第5話 サード・スクールライフ
三回目の学校生活では作戦がある。
前回(二回目)では、何となくで一回目と同じ福祉の系列を選んだため一回目と同じ道を歩んでしまった。今回では霧江と同じ、進学の系列を選択することで同じクラスになる確率を上げる。
私の考えでは、クラス替えでは同じ系列の人が多くなる。割合で言うと仮にある組は進学が五十%、その他が五十%、ある組は情報が五十%その他が五十%、ある組は福祉が五十%という具合になっている気がする。
一回目で三年生の時に霧江と同じクラスになったのはその他の五十%に属していたと考えられる。
私の考えが正しければ、霧江と同じクラスになる確率は前回の二倍になる。勉強があまり得意ではない私の計算だから正確性はかなり低いだろう。しかし、やらないよりも良いと思う。前回と同じ道を辿るわけにはいかないから。
◇
高校一年、前期の生活は二回目とほとんど変わりはない。毎日のように話して、私を意識させるようにする。クラス役員や行事役割なども同じものにしてどうにか好感度が上がるように頑張った。
それでも二回目と変わらず霧江が私を好きになる事は無かった。
後期も特に変わったことはない。ただ、霧江と同じ系列を選択するだけ。そうすれば、同じクラスになるかもしれない。絶対では無いが、するのとしないのでは結果が変わると思う。
そんな不確定な要素だけが、私の心の支えだった。
震える手で、進路希望調査の紙の進学系列欄にチェックをつけた。
◇
二年生として初登校。私は心臓の鼓動を落ち着かせながら、一歩ずつ学校に向かっていく。
隣には霧江がいる。一回目ではとっくに別々に登校していたのだが、二回目も三回目も私がよく話しかけたこともあって、一緒に学校へ行くことが多く、この日も一緒に登校していた。
「また、同じクラスが良いね」
霧江が不安げに話す。
二回目の私は、
「そうだね」
笑顔で返すと、霧江は照れくさそうに話題を変えた。
「今更だけど、てっきり
霧江と同じ系列が良かったから。なんて言ったら「自分の本当に行きたいとこ選びなよ」と怒られてしまうだろう。
「ちょっとだけ大学に興味があったって感じ」
「え!?どこの学校?」
「_別に具体的な進学先は決めてないよ。霧江と同じ」
霧江が進学系列を選んだのは、進路の幅を広げたい、という真面目な理由だ。実際三年で進学先をどこに決めたかは、引きこもっていた為、分からないが。
いつか、霧江があの後どうなったのか見てみたいとは思うが、前回みたいになるようだったら、霧江と朝日が一緒にいるのを見るのを耐えられる気がしない。
校舎前。張り出されているクラス名簿に群がっている人が減るのを待ってから確認しに行く。
一、二回目の時のクラスは二年五組で、今回のクラスは二年一組。前と変わっている。
そんな事よりも、霧江の名前を。前は十番代だったから十番前後を確認する。
「……あった」
私は静かに表に出さずに喜んだ。私は未来を変えたのだ。
言葉に言い表せない感動で今にも叫び出しそうなほど嬉しい。
まだ自分のクラスを見つけれなくてウロウロしている霧江のところに向かう。
「あったよ。二年一組、同じだよ!」
「やったね!」
霧江の嬉しそうに笑ったその顔を、私はずっと見ていたいと思った。
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