第2話 身を粉砕にして頑張った末路
「君はクビだ」
ここは、日本でも数少ない大手の映像制作会社「AOブリティア」
世界の映像制作コンテスト「SMART VIEW」
で日本が唯一最優秀賞を受賞できた履歴のある結構凄い会社だ。
その影響なのか、よく有名なユーチューバーやブイチューバー、配信者などから映像依頼が多々来るからこの会社に入れば少なくとも将来は安泰と言われてる。
そんな会社に所属している俺、小嶋祐介は自分の上司である人物にクビ宣告をされています。
……えっ?、えっ??
「ど、どういうことですか!?」
いきなりこの人に俺の所に来いと朝方に連絡が来て、無理して時間を作って来たらまさかのクビを言い渡される……納得出来るかっ!
そんな俺の思いとは裏腹に上司は耳をほじりながら説明し出す。
「いやね、君はもう要らないの。そんだけ」
「……はっ?」
今、目の前にいる人物の言っている事の意味が分からない……要らないから、クビ?
「……お、お言葉ですが…個人的な理由でクビをするのは今の時代、流石にどうかと……」
なんとか俺に興味無さそうにしている上司に説得を試みる。そりゃあ説得したくもなるわ。どうして毎日毎日無茶苦茶な事を俺に命令されてる人に「もう要らないから」って理由で努力して入ったこの会社をやめなければならないんだ…?
「あ〜……しつこいね。俺が要らないって言ったらこの会社に必要ないの。もう新しい人材も入るんだからさ。今まで頑張ってくれたのは感謝はしてるけど、そんだけ。ほらっ最後の仕事やり切って、もう出ていってね」
それだけ言って、もう俺は蚊帳の外なのかどこかへ向かう上司……であったであろう人物。
「……ははっ、なんだよ、それ」
ショックが大きすぎて俺はついガクッと膝をついてしまう。
俺のことを気の毒だと思って声を掛けようとしてる奴もいたが……今は、一人になりたい。
「……とりあえず、最後の仕事をするか」
なんとか切り替えてそんな事を言うが……結局仕事をクビにされたという事実が頭から離れず、いつもよりも数時間終わるのが遅くなってしまった。
その後、仕事を終えると俺は小さく「お世話になりました…」とだけ言って勤めていた大手会社を去った。
仕事を失った。それは…仕方ないと思う。
成果を出さなければ、そんな宣告されたって仕方ないと俺は思う。
だが、これでも俺はこの映像という仕事に少し誇りも持っていたし、やり甲斐もあった。
あの上司の無茶な命令にも自分の身体を酷使して、時には過労で倒れた時もあったが、全ての仕事をやり切った。
たまに来る依頼の人達とも仲良くやれていたと少し自負はしている。自分の経験を活かして、無名だった人たちをそこそこ有名に、稀に流行に乗ってトップ配信者達とも並べる逸材を育てたりした。
俺はそんな画面の中で自分の好きな事や命を掛けている人たちのサポートをするのがとても好きだったし…それが今の自分の生きがいでもあった。
「……それが、いまとなって用無しと宣言されて、現在無職に……ふざけてんのか?」
もう怒りよりも悲しみの方が来てしまう。
……俺、これでも頑張ったんだけどなぁ……
なんか、努力する人は報われるとか、いい人は報われるとかよく聞くけど……そんな言葉、今となっては虚しく聞こえるんだよな〜。
「ハハっ…俺、何のために頑張ってきたんだろうな…………あぁ……………………………くそっ」
今までの事を思い出したせいか、少しの間だけ視界がぼやけてしまう。雨なんて降ってたっけ……?でも今は少し、このままの方がいいや。
◇
「……さてっと…ここからどうしようかな……貯金はあるけど……流石に親に言うのは気が引けるしな……」
少しだけ落ち着いた後、俺は公園にあるベンチで今も子供の遊ぶ姿を見ながらこれからのことについて考えていた。
親に頼るという手段もあったが………それは最終手段だ。なにせ俺がAOブリティアに就職した時の喜び様を見たら……クビにされましたなんて言えるわけない。
最低、貯金自体あるのはまだ幸いだ。
これで少なくとも今住んでいるアパートから追い出されることはない……だが……。
「早く仕事探さないと……運が良ければ映像会社に……最悪は肉体労働の掛け持ち………はぁ…どうしてこんな目に……」
そんな憂鬱な気持ちにもなってしまう。そりゃあやめた直後に良いことなど考えられるはずがない。
本当にどうしようかなぁ……このままだと無職のまま生活していって働く気も失せて、そのまま孤独死なんてことも……いやいやいや!流石に考えすぎた…!そ、そうだよな…?か、考えすぎ、だよな………?
だんだんと自分の言ってることに現実味が帯びてきて怖がっている俺。
そんなことを考えていると……突如として声を掛けられた。
「……あ、あの!」
「?は、はい……?」
声が聞こえた方を向くと、少し緊張しているように身体を硬直させてるように見える女性がいた。
帽子のせいで顔がよく見えないがシンプルな黒髪のロングヘアーでつり目でもたれ目でもない中庸的な目をしており、それとは対照的に鼻筋や顎ははっきりとしており、顔の輪郭もすっきりとしていた。
雰囲気だけ見たら少し近寄りがたい印象を受けるが、色々な人を見てきた俺からすればそんな印象は持たなかった。
にしても凄い美人さんだな。こんな人に声を掛けられるなんて……あれ?でもこの声どこかで……。
「あ、貴方は…!その………エイジさん!!
………ですか?」
「………え?エイジ??」
え、エイジって……もしかして俺が中学の時にユーチューバーとして活動していたあのエイジ?
そう、俺は中学の時にエイジという名前でユーチューバー活動をしていた。中堅の有名の人達までとは言わないが何故か人気は出たんだけど、親にバレてしまい、それでお願いだからやめてとお願いされた。
なんとか続けたいとも思った俺だか、中学三年という受験の時期ということもあり、ユーチューバー業界から去っていった。
あれは俺の黒歴史として永遠に封じ込めたはずなんだが……まさかその名前を聞くこととなるとは……。
ただ、恥ずかしさのせいか、はいそうですとも言えず、なんとかはぐらかす様に目の前にいる美人さんのことについて聞くことにする。
「え、えっと……そ、その貴方は一体…?」
するとあ、そうでしたと自分の紹介するのを思い出したかのように彼女は口を開こうとするが……周りをキョロキョロと見ており、なかなか口を開かない。
「あ、あの…?」
その様子を見て流石に怪しく思ってしまった俺は声を掛ける。
「つ、ついてきてください!」
「って、おわっ!」
すると突然、俺の手を強引に握り締め、どこかに向かおうとしている。その行動に予想外だったせいか、あるがままに連れ去られてしまう俺、祐介。
……大丈夫だよね?
少し不安に思いながらも、そのまま美人さんに連れて行かれると、どこか人気のない路地裏に着いた。
「あ、あの、どうしてこのような……」
「す、すみません…あそこだと自己紹介するのは少し都合が悪かったので……では、改めて」
息を整え、胸に手を置いて相手に失礼のないように、その名前は言い放たれた。
「私の名前は
…ゲーム実況者、KANNAとして活動しているユーチューバーです」
「えっ……えぇ!?」
その名前に俺は驚きを隠せない。
だってもしこの人がKANNAだとしたら彼女は……登録者500万人を超える……大物配信者なのだから。
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