第16話 体育祭
花火大会の後、夏休みは何もないまま終わり、始業式の日が来た。
夏休み明けの学校生活も、特に変わったことなく進んでいき、体育祭の準備期間に入った。準備期間と言っても特にすることはなく、出場する競技を決めたり、体育でその競技の練習をしたりするだけだ。
準備期間の間にも、
このまま、行けば二人は付き合う。
ただ、万が一にも二人が付き合わない可能性に賭けて二人を観察し続けていた。
◇
体育祭当日。前に見たのは別のクラスのテントだったから、こうして二人の様子を間近で見ていると本当にどうにかなってしまいそうだ。
遠い目で二人を眺めていると朝日の出番が来たようでクラスのテントを離れていった。
私もテントを離れ、水飲み場に水を飲みに行った。
「…このままじゃ、付き合っちゃう」
誰に言った訳でもなく呟いた。
「朝日さ、リレーで一位取ったら告白するって言ってた」
「!?」
声のする方に顔を向けると、
情報の出所は多分、部活で朝日たちの会話を盗み聞きでもしたのだろう。そんな奴にストーカー呼ばわりされたくないな。
「リレーって学年別の選抜リレーのこと?」
「そうじゃない?」
「
リレーは体育祭のプログラムの一番最後の競技だ。それまでの間に、男女別の騎馬戦があったり、借り物競争があったり、全クラス対抗のドッジボールなどが競技にあった。
ちなみに私は、全員参加のドッジボールと借り物競争に出たが、ボールに直ぐ当たって外野になってそれ以降戻ることがなかったし、借り物のお題も「好きな人」とかではなく、「学校の先生」と何も良いことがなかった。
選抜リレーは学年別の男女混合で各クラスから五人選び、一人トラック半周、アンカーのみトラック一周して順位を競う競技だ。一位を取るには、朝日の実力はともかく、他四人の実力にもよる。
「俺もそれ出るからさ、ここで勝つのを阻止すれば、とりあえず今回の告白は無くなるはずだ」
そういえば、前回の体育祭では朝日のクラスがリレーで一位だった気がする。
多分、その時も共哉は阻止しようとしたけど失敗したのかな。あったかもしれない過去のことを思い出して、共哉への期待値が下がっていった。
「…期待せずに待ってるよ」
「ちょっとは応援してよ!」
怒ってはいるものの、共哉は少し楽しそうだった。
◇
結果は言うまでも無く、朝日のクラス(私のクラス)が一位だった。
しかも、朝日はアンカーなのにも関わらず、共哉は第二走者だったし。共哉はめちゃくちゃ期待を裏切ってくれた。
ゴールテープを切った時の朝日の嬉しそうな顔は、本当に憎たらしかったし、それを見て霧江が喜んでいたのも、本当に妬ましかった。
放課後、空き教室。二人が教室に入ったのを見計らって共哉とともにドアの前で盗み聞きをしていた__。
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