第22話 新しい日常
四回目の二年生は、良い意味で何事もなかった。
宿敵である
霧江と朝日の接点が無いということは、出会うことも付き合うことも、ましてはキスをすることもできない。私の勝ちだ(不戦勝)。
お陰で、時間に余裕ができた。焦る必要なく、ゆっくりと好感度を上げていこう。朝日と出会わないのであれば、高校卒業後だって付き合えるチャンスがある。
◇
新しい系列での授業は、毎回大変だ。覚えることが多いし、成績が著しく下がってしまう。検定の勉強なんてやったことないし、電卓もパソコンもあんまりやった事がない。それでも、霧江と一緒に勉強できることでモチベーションを保てた。
霧江の成績は良くて、前回では、二年生を三周した私と同じくらいの成績だった。三周のうち二回は福祉の勉強をしていた、というのもあると思うが、それでも一年生の授業は完璧にできていた私と同じ成績だったのは少し悔しかった。
「霧江〜!ここの所、教えて」
「ここは、この関数を使うんだよ」
「ありがとう」
こんなやりとりが毎日のように続いている。
パソコンや簿記についても霧江は要領がよく、検定にも余裕で受かりそうなほどの実力を持っていた。
対して私は物覚えが悪く、霧江に聞きながら検定に向けて頑張っていた。
「あんまり霧江くんに聞かないで自分でやったらどうだ?」
「何よ、私一人で出来ると思ってるの?」
「そんな堂々と出来ない宣言されても__、ほら、霧江くんだって迷惑だろ。こんな人任せなヤツ」
「えっと__。」
「霧江が私を迷惑だって言うわけないでしょ!ていうか何で朝日のところ行かなかったんだよ」
「!?そういうことは大きな声で言うなよ」
「今更でしょ?皆んな
「ああああーーー!」
いつものやりとりと言えば、私と共哉の口喧嘩もそうだろう。最初の頃の周りのクラスメイトはどうしたらいいか戸惑っていたが、今では完全にスルー。クラスの名物みたいなものになってしまっている。
言い合う二人の間に挟まる霧江。この構図を見た人は、夫婦喧嘩に巻き込まれる小動物、と表現した。夫婦と言っても付き合ってる訳ではないし、共哉が朝日のことが好きなことは、ほとんどの人が知っている。
それを分かった上で、夫婦と表現したどこぞの運動部は死んでしまえ。
「何で共哉は私よりもパソコン出来るんだよ」
「俺よりも霧江くんだってできるだろ?」
「霧江に負けるのはしょうがないけど、共哉に負けるのは納得いかない」
共哉は前回も情報系列を選んでいたらしく、それで今はパソコンが出来るのだとか。それでも、最初の頃は全く出来なかったらしく、その頃の共哉に比べれば私だって勝ってたかもしれない。
「喧嘩売ってんのか?」
「まぁまぁまぁ。
「そうだよね!共哉なんて直ぐに追い越せるよね」
「そこまで言ってないけど…。」
霧江は冷や汗を流しながら呟く。
三人でいる時は、いつもこんな感じだが、共哉と二人きりになれば言い合いなんてしない。霧江がいるから少しはしゃいでいるのだ。共哉もそれを分かって反撃している。
何というか、これまでで一番『青春』してるなって感じている。
ちなみに、パソコンの検定は三人とも合格した。
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