会社にクビと宣言された俺が登録者500万人以上の独占欲の高い配信者に拾われる話
近藤玲司
第一章
第1話 配信者との同棲
さて、早速だけど少し質問をしよう。
みんなは配信者という言葉を聞いてどんな事を思い浮かべる?
ゲームを通じてそのゲームの面白さを伝えて画面越しでも視聴者を楽しませることができるゲーム実況者?
アバターを使って先ほど言ったゲームやライブ配信を通じてトークをし、一緒に楽しむ最近話題のVチューバー?
それとも自作の音楽を作成して投稿したり、話題になっている歌を歌ってみた配信をする音楽系ユーチューバー?
他にもまだまだあるだろうが、人それぞれだろう。現に、SNSを見るとそのようなことばかり載っている。
それが今の、いや未来でも世間を飛び交うことであるだろう配信者達の姿だ。
そんな俺、小嶋雄介もまた動画を投稿している……わけではない。
じゃあ何故このような話をしたのかというと……それは、今の俺の生活を見れば分かると思う。
ここはとある街の、その中にある一軒家。そこでなんとか生活をしている。
そこで俺が今、何をやっているかというと………
「……エイジさん?聞いているのですか?」
……この、目の前にいる黒髪のロングヘアの女性、
「は、はいっ勿論です!」
背筋を伸ばし、弛んでいた姿勢を再び良くする。前を見ると…何故か、目に光を宿しているように見えない、大物のゲーム実況者の姿が見える。
「私、何度も言いましたよね?他の女性に近づくのはやめてくださいって。どうして言うことを聞いてくれないのですか?貴方は私の物なんですよ?この前だって、無名のよく分からない女の配信を手伝おうとして………そんなに、私と一緒にいるのが…いや、なんですか?」
光が全く見えない闇の籠った目から涙をポロポロと流している。その姿を見て俺は焦ってしまった。なんでこの人、こんなにメンタルが弱いの?
「い、いえ!決してそういうわけでは……」
「まぁまぁそんなこといいじゃないですか〜」
すると突然、横から誰かに抱きしめられる感触を受ける。ギギギっと首をだけを動かして隣を見ると……そこにはおそらく地毛であろうブロンド色の髪の女子高生、
「エイジさんエイジさん、栞菜さんのありがたいお話はまた後にして今は私と遊ぼ〜」
「いや紗耶香、今俺そんな暇が……」
「だ〜め」
するとギュッと何故か俺を抱きしめる力が強くなっていく
「…エイジさんは私と一緒に遊ぶんです、そうでなきゃいけません。私がいいと言ったらそうすべきなんですよ、はい。じゃないと寂しくて寂しくて死んでしまいそうなんですよ。もし今断られたら私、目の前で死ねる自信ありますよ。エイジさんは優しいからきっと断りにくいんですよね?でも大丈夫です。他の人に時間をかける必要なんてありません、私がエイジさんを楽しませてあげます、癒してあげます、どんなことだろうとしてあげてみせます、エイジさんはただ私と一緒にお喋りして、たくさん遊んで、たくさん私と一緒にいてくれたらそれでいいんですよ。あ、もちろん!エイジさんが嫌だった所とかあったら遠慮なく言ってくださいね。顔ですか?性格ですが?それとも私そのものですか?貴方が嫌だと思ったのならどんな手段を使っても治しますので!あ、それともエイジさんに嫌がらせしている人がいるんですか?それは凄く不愉快ですね。今から社会的に抹殺しましょう。さぁエイジさん一体どこの誰が…………」
「す、ストップっ!!ストップだ紗耶香!!
一旦落ち着け!?そんな人いないから!てか、いつの間にそんな話に!?」
相変わらずのマシンガントークに戦慄してしまう。というよりも何故急に俺が誰かに嫌がらせされてる話になったんだよ……
すると今度は、服の袖をくいくいと誰かが引っ張っている。
「……エイジ。今日も配信する…付き合って」
目をやるとそこにはさっきの二人のような長い髪ではなく、肩までかかっている白い光沢をした白銀色の小柄の女性、
「もうそんな時間か?だったら少し待っててくれないか?すぐに行くよ」
「今がいい」
「えっ?いやだから少し」
「いま」
「…」
流石は、話題沸騰の音楽系ユーチューバーだ。そこから出る一つ一つの言葉が重く感じる気がする。
「いま。じゃなきゃだめ」
「えっと…理由は?」
「……もうすぐ媚薬がとど…」
「ストーップ!!今なんて言った!?媚薬!?お前一体どんな配信取ろうとしてるんだよ!?」
「……エイジに飲ませて既成事実を作る」
「アウトだよっ!?このバカチン!!」
ペチっと彼女のデコに思いっきりデコピンしてやった。「うぅ…」と痛そうにしているが知らんっ!というよりどうしてそんなの取ろうとしたんだよ……。
「……エイジさん?」
涙声を漂わしながら出す声が聞こえ……。
「エイジさん?」
無邪気で元気いっぱいな声が聞こえ……。
「…エイジ?」
物静かだが、確かな意思を感じる声が聞こえる。
あぁ…なんでこうなったんだ?
こんな……まるで、ヤンデレと言ってもおかしくない程の雰囲気を醸し出している人たちを見ながら心から思ってしまう。
そう…全ては、数ヶ月前に始まった。
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