第6話 エマージェンシー発生
二年生三回目はとても新鮮だった。
クラスに
ただ、
ひとまずは霧江と一緒に行動をしていれば接触する可能性は低いだろう。
新しいクラスになって初めてのホームルーム。出席番号一番の私から順に自己紹介をしていく。
「
よろしくなんて心にもないことを口にする。仕方ない、それが自己紹介の定型だから。
少しして霧江の番。
「
緊張で震えている声も、私と同じテンプレな自己紹介も、少しもじもじとした仕草も、その全てが愛おしい。
少し、取り乱してしまったが、三回目の二年生の出だしは良好だったと言えるだろう。とりあえず、自己紹介中の朝日を睨みつけてやった。
新しいクラスメイトは一回目や二回目と大きく変わっていて、クラスの雰囲気は新鮮だった。
◇
放課後、私は霧江と一緒に下校していた。
「あのさ…」
改まったように霧江が切り出す。
「どうした?」
「えっと、蒼に相談があるんだけど。誰にも言わないでね」
「言わないよ」
そもそも言いふらす相手がいないことは内緒。
「好き、まではいかないけど気になる人?がいるんだよね」
「気になる人?」
まさかとは思うがあの人のことではないだろうな。
だって、まだ話してた様子もなかったし…。
「同じクラスの__」
待って、言わないで。嘘だと冗談だと言って。
「
終わった。なんでいつもいつもこうなるのだ。
つまり、霧江は朝日に一目惚れをしたということだろう。
本当に頭が痛い。
「どうかしたの?」
「あぁ、何でもないよ。それで?」
一応冷静を取り繕っているけど、内心はかなり焦っている。
否定したい。朝日はだめだって、私の方が良いと。だけど、そんな勇気があればとっくに告白をしている。私が意気地なしだったからここまで、ずるずると来ているのに。
自分で自分が嫌になる。
「とりあえず、友達になりたいから協力して欲しいの」
「えっと…」
断ろう。丁重に断って朝日のことを諦めてもらおう。
「ごめんね。私もあまり、朝…望月さんとは仲良くないから、力になれないかも…」
「そっか…」
うっ、協力してあげたい、だけど敵に塩を送るような真似はしたくない。
「そ、相談なら、聞いてあげれると思うよ」
「なら、困ったことあったらお願い」
「ま、まかせろ」
霧江の残念そうな顔を見たら、咄嗟に口走っていた。
◇
次の日。霧江と一緒に登校しながら、昨日口走ったことを後悔していた。
表向きでは、霧江と朝日が付き合えるように協力して、裏では霧江と朝日を付き合わせないようにするなんて、矛盾しているし、かなりの難問だ。
露骨に邪魔しすぎると霧江から嫌われる可能性だって出てくる。
とりあえずは、話すきっかけができないよに、霧江から離れないようにしよう。
「……?」
こんなことを考えながら歩いてるから、時々霧江に不思議そうに見られた。
学校に到着した。登校中に色々考えたが霧江は恥ずかしがり屋なので、積極的にアピールをするとは思えないという結論に辿り着いた。
ましてや、朝日はそこそこモテるからハードルも高いはずだ。実際、一回目と二回目で告白したのは霧江ではなく朝日だ。
ただ、朝日の方からの接触なら霧江も話しやすいだろう。そこだけは注意しなければならないだろう。
一旦、霧江と別れて自分の席に着いた。
ーーまぁ、朝日から霧江に話すことなんてあるわけないだろうけど。
「おはよう、霧江くん」
『!?』
朝日が霧江の席まで行き挨拶をする。
ーーなんで?霧江と朝日に接点なんてなかったのに__。
席が離れているため、会話の内容は聞き取れないが、楽しそうに話していることは分かる。そんな中に入って行ける勇気が私にはなかった。
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