第20話

時は、夜9時頃であった。


ところ変わって、悠伍ゆうごの家族たちが暮らしている家の広間にて…


広間のテーブルに悠伍ゆうご亜弥子あやこ晃代てるよの3人が座っていた。


台所で洗い物をしていた菜摘なつみがテーブルにやって来た。


あらたは、職場で残業をしていたのでまだ帰宅していなかった。


亜香里あかりもまだ帰宅していなかった。


悠伍ゆうごは、四つ折りにたたんだ神戸新聞をテーブルに置いたあと菜摘なつみに言うた。


菜摘なつみ。」

「あなた。」

「日中、健介けんすけとなおみさんと孫たちがうちに来ていたね。」

「ええ…なおみさんは、お仕事の関係でこちらに来ていました…なおみさんは、お昼をいただくためにうちに帰ってきました。」

「そうか…健介けんすけと孫たちは、昼前から夕方ぐらいまでうちにいたのだね。」

「ええ。」

「なおみさんは、今どこにいるのかな?」

「大阪市内のホテルに滞在しています。」

「うちには帰らないのか…」

「なおみさんは、イワマツグループのお仕事で海外のあちらこちらを移動なされているのよ~」


菜摘なつみが言うた言葉に対して、悠伍ゆうごが怒った声で言うた。


「そんなことはわかっている!!…それよりも問題は健介けんすけだ!!…健介けんすけはいつになったら社会復帰をするのだ!?」

健介けんすけは、なおみさんに代わって健人けんと生海いくみの育児と家庭のことをこまごまとしているのよ!!」

「そんなことはわかっている!!…だけど、そろそろ再就職を考えた方がいいのではないかと言うたのだ!!」

健介けんすけは、自分からすすんで健人けんと生海いくみの育児をしているのよ!!」

健介けんすけは心のどこかで甘えているのだよ!!」

「あなた!!」

「男は外へお勤めに行けと言うてるのだ!!」


この時、近くに座っていた晃代てるよが怒った声で言うた。


「うるさいわね悠伍ゆうご!!くだらないことをグダグダグダグダ言わないでよ!!」

「ねえさんには関係ない話だ!!」

「やかましいわねポンコツヤロー!!」

「オレのどこがポンコツだ!!」

「ポンコツをポンコツと言うたらいかんのかダメテイシュ!!」

「やかましい!!グータラ女!!」


見かねた亜弥子あやこが怒った声で言うた。


晃代てるよ!!悠伍ゆうご!!やめなさい!!」


亜弥子あやこに怒鳴られた悠伍ゆうごは、ものすごく怒った声で菜摘なつみに言うた。


「東京にいる遥輝はるきはどうしているのだ!?」

遥輝はるきがどうかしたのですか?」

「東京にいる遥輝はるきから連絡はないのか!?」


近くに座っていた晃代てるよが横から口をはさんだ。


遥輝はるきは大手総合商社に内々定をもらったと言うたわよ〜」

「ねえさんは横から口をはさむな!!」

「悪かったわねポンコツテイシュ!!」

「やかましいナマケモノ!!」

「うちのどこがナマケモノよ!!」

「ふたりともやめなさい!!」


亜弥子あやこに怒られた晃代てるよは、ひねた表情を浮かべた。


悠伍ゆうごは、怒った声で言うた。


遥輝はるきは、なにを学びたいから東京の大学へ行ったのだ!?」


晃代てるよは、クソナマイキな声で『経済学を学びたいからでしょ〜』と言うた。


