第21話

時は、夕方5時半過ぎであった。


またところ変わって、健介けんすけの家族たちが暮らしているマンションの部屋にて…


マンションは、悠伍ゆうごの家族たちが暮らしている家から歩いて4〜5分のところにある。


健介けんすけ健人けんと生海いくみの父子3人は、手作りハンバーグを作っていた。


この時、健介けんすけのスマホのライン通話アプリの着信音が鳴った。


電話は、菜摘なつみからであった。


健介けんすけは、うんざりとした表情で電話に出た。


「もしもしかあさん…今なにしてるって…子どもたちと一緒に晩ごはんを作っているのだよ!!…予定変更してくれ…なんで予定を変更しろと言うのだよ…また直也がウキウキしているから来てくれ…ふざけるなよ!!…かあさんは、ぼくたち家族の予定をぶち壊してなにがしたいのだ!!…直也はなにを考えているのだよ…かあさんはお人好し過ぎるよ!!…高校時代に一緒にお弁当を食べた仲だからと言うけど、時と場合を考えてよ!!…ふざけるな!!」


思い切りブチ切れた健介けんすけは、電話をガチャーンと切ったあとハンバーグ作りを再開した。


………


またライン通話アプリの着信音が鳴り響いた。


だれが出るか…


かあさんはなにを考えているのだ…


健介けんすけは、怒った表情でつぶやいた。


健人けんと生海いくみは、健介けんすけに対して声をかけた。


「おとーさん…」

「おとーさん…」

「なんだよ〜」

「電話が鳴ってるよ〜」

「おばーちゃんから電話だよ〜」

「出ない…」


それから数分後も、着信音が鳴りつづけた。


健人けんと生海いくみは、困った声で健介けんすけに言うた。


「おとーさん…」

「おとーさん…」

「おばーちゃんが困っているよ。」

「電話に出てって…」


なんで電話に出なきゃいかんのだ…


健介けんすけは、ものすごい血相で怒り狂いながらつぶやいた。


ところ変わって、悠伍ゆうごの家族たちが暮らしている家にて…


テーブルに菜摘なつみ亜弥子あやこが作った晩ごはんが並んでいた。


テーブルには、亜弥子あやこ菜摘なつみ健介けんすけ健人けんと生海いくみの父子3人と健介けんすけの幼なじみの塩見直也しおみなおや(30歳)と妻・伶香れいか(32歳)と長男・まなや(5歳)と長女・伶子れいこ(生後100日)がいた。


悠伍ゆうごあらた晃代てるよ亜香里あかりは、まだ帰宅していなかったので食卓にいなかった。


直也なおやは、職場でいいことがあったので菜摘なつみに話したい…


いいことがあったから健介けんすけとごはんが食べたい…


…と言うた。


健介けんすけは、菜摘なつみがどうしてもきてほしいと言われたことに対して腹を立てていた。


健介けんすけは、怒った声で菜摘なつみに言うた。


「かあさん!!お人好しもいいかげんにしろよ!!」

「だからごめんなさいと言うてるでしょ!!」

「なんだそのあやまり方は!!」

「きょうは、直也なおやくんがいいことがあったから健介けんすけと一緒にごはんが食べたいと言うたのよ!!」

直也なおやは、家でごはんを作って食べるのがそんなにイヤなのか!?」

「ちがうわよ…きょうは直也なおやくんが健介けんすけと一緒にごはんを食べたいと言うたのよ…高校にいた時に一緒にお弁当を食べたことを忘れたの?」


亜弥子あやこは、健介けんすけに対してやさしい声で言うた。


健介けんすけ、急な頼みを入れてごめんね…おかーさんは悪気があって予定変更を頼んだのじゃないのよ…きょうは直也なおやくんにいいことがあったのよ…手作りハンバーグはまたあした作ったらいいわよ…今から用意してあげるからね。」


