最終回

(ツクツクホーシ…)


それから2ヶ月後の8月28日であった。


この日の予想最高気温は、35度で猛暑日になると報じられた。


時は、午前10時半頃であった。


ところ変わって、悠伍ゆうごの家族たちが暮らしている家にて…


家のテーブルに菜摘なつみ亜弥子あやことなおみの3人がいた。


晃代てるよは、朝から出かけていて不在であった。


なおみは、翌日は大阪でお仕事をする予定なのでこの家に立ち寄った。


なおみは、菜摘なつみ亜弥子あやこに対して仕事上の関係で急に都合が悪くなったことを伝えた。


義母おかあさまごめんなさい…仕事上の関係で急に都合が悪くなったのよ…」


菜摘なつみは、怒った声でなおみに言うた。


「急に都合が悪くなったって、どう言うことよ!?」


なおみは、ひどく困った声で言うた。


義母おかあさま!!アタシは自己中心的な都合とは言うてないのよ!!イワマツグループのお仕事のスケジュールの関係でアタシの都合が急に悪くなったのよ!!」

「なおみさん!!」

菜摘なつみさん…」

「義母さま!!」

「あなたがガーガーガーガー怒鳴り散らしたらなおみさんがイシュクするわよ!!」

「分かってるわよ…」


亜弥子あやこは、菜摘なつみをなだめたあとなおみに対して理由をたずねた。


なおみは、ものすごくつらい表情で亜弥子あやこに言うた。


「他にも都合が悪いことが生じたのです…健介けんすけさんが、2週間前に吐血したあと倒れたのです…診断の結果、センガンでステージ4と診断されたのです。」

「ステージ4のセンガン…」

「ええ…アタシはイワマツグループのメンバーたちと一緒に世界のあちらこちらを回っているので…家に帰ることができないのです…その間、健介けんすけさんに健人けんと生海いくみの育児を全部まかせていたのです…アタシひとりのせいで健介けんすけさんが犠牲になった…そう思うと…すごく心苦しいのです…」


亜弥子あやこは、つらい表情でなおみに言うた。


「心苦しいと思うのであれば『お休みをください…』と上の人に申し出たらどうかな?」


なおみは、ものすごくつらい表情で言うた。


「できたら申し出たいけど…アタシはリースバック会社全般を任されているので休みたくても休めないのです!!」

「それじゃあどうするのよ…問題は、健介けんすけが入院しているあいだ子どもたちをどうするかよ。」

生海いくみは、近いうちに豊岡で暮らしている子供のいない夫婦の家に養女に出すことになりました…健人けんとは、波止浜(愛媛県今治市)にある母子保護施設へ預けます…」

「なおみさん…」

祖母おばあさま!!すごくつらい決断を下したうちの気持ちをわかってください!!」

「なおみさんのお気持ちはわかるわよ…だけどやっぱり…」

祖母おばあさまはうちになにを求めているのですか!?」

「うちは、健人けんとくんと生海いくみちゃんがなおみさんと離れ離れになるのがイヤだから…」

「イヤだからどうしてほしいのですか!?…アタシにイワマツグループをやめろと言いたいのですか!?」

「やめろとは言うてないわよ…しばらくの間だけお休みをもらってと言うてるのよ…健人けんとくんと生海いくみちゃんは、ママと一緒に過ごす時間がほしいと言うてるのよ!!」

祖母おばあさまのお気持ちはよく分かりますが、代わりがいないのです!!」

「それじゃあ困るわよ〜」


亜弥子あやこから口やかましく言われたなおみは、ものすごく怒った声で『もういいわよ!!』と言うたあと、1枚の書面をテーブルに出した。


1枚の書面は、リコン届を出しましたと言う証明書であった。


菜摘なつみは、真っ青な表情で『健介けんすけとリコンした…』と言うた。


なおみは、深刻な声で菜摘なつみ亜弥子あやこに言うた。


「アタシ、健介けんすけさんにもうしわけないことをしたのでリコンすることにしました…3年前にアタシの前のダンナが通り魔事件で亡くなったので健介けんすけさんとサイコンしました…健介けんすけさんは…同じ時に…職場で知り合った婚約者の女性と結婚する予定だった…それを…アタシひとりの都合で…健介けんすけさんは…婚約者の女性と結婚することをやめた…健介けんすけさんがつとめていた職場の人に健介けんすけさんと婚約者の女性を別れさせてほしいと頼んだと言われても仕方がありません…」

菜摘なつみさん。」

祖母おばあさま、義母おかあさま…アタシは…結婚にしばられるのがイヤなのです!!…だから健介けんすけさんとリコンしました!!…ただそれだけです…子どもの養育費などについては…アタシの稼ぎがあるので大丈夫です…健人けんとについても、近く養子縁組の話が決まります…それもお伝えしておきます。」


なおみは、一方的に突き放す声で言うたあとあらたとことはのお見合いの返事を菜摘なつみ亜弥子あやこに伝えた。


「最後に…あらたさんとことはさんのエンダンについてですが…ことはさんのご両親が『待ってくれ…』と言うたので、しばらくの間…ホリュウします。」

「ホリュウにするって…」

「ですから、ことはさんのご実家で都合が悪いことが生じたのです!!」

「ことはさんの実家で、都合が悪いことが生じたって?」

祖母おばあさま!!義母おかあさま!!…ことはさんのご両親は、次女さん(28歳)のエンダンを大急ぎでまとめたいのでヤッキになっているのです!!…次女さんが正式にオムコさんをもらうまで待ってくださいと言うてるのです!!」


なおみが言うた言葉に対して、亜弥子あやこはつらい表情で言うた。


「分かったわよ…あらたに伝えておくわよ…」


話し合いはそこで終わった。


なおみは、武庫之荘の家から出たあとイワマツグループのA班のメンバーたちが待っている大阪市内へ引き返した。


その頃であった。


あらたは、いつも通りにオフィスでデスクワークに取り組んでいた。


あらたはことはとお付き合いをするかどうかを悩み続けたが、実家いえの状況などをコウリョした上で取りやめることにした。


これにより、あらたとことはのエンダンはハクシテッカイされた。


時は、午後3時頃であった。


またところ変わって、大阪伊丹国際空港のVIP専用のロビーにて…


VIP専用ロビーにイワマツグループのA班のメンバーたちがいた。


ことはは、ロビーの窓から夕暮れ時の空を見つめながらつぶやいた。


もうまよわない…


アタシ…


やっぱり結婚にしばられるのはイヤ…


アタシは…


アタシ自身の人生を歩むのよ…


(ゴーッ…)


時は、夕方5時半頃であった。


イワマツグループのA班のメンバーたちが乗り込んだ専用機が大阪伊丹国際空港から飛び立った。


ことはは、窓に映る伊丹・大阪池田の街並みを見つめながらつぶやいた。


さよなら…


あらたさんさよなら…


ところ変わって、阪急梅田駅のプラットホームにて…


スーツ姿で黒の手提げカバンを持っているあらたは、阪急神戸線のプラットホームに立っていた。


あらたは、夕空に飛んでいる専用機を見つめながらなにを思っていたのか?


【おわり】


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【辛口ヒューマンドラマ】私のしあわせな結婚−32 佐伯達男 @cfzf5698xp

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