悠伍ゆうごは、怒った声で言うた。


「経済学部だったら、関西ジモトの大学にもあると言うた!!しかし、遥輝あのヤローは東京の大学じゃないとイヤだと言うてわがままこねたのだ!!」

「あなた…」

「あと、亜香里あかりはこの最近ガッコーへ行ってないみたいだな!!」

亜香里あかりは苦しんでいるのよ~」

亜香里あかりを甘やかすな!!」

「甘やかしてないわよ!!」

「うるさいわねふたりとも!!」

「ねえさんは横から口をはさむな!!」

「やかましいポンコツテイシュとダメヨメ!!」

義姉おねえさまこそなによ!!」

「ふざけるな!!」


この時であった。


だらしないカッコウをしている亜香里あかりが帰宅した。


菜摘なつみは、おどろいた声で亜香里あかりに言うた。


亜香里あかり!!」

「なによ〜」

「こんな遅くまでどこでなにをしていたのよ!!」

「うるさいわね!!アタシがどこでなにをしようと関係ないわよ!!」


思い切りブチ切れた亜香里あかりは、部屋へ向かおうとした。


菜摘なつみは『待ちなさい!!』と言いながら亜香里あかりの右手をつかんだ。


「待ちなさい!!」

「離してよ!!」

亜香里あかり!!」

「離してと言うたら離してよ!!」

亜香里あかり!!きょうの夕方頃にガッコーの先生から電話が来たのよ!!」

「なんで担任センコーがうちに電話をかけてきたのよ!?」

亜香里あかりがガッコーに来ていないからなにかあったのかと心配になって電話をかけてきたのよ!!」

「アタシはあのガッコーに行きたくなかったのよ!!」

亜香里あかり!!」

「ふざけるな!!アタシは弘樹クソいとこのせいで人生がダメになったのよ!!」

度会わたらいのおばさまは、亜香里あかりがコーコーに行くことができなくなったら困ると思ってアレコレと動いてくださったのよ!!」

「ふざけるな!!」


思い切りブチ切れた亜香里あかりは、菜摘なつみをはらいのけたあとものすごく怒った声で言うた。


「アタシは、度会わたらいのババァのためにあのガッコーに通ってるのじゃないのよ!!…ババァのために行けと言うのであれば考えがあるわよ!!」


思い切りブチ切れた亜香里あかりは、ドスドスと足音を立てながら部屋に入った。


(バーン!!)


ドアがバーンと閉まる音が広間に響いた。


なによ一体もう…


晃代てるよは、いらついた表情でつぶやいた。


またところ変わって、東京のカンパチ通り沿いにあるファミレスにて…


ファミレスの店内に都内の各大学に通っている若者たちがたくさん集まっていた。


この中に悠伍菜摘夫婦ゆうごなつみの次男・遥輝はるき(23歳)がいた。


この時、都内の各大学に通っている学生たちによるゴーコンが行われていた。


遥輝はるきは、2年前に悠伍菜摘夫婦ゆうごなつみに『内々定をもらえたよ…』と電話でウソを言うたあげくに大学をキュウガクしたようだ。


その後も、悠伍菜摘夫婦ゆうごなつみからかかってきた電話に対して遥輝はるきは『インターン先の会社の人たちはやさしい人たちばかりだよ〜』などと言うてウソをつきとおした。


遥輝はるきは、今も大学3回生のままであった。


遥輝はるきは、大学を卒業するのがそんなにイヤなのか?


………………


話は戻って…


ゴーコンが盛り上がった時であった。


遥輝はるきのスマホのライン通話アプリの着信音が鳴った。


めんどくさい表情を浮かべている遥輝はるきは、スマホ丿ライン通話アプリをひらいたあと電話に出た。


電話は、菜摘なつみからであった。


「もしもしかあさん〜」


菜摘なつみは、うぐいす色のプッシュホンで電話をかけていた。


菜摘なつみは、困った声で言うた。


遥輝はるき…今どこにいるのよ…今どこにいるのと聞いているのよ!!…遥輝はるき…(大手総合商社)から内々定をもらえたのはほんとうなの!?」

「ほんとうだよ…今、カンパチ沿いのファミレスにいるのだよ…だから…新入さんたちのカンゲイ会に出席してるのだよ…信じてくれよ~」


遥輝はるきは、ものすごくいいわけがましい声で菜摘なつみに言うた。


菜摘なつみは、困った声で遥輝はるきに言うた。


「信じる信じないとは言うてないわよ…そんなことよりも遥輝はるき…一度、武庫之荘ジッカへ帰ることはできないの?」

「なんで武庫之荘ジッカに帰れと言うのだよ〜」

遥輝はるきはほんとうに(大手総合商社)から内々定をもらったの?」

「もらったよ…インターンをへて正式な採用をいただいたよ…7月に配属先が決まる予定だよ…」

「どこに配属されるのよ?」

「決まったら知らせるよ!!」


菜摘なつみは、ものすごく心配な声で言うた。


遥輝はるき。」

「なんだよ〜」

「ほんとうに遥輝はるきは(総合商社)に就職できたの?」

「ほんとうだよ〜」

「もし、働くあてがないのであったら、川西の伯父オジさまにお世話を頼むこともできるのよ。」

「なんで伯父オジキを出すのだよ?」

伯父オジさまは、遥輝はるきを助けたいと言うてるのよ~」

「断るよ…どーせ市役所か農協しかないのだろ〜」

「市役所と農協に伯父オジさまの知り合いの人がいるのよ~」

「オレは、ひとのコネを使って就職するのがイヤなのだよ!!」

遥輝はるき!!」


(ガチャーン!!ツーツーツーツーツーツーツーツーツーツーツーツーツーツーツーツーツーツー…)


思い切りブチ切れた遥輝はるきは、ガチャーンと電話を切った。


困ったわね…


遥輝はるきにガチャーンと電話を切られた菜摘なつみは、両手で髪の毛をグシャグシャにかきむしりながら怒りまくった。


時は流れて…


6月20日の正午過ぎであった。


またところ変わって、あらたが勤務しているオフィスにて…


(キンコンカン〜)