このあと、伶香れいか伶子れいこのお食い初めの準備を始めた。


亜弥子あやこは、みんなが食べるごはんとみそ汁をつぎ始めた。


亜弥子あやこは、白いごはんが盛られている信楽焼きのお茶わんを直也なおやに渡しながら言うた。


直也なおやくん…きょう、職場でいいことがあったのね。」

「あっ、はい…来月から始まる会社のプロジェクトチームのチーム長に任命されました。」

「チーム長に任命されたのね…」

「はい。」

「おめでとう。」

「ありがとうございます。」


みんなにごはんとみそ汁が渡ったあと、晩ごはんに入った。


この時、まなやがほしそうな目で健人けんとが食べているお肉の揚げ物をじっと見つめた。


それが原因で健人けんとが怒った。


まなやは『ワーン!!』と泣き出した。


まなやの泣き声を聞いた菜摘なつみは、おどろいた声で言うた。


「一体どうしたの?」


健人けんとは『まなやがほしそうな目で見ていたから怒った!!』と言うた。


それを聞いた菜摘なつみは、みんなに対して食べる手を止めてと言うた。


健介けんすけは、怒った声で言うた。


「なんで止めるのだよ!!」


菜摘なつみは、ものすごく困った声で言うた。


「ちょっと…まなやくんがなにをほしがっているのかを聞くから待って!!」


まなやの泣き声がさらにひどくなった。


「ワーンワーンワーンワーンワーンワーンワーンワーンワーンワーンワーンワーンワーンワーンワーンワーンワーンワーンワーンワーンワーンワーン!!」


健介けんすけは、怒った声で直也なおやに言うた。


直也なおや!!」

健介けんすけくん〜」

「お前、なんとも思わないのか!?」

「怒んないでよ〜」


菜摘なつみは出し忘れたものがないかどうかを確認したが、頭がサクラン状態におちいったのでおちついて物事を考えることができなくなった。


亜弥子あやこは、大パニックを起こした菜摘なつみに対して困った声で言うた。


菜摘なつみさん!!」

義母おかあさま!!」

「まなやくんの泣き声がうるさいわよ!!」

義母おかあさま!!まなやくんに出し忘れたものがないかどうかを今カクニンしています!!」

菜摘なつみさん!!」

義母おかあさまこそなによ!!」

菜摘なつみさんがイライラしていたら、まなやくんの泣き声がひどくなるわよ!!」

義母おかあさまは口出しをしないでください!!」

「冷静になってよ!!」


亜弥子あやこ菜摘なつみが怒号をあげたことが原因でまなやの泣き声がよりひどくなった。


同時に、伶子れいこがよりしれつな泣き声をあげた。


この時、伶香れいか伶子れいこ乳房むねに抱っこしたあと庭へ出た。


「ひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっく…」


まなやは、ひっくひっくと泣き続けていた。


亜弥子あやこは、ひっくひっくと泣いているまなやに対してなにが食べたいのかとたずねた。


「まなやくん…まなやくん。」

「ひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっく…」

「まなやくんは、なにが食べたいの?」

「ひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっく…」


亜弥子あやこは、おからが入っている小皿をまなやにみせた。


「おからが食べたいの?」

「ちがう…ちがう…」

「おからは身体にいいのよ~」

「おからじゃない!!」

「なにが食べたいの?」

「ひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっく…」


亜弥子あやこは、きんぴらごぼうが入っている小皿をまなやにみせた。


「それじゃあ、きんぴらごぼうかな?」

「ちがうちがう…」

「きんぴらごぼうじゃないの?」


亜弥子あやこは、マッシュポテトが盛られている皿をまなやにみせた。


「それじゃあ、マッシュポテトが食べたいの?」

「ちがうちがう…」

「まなやくんはなにがほしいの?」


まなやは、ひっくひっくと泣きながら食べたいものを言おうとした。


この時であった。


「ふざけるな!!ぶっ殺してやる!!」


(ガチャーン!!)


この時、居間に置かれていた大きな花びんが割れる音が聞こえたと同時に亜香里あかりの怒鳴り声が響いた。


亜香里あかりは、ものすごい血相で怒り狂いながら菜摘なつみを怒鳴りつけた。


「これはなんなのよ!!」

亜香里あかり!!」

「よくもアタシをないがしろにしたわね!!」

「ないがしろにしてないわよ!!」

「それじゃあなんなのよこれは!!」

「きょうは、健介けんすけおにいちゃんのお友だちのご家族が来ているのよ!!」

「ふざけるな!!」


(ガチャーン!!)


思い切りブチ切れた亜香里あかりは、近くにあったかたいものを食卓に投げつけた。


かたいものは、直也なおやの家族たちが食べる料理が入っている食器類を直撃した。


菜摘なつみは、怒った声で亜香里あかりに言うた。


亜香里あかり!!なんで健介《けんすけおにいちゃんのお友だちに暴力をふるうのよ!?」

「おかーさんはアタシよりも健介けんすけおにいちゃんのお友だちがかわいいと言うたからよ!!」

亜香里あかり!!」


この時であった。


亜香里あかりのおなかが少し大きくなっていたところを見た亜弥子あやこがおどろいた声で言うた。


亜香里あかり!!亜香里あかり!!」

「なによ!!」

亜香里あかり!!このおなかはどうしたのよ!?」

「あんたにはカンケーないわよ!!」

「おばーちゃんは、亜香里あかりが心配だから言うたのよ!!」

「カンケーないって言うてるでしょ!!」

亜香里あかり!!あんたもしかして…」


亜香里あかりは、クソナマイキな声で『ええそうよ〜』と言うたあと衝撃的な発言をした。


「アタシは、おなかが大きくなったのでコーコーをやめるわよ!!」

「おなかが大きくなったからコーコーをやめるって…亜香里あかり!!」

「アタシは、京田家このいえではいらない子だから出ていくわよ!!」

「そんなことはないわよ!!」

「やかましい!!アタシをないがしろにしたからぶっ殺してやる!!」


(ガラガラガラガラガシャーン!!)


このあと、亜香里あかりは食卓をひっくり返したあと家中を暴れまわった。


それから30分後に、亜香里あかりは家から飛び出した。


(ブーン!!ブーン!!)


それからまた40分後であった。


亜香里あかりは、家から500メートル先にいた暴走族の男が乗っているヤマハのナナハン(大型バイク)に乗ってどこかへ行った。


暴走族の男は、亜香里あかりが逆ナンで見つけたカレシだった。


この日を最後に、亜香里あかりは家に帰らなくなった。



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