第28話 受け止めたくない運命

 自室、ベッドの上。

 ものすごく水の飲みたい気分で、ベッドから跳ね起き台所へ向かった。


 自室を出るまでの間、スマホは鳴らなかった。


 ◇


「おはよう深雪みゆき

「おはよう」


 台所には母が朝食の準備をしていて、食卓には茶碗が並んでいた。

 コップに水道水を入れて、それを飲み干す。


「ごめん。私、今日体調悪いから休む」

「そうなの?今日は入学式だし、無理してでも行った方が良いと思うのだけど」

「今日は無理そう。明日は行くから」


 そう言い残して、自室に戻った。


 ◇


 色々あった。整理しなきゃいけないことが山積みだ。


 とりあえず、共哉きょうやの方は戻って来れなかったみたい。前に、共哉というか他者がタイムリープするための条件について、考察していた。

 私の近くで死んだからとか、タイミングとか、私が殺したからとか。

 今回のを経て私は、私が望むかどうかが関係している思った。相手が望むかは無視して私が一緒に戻って欲しいと望んでいる状態で、死んだ場合に一緒に戻れるのではないかと。


 霧江きりえ朝日あさひが付き合うのが運命かもしれない件。これに関してはどうしようもないだろう。

 運命だった場合、それを引き裂くようなことを私がしなければならない。でも、それは強引な方法をとるということで、霧江に嫌われかねない。

 もしかしたら、霧江と朝日が付き合うか、私が霧江に嫌われるか、どっちかなのかもしれない。

 自分で考えてて、頭が痛い。


 次に今後の方針。クラスを前回と同じにすることは前提として、修学旅行で班長会議で出会わせない為どうするか。

 霧江に班長になるのをやめてもらうか、私も班長になって霧江のそばにいるか。どっちにしろ、まだ先の話だ。まだ時間はある。


 そう考えたところで、私の意識が途切れた。


 ◇


 次の日。入学式から一日経っての登校。

 霧江は先に行くと連絡が来ていたため、一人で登校した。


 学校到着。何回も繰り返してるので、クラス名簿を見ずに靴箱に向かった。

 そのままの流れで本来なら知るはずもない自分の教室に堂々と入っていく。


 そこで、


「おはよう、深雪。昨日は大丈夫だった?」

「えっと、隣の人だれ?」


 霧江の机にいる、髪の長い女子生徒を指をさし、尋ねる。


望月もちづき朝日です。よろしくお願いします」


 ◆


 深雪は走った。学校のことなんて忘れて。

 行き場のない感情を抱えて。

 世界を、運命を、呪った。


「あああああああああぁぁぁぁぁ」


 顔を涙でぐちゃぐちゃにして、人の目なんて気にせずに走った。

 そして__、


 


 ◆


 深雪は自分の部屋で目を覚ます。

 放心状態で、目に光が宿っていなかった。


 それから、深雪はまるで自動操縦AUTOのように学校生活を過ごした。

 何も宿ってない目で世界を見ていた。

 それでも、誰も気づかない。深雪の過ごした高校生活約七年間の記憶が今の深雪を作っていた。

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