第17話 あの日の続き
『ごめんね呼び出して、二人きりが良かったから』
ドア越しに聞こえてくる
『
前と同じように少し雑談を挟んでから本題の告白に入った。
横で同じように聞いてる
告白を受けた霧江がその場で了承して、二人は付き合った。
霧江が今どんな顔をしているのか想像するだけで胸が締め付けられる。
ーーやり直そう。
また死んで、もう一回イチからやり直そう。あの時と同じ橋で。
また溺死するのは嫌だから、今度は地面のある所で落ちよう。
高さは大丈夫かな?頭から落ちれば大丈夫だろうか?
「__帰ろう」
「そうだね」
私の呟きに共哉が答える。
その場から足早に立ち去り生徒玄関に向かった。
「これから、雨だけど傘持ってきてるか?」
そういえば、前も雨だったな。
「折り畳み傘、鞄に入ってる」
「そっか__」
傘さすつもりは無いけど。
「あのさ__、まだ大丈夫だよ。今は付き合ってるけど、直ぐに別れるカップルとか普通にあるからさ__」
共哉が私に投げかけている言葉だけど、自分に言い聞かせているように聞こえる。
「また、尾行しようぜ」
力無く笑う共哉は、まだ諦めてないように思えて、これまでの自分は霧江を諦めてしまったように感じた。もちろん、霧江を諦めた事なんて無い。
でも、未来にある霧江を諦めてないだけで、その時その時の霧江を諦めたとも言える。
「そうだね、まだ可能性はあるかもね」
それに、この後どうなるのか私は知らない。知れば今回は無理でも次に活かせるかも知れない。
その場を解散して、帰路に着いた。その時にはもう完全にとは言えないが気力も回復していて、鞄にある折り畳み傘をさして帰った。
◇
その後、二人が付き合ったという事実を少しだけ目を瞑り、学校生活を続けた。
朝日と付き合ってから霧江は、よく朝日と二人で買い物に行くようになった。その度に共哉と二人で尾行をして、日課のようになりつつある(不本意)。
学校生活の方は、期末のテストが近づき、みんな大慌てで勉強している。
私の方は勉強に一切手を付けていない。
元々成績は悪い方で、毎回赤点ギリギリで、五十点や六十点で低かったと嘆くクラスメイトが嫌味を言っているように聞こえていた。
だが、何回か学校生活を繰り返したことによって基礎が固まり、授業を聞くだけでもテストの点数がみるみる上がっていった。今では平均七十点くらいは取れる。
しかし、今回は進学系列だったのもあって二年生からの成績は少しずつ下がっている。
それでも、テスト勉強はしない。
期末テスト準備期間。一部を除く部活動が休止になっていて共哉は朝日に会えないと嘆いていた。ほぼ毎日、尾行しているだろうに。
霧江たちはテスト勉強という建前で放課後はいつも一緒にいる。
今日もご丁寧に休み時間に見せつけるように約束をして、放課後二人で教室を出ていった。
直ぐに共哉と合流して尾行を始めた。
数時間後、特にいつもと変わったこと無く勉強をしていたが机の上を片付け出した。もうそろそろ帰るのだろう。
普段二人が勉強をしているのはショッピングモールのフードコートで邪魔にならないように端の方の席を使っている。
私たちも移動する準備をして、二人の後を追った。
いつものように、帰路に着き二人が別れる別れ道まで来た。人の居ない小さな公園の前で少し雑談をしてから別れる。いつもの流れだ。
突然、朝日が霧江に近づいたと思ったら朝日は霧江の口にキスをした。
その頃には私も共哉も気が抜けていて、言うなれば油断をしていた。注意深かったら防げたかと言えばそうじゃない。完全に私も共哉も霧江も不意打ちを喰らったのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます