第18話 クレイジスト
私の心の中の光が消えた。理由は好きな人のファーストキスが他の人に取られたから。
ここ数日に意味はあったのだろうか。二人の動向を観察して、嫌な気持ちが溜まっていって__。辛い思いをするだけだったじゃない。
もしかしたら直ぐに別れるかも?一周目に三年生まで付き合っているのを知っていたじゃないか。
ショックを受けた私と
一つ、良いことを思いついた。
「ねぇ、共哉。私の電話番号、連絡先でも良いけど覚えてる?」
「__スマホを見ればわかるだろ?」
「そうじゃなくて、何も見ずに言えるかってこと」
「あんまり自信はないな」
「じゃあ、今覚えて」
「?」
共哉は不思議に思いながらもスマホを見ながらブツブツと数字を呟く。
共哉に連絡先を覚えさせているのは、この後必要になるから。絶対って程でもないけど。
「覚えたよ」
「じゃあ、着いて来て」
私は、共哉を連れてあるところに向かう。道中、共哉に目的地をしつこく聞かれたが「着いてからのお楽しみ」と誤魔化した。全然楽しい場所じゃないけどね。
「着いた。ここだよ」
「ここって言われても__」
共哉を連れて来た場所は、二回目で死んだ橋。特になんの変哲もない橋に連れて来られた共哉は、何がなんだかわからない様子で戸惑っている。
ここに来たのは死ぬため。でも少し実験をしようと思ったから共哉を連れてきた。実験の内容は一緒に死んだ人もタイムリープするのかどうか。
そもそも、死ぬこと以外の詳しい条件が分かっていないタイムリープ。タイムリープする人を増やせるのかも不明だ。失敗しても、共哉が記憶を引き継げないだけで私に不利益はない。
「もしかして、ここから飛び降りる気か!?俺は心中なんかごめんだぞ!」
ここに来た理由を察したのか、警戒した様子でこちらを伺っている。
「そんなの__、知らない!」
ドンッと勢い良く共哉を橋から落とす。困惑と恐怖に染まった顔がすごく面白い。
続いて私も橋から飛び降りる。前みたいに滑って落ちるなんてカッコ悪い落ち方はしない。
もし、共哉もタイムリープ出来たとして、今の衝撃で連絡先を忘れるかも知れないな。まぁ、忘れてもどうせ同じ学校だし探しにくるだろう。
「あはははは」
落下中の共哉と目が合う。不気味に笑う私の顔に恐怖しているのか怯えた様子で地に落ちていった。
程なくして私も地面に叩きつけられる。痛みもあるがそれよりも、これからどうなるのか楽しみで仕方がない。
遠のく意識の中、そんな事を考えていた。
◇
目が覚めると、自室のベッドに横たわっていた。
ふと霧江と朝日のキスが頭を過ぎる。死ぬ時はこれからの事で頭がいっぱいで一時的に忘れていたが、かなりショックだった。
不意にスマホが鳴る。これまではこんなこと無かった。
つまりこの電話は__。
「__もしもし」
「おい!どうなってんだ!?」
聞き覚えのある声、共哉からの電話であった。
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