」
今でも思い出すがあれは酷かった。なんか床の下に食べかけのカップ麺が散らばってたり、消費期限切れであろうパンがあったり……酷い目にあった。
「………ソウデスカ」
「?栞菜さん?」
「いえ、なんでもありません。ではエイジさん。私は一体何をすればいいのでしょうか?流石に何もしないのは気が引けるのですが」
う、うーん……彼女に掃除の手伝いをお願いしたいけど……多分、さらに悲惨な状況になるよな。
「じゃあ今からメモを渡すので、そのメモに書いてある材料を買ってきてくれませんか?」
「材料ですね?分かりました!お任せください!」
拳を自身の胸に打ち付けてやる気を示している。
その際に、栞菜さんの大きな胸がぷるんっと揺れるのが目に入ってしまった。
うぅ……目のやり場に困る。
そんなことを考えながらも彼女に今日の晩御飯の材料が書いてあるメモを渡して、栞菜さんは買ってくるために外に出て行った。
「ふぅ……さて、早速初のお仕事、頑張りますか」
気合いを入れるべく身体をほぐして、そのゴミの山を綺麗にするべく、隅々まで片付けていく。
だが、廊下とリビング、トイレにお風呂までゴミや汚れあったので凄い時間が掛かってしまった。
てかお風呂場まで広がっていたあの黄色の液体はなんだったんだ…‥?
それに、なんでリビングに下着が散らかっている……まぁあまり詮索はしないでおくか。
◇
「ふぅ……とりあえずここら辺の片付けは終わったかな?」
額から出てくる汗を拭いて掃除する前はゴミ屋敷とも言っても良かったリビングを見る。
今ではそれが嘘のように綺麗さっぱりとなり、一般家庭でも普通にありそうな部屋の光景がそこにはあった。
「さて、出来れば2階も掃除したいけど……流石に誰かの部屋を掃除するのは気が引けるし、今日はここまでにしよう」
そう思い、綺麗になった透明感のある窓を見ると、空が赤く染まっていて、どうやら夕方になってたらしい。
「はぁ……初の仕事でここまでやることになるとは……うぅーん、身体が痛い」
掃除をするために酷使した肉体を再びほぐすために身体を伸ばしたり、腰を回したりする。
ほんとは晩御飯の用意でもしておきたいんだけど……まだ栞菜さん、帰ってきてないんだよな。
どうしようかなぁ……って考えていると玄関のドアが開く音がした。栞菜さんが帰ってきたのかな?
「ただいまぁ……あれ?廊下ってこんな綺麗になってたっけ?」
栞菜さんよりも少しだけ若い声がした……どうやら違うようだ。そういえばあの人、私の他にあと二人住んでるとか言ってたな。
そんなことを考えていると、リビングの入り口から制服を着ているブロンド色の髪の女の子が目に入った。
「………え?」
「あ、どうも。今日からここでお仕事させてもらいます——」
「——きゃあああああああああ!!!!!不審者ぁああああああああああ!!!!!!」
自己紹介でもしようかと思ったら、目の前にいる彼女の顔が真っ青になり、その場から崩れ落ちれて逃げようとする。ちょ、ちょっと栞菜さん!?二人に説明してるんじゃないの!?
「ま、待ってください!俺は怪しいものじゃありません!」
「は、早く、けけけけけ警察に……!!」
「ちょちょちょちょ!?ほんとに待ってください!!俺、栞菜さんに頼まれてここにいるんです!!」
「……か、栞菜さんに?」
栞菜さんの名前を出した瞬間、やっとこちらの話に耳を傾けてくれるようになったのか、こちらを見続けている。
「は、はい。驚かせてしまってごめんなさい。栞菜さんに頼まれて今日からここで働かせて貰ってるんです」
「そ、そうなんだ……もうっ栞菜さんたら!なんで私たちに相談しないで決めちゃうのかな……ん?」
すると、急に立ち上がって俺の方を近づき、じっとこちらを凝視してくる。えっ、今度はなに?
「……あれ??」
「?どうかしましたか?」
彼女は何かに気づいたのか、時間がフリーズしたように固まっていた。何か言った方がいいかなと思っていると——。
「——ああああああああああああ!!!!」
「え?え?な、なんですか?」
「ね、ねぇ!!貴方って……!!」
あれ?この展開、どこかで見たことあるような……しかも今日、つい最近起きたような気が……そんな事を考えてると、興奮気味の高校生ぐらいの女の子が声を荒げて言い放った。
「もしかして………エイジさん!!??」
……あぁ、なるほどこれか。
デジャブとも思えるその展開に頭を抱えながら、俺は苦笑したのだった。
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《全てを失う悲劇の悪役による未来改変》
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