第19話 フォース・スクールライフ

 何度目かの入学式の日。霧江きりえと一緒に登校した私は、着いて早々共哉きょうやに連れられて空き教室に居た。HRホームルームの時間まで少し余裕がある。


 今朝、電話越しに困惑と期待の混じった声で、どういうことなのか問い詰められて面倒臭くなり、「学校で話す」と途中で切ってやった。


「気づいていると思うけど、死んだと思ったら過去に、高校の入学式の日に戻って来ましたー(パチパチパチ)」


 私は、芝居掛かった話し方で説明し大袈裟に拍手をする。


「どういう事だよ!俺ら橋から落ちた…というか俺、お前に落とされたじゃん!それに今まで二年の秋頃だったじゃんか!」

「__だから、戻って来たんだって」

「って事はまだ朝日あさひは付き合って無いってことか?」

「そうだね」

「……はぁ」


 共哉はまだ信じられない、といった様子だけど一様は納得してくれたらしい。


「他の人は記憶あるのか?」

「無いと思う」

「ちなみに今回って何回目?」

「忘れた。実験で何回かやり直してて、学校生活は三回くらい繰り返した」

「前回よりも前に俺に会ってたりするのか?」

「話したことは無いけど、同じ学年だし廊下ですれ違ったりはしたんじゃない」


 だんだんと受け答えも面倒臭くなってきたな。あぁ早く霧江に会いたい。


「最後に、深雪みゆきは霧江と付き合えた事はあるのか?」

「__無い。付き合うために繰り返してるから、付き合ったら繰り返す理由は無くなる」

「そっか__」


 ちょうど予鈴が鳴り、一先ずは解散となった。


 四回目の入学式が終わり、各クラスでのLHRロングホームルームを済ませ、午前中で下校となった。


あおい、帰ろう」

「うん!」


 霧江からの誘いを受け、一緒に生徒玄関に向かう。これから二人で話しながら下校して好感度を少しでも上げよう。


「ちょっと待って!」


 聞き覚えのある声。共哉だ。


「まだ聞きたいこといっぱいあるんだけど!」

「蒼の知り合い?」

「知らない人だよ」

「おい!」


 二人の時間に割って入ってきた共哉を知らない人扱いすると、不服そうにツッコミを入れてきた。

 正直、このまま無視して帰りたいがこの様子だと着いて来そうだ。


「ごめんね、霧江。ちょっとアイツと話したいことがあるから先に帰ってて」

「別にいいよ。またいつでも一緒に帰れるから。また明日ね」


 そう言って霧江は外履に履き替え学校を出て行った。


「あんまり、私と霧江の邪魔しないでくれる?」

「悪いとは思ってるけど、こっちだって混乱してるんだって」

「で、ここで話す?それともどっか行く?」

「あー、お腹も空いてるしフードコートに行くか」


 フードコートのあるショッピングモールまでの移動中にも色々話した。

 どうしてタイムリープができるのか聞かれたけども、分からないとしか答えられなかった。


 フードコートは、そこそこ混んでいて周りに声が騒がしい。ここでタイムリープの話をしても誰も気に留めないだろう。

 とりあえず、席を取りフードコートで昼食を買う。私は、いつも家族で来る時に注文するハンバーガーのセットで、共哉はラーメンだ。


「それで、タイムリープについてもっと詳しく知りたいんだけど…」

「うーん…、一回目は車に撥ねられて死んだなって思ったら入学式の日に戻ってた。二回目はもう一度戻れるかも?って思って橋から飛び降りて…」

「タイムリープの条件は死ぬことみたいだね」


 共哉がラーメンを啜りながら話す。かく言う私もお腹が空いているので、ハンバーガーを片手に話している。


「思ったんだけど、もし仮に今深雪が死んだとして、戻った世界の俺はどうなるんだろう?今回の初めに戻るのか、それとも完全に忘れてしまうのか」

「さぁ?私も詳しいわけじゃ無いから」

「まぁ、そうだよね」


 多分、後者だと思う。今までセーブされた事がなかったのに、共哉がタイムリープした事だけ上書きされるとは考えずらい。


「もう一つ思ったんだけど、俺がタイムリープできたのって深雪の近くで死んだからか、深雪に押されて死んだからなのか、それとも別の要因があるのか」

「後者だったら共哉が一人で死んでもタイムリープが起こらないね」

「あー、確かに。タイムリープするときは俺も戻してくれよ」


 笑いながら話す共哉に、軽く返事を返した。

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