第21話 クラス替え
四回目の高校一年生。特に何の進展もなく進んでいった。
進展は無かったものの、
一年の後期、二年生の系列選択。前回は
共哉は、霧江と朝日が同じ系列を選択させなければ良いのではないか、と言っていた。霧江か朝日のどちらかを説得することで別々の系列にするという算段だ。
どちらかで言えば霧江の説得になるだろう。そもそも、朝日とは初対面になる訳だし、前回だってあまり仲良くなかった。
具体的には霧江に進学系列ではなく、情報系列を勧めるというものだ。
どうして、福祉系列ではないかというと、進路の幅が福祉系に偏るからだ。そもそも、霧江が進学系列を選んだ理由は、未決定の進路の幅を広げるためである。その点、情報系列ならば簿記やパソコンなどの検定をたくさん受けるからだ。検定を持っていると、進学や就職するときに有利になる。
こじつけではあるが、筋は通っている。
「霧江!」
「どうしたの
「系列選択のことなんだけど、どこにするか決めた?」
現在は学校の休み時間。いつもの雑談に交えて系列の話を切り出した。
「うーん、進学系列かな。まだ進路決まってないし、ある程度は勉強しといた方が良いかなって」
「まだ迷ってるなら、一緒に情報系列にしない?」
「情報系列?なんで?」
「先輩から聞いたんだけどさ、情報系列って簿記とかパソコンとかの色々な検定を受けたりするんだって。進学するにしても就職するとしても、検定を持ってた方が有利じゃない。だからさ、一緒に情報系列にしない?」
「うーん。確かに、検定を取ることも大事だよね。ちょっと考えてみるよ」
「わかった。いい返事を期待してるよ」
とりあえず、言いたいことは伝えた。後は霧江がどう行動するのかにかかってる。心境が変わればいいのだが。
◇
後期、系列選択の日。
あれから霧江と系列の話をしていない。結局、霧江は何を選んだのか。
「蒼!」
「どうしたの霧江」
「系列のことなんだけど、俺も情報系列にしたんだ」
「え?本当に?」
「本当だって」
「そう、そっか__」
「?__どうしたの。なんで泣いてるの?」
「え?」
私は頬に手を触れると、少し暖かい液体が目から流れていることに気づいた。
涙が出るほど、嬉しかったのか、安堵しているのか。どちらにせよ私は今、最高の気分だ。
霧江が系列を変えたからといって、来年のクラス替えで朝日と一緒にならないとは限らない。それでも、霧江が私を選んでくれた様な気がして嬉しかった。
◇
後期のイベントが全て終了し、春休みに突入した。
私の心の中はクラス替えのことでいっぱいで、あまり休めた気がしない。
今回は今までよりも手応えがある。何せ、霧江の意識を自ら変えることに成功した。一回目はまだしも、二回目は一回目をなぞり、三回目は自分が系列を変えて、四回目で霧江の系列を変えさせたのだ。
始業式の日を待ちながらも、結果を見る怖さが私の中にはあった。
◇
始業式の日。
霧江と話しながら登校していた。
「また、同じクラスがいいね」
「そうだね、また……」
霧江の言う「また」と私の言う「また」は意味が違うと思う。
少し、前のことを思い出して胸が苦しくなる。
学校、生徒玄関前。張り出されたクラス名簿に、同じ制服を着た生徒たちが群がっている。
人の数が少なくなってからクラス名簿を確認する。
二年四組、前のクラス所には名前はない。私も、霧江も。しかし、目線を下げると朝日の名前を確認できた。つまり……、霧江と朝日のクラスは別である。
なんとも言えない達成感で少しの間、朝日の名前から目線を外すことが出来なかった。
「蒼!見つけたよ、二人とも五組だよ」
「え?本当に!?」
「ほら、ここ」
霧江が指した五組の名簿には、二年五組一番、
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