正午ひるやすみを知らせるチャイムがオフィスに鳴り響いた。


あらたがランチを摂りに外へ出ようとした時であった。


上司の男性が外へ出ようとしたあらたを止めた。


「京田くん。」

「課長。」

「これからどこへ行くのだ?」

「ランチを摂りに行くのですよ。」

「ちょうどよかった…これからわしと一緒にごはんを食べに行くのだよ。」

「えっ?」

「『えっ?』じゃあらへんねん…きょうは京田くんにわしの大事な人を紹介すると言うたのだぞ!!…聞いてないのか!?」

「課長の大事な人って?」

「はよ行くぞ!!」


新は、上司の男性に右手をひっぱられながら外へ出た。


またところ変わって、キタのお初天神通り(アーケード街)沿いにある高級割烹料亭リョウテイにて…


リョウテイの奥座敷の部屋にあらたと上司の男性となおみの3人がいた。


テーブルの上には、割ぽう重の特上セットが並んでいた。


上司の男性は、困った表情であらたに言うた。


「京田くん、紹介するよ…えーと…イワマツグループのリースバック会社の代表を務めている…京田なおみさんだよ~…京田くん…きちんとあいさつしなさい!!」


黒のレディーススーツ姿のなおみは、おだやかな表情で言うた。


「あら、あなたは…あらたさんね。」

「えっ?…京田さんは…京田くんの…」

「義父のきょうだいです。」

「ああ、せやったのだ…知らんかった。」


あらたは、コンワクした表情でなおみに言うた。


「あの…きょうは…どのようなお話が…ございますか?」


なおみは、やさしい声であらたに言うた。


「アタシは…あらたさんに…しあわせになってもいいよとお伝えするためにここに来ました。」

「しかし…私は…2年前に三重子まえのつまとリコンしているのですよ…」

あらたさんがリコンした話は知ってますよ。」

「だから…しあわせになってもいいと言うのは…」

「京田くん!!…すんません…すんません…」

「いいのですよ…」

「あの…私は…しあわせになる資格は…ないのですよ。」

「あらどうして?」

「どうしてと聞かれても…分かりません。」


なおみは、おだやかな表情であらたに言うた。


あらたさん。」

「はい。」

あらたさん自身は、どう考えているかな?」

「どう考えているって?」

あらたさんは、どんな形で結婚相手おあいてと出会いたかったの?」

「どんな形って?」

「たとえばそうね…ぐうぜんの出会いとか…小さい時からの幼なじみの間で『大きくなったら結婚しようね…』と言うて指切りげんまんのヤクソクをかわした…とか…」

「そんな出会い方は…ありませんでした。」

「なかったのね。」

「だから結婚できなかったのです!!」

「そんなことはないわよ…なにも小さい時からの幼なじみだけが結婚相手おあいてじゃないわよ~」

「あの…結婚って、相手おあいてがいなきゃ意味がないことぐらい分かってますよ…相手おあいてがいないのに、どうやって結婚するのですか?」

「できるわよ…これから相手おあいてを紹介するのよ。」


なおみは、黒の手提げカバンの中に入っていた大きめのふうとうを出したあとふうとうの中から寿の字が書かれている写真おしゃしんを出した。


しかし、あらたはつらそうな表情で言うた。


「すみませんけど…」

「あら、どうしたの?」

「やっぱり…考え直します。」

「どうして考え直すの?」

「自分ひとりの力だけで相手おあいてを見つけないといかんと感じたからです。」

「それは考えすぎよ…」

「それと、住むところがないのですよ…結婚生活を始めるための費用もないのですよ…」

「それだったら、ちょうどいい相手おあいてさんがいるから紹介するのよ…写真おしゃしんを見るだけでもいいから見てね。」


なおみは、寿入りの写真おしゃしんあらたに手渡した。


めんどくさいくさい表情を浮かべているあらたは、写真おしゃしんをひらいた。


なおみは、おだやかな表情であらた相手おあいてを紹介した。


「片岡ことはさん…38歳…まだ独身よ…イワマツグループのA班のメンバーで…保有している資格は、秘書検定一級・ワード・エクセル一級…あわせて30種類よ。」


あらたは、つかれた表情でなおみに言うた。


相手おあいてのことはよく分かりました…しかし、結婚したあと…」

「住まいのことは、心配しなくてもいいのよ。」

「ですが…」

「イワマツグループのメンバーたちは、1年のうち360日前後は海外のあちらこちらを動いているので…うちに帰宅する日は年に1〜2日くらいです…1年じゅう帰れない時もあります…」

「その間、どこで寝泊まりするのですか?」

「それは、世界各都市のホテルよ。」

「そうですか…」

「お見合いの日取りは、改めて調整するから…あらたさんは、なんの心配もしなくてもいいのよ。」


あらたは『お言葉を返す…』と言うたが、上司の男性がオタついた表情であらたの頭を両手でつかみながら怒った。


「京田くん!!」


上司の男性は、あらたの頭を無理やり下げさせながら『お願いします!!』と言うた。


なおみは、にこやかな表情で言うた。


「それでは、お日取りが決まりましたらお電話をかけますね。」


このあと、3人は割ぽう重のセットでランチを摂った。


めんどくさい表情を浮かべているあらたは、ランチを摂り始めた。


なおみは、上司の男性と楽しくお話をしていた。


(キュイーン!!)


さて、その頃であった。


またところ変わって、JR尼崎駅のすぐ近くにある阪神デパートの中にあるゲーセンのコーナーにて…


亜香里あかりは、この日もガッコーに行かずにアーケードゲームにボットウしていた。


今の亜香里あかりの気持ちは、ガッコーヘ行きたくないと言う方が強かった。


こんな気持ちで…


ガッコーに行くなんて無理よ…


度会わたらいのババァのためにガッコーに行けなんて…


ムジュンしてるわよ…



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