第17話

時は、夜8時55分頃であった。


ところ変わって、男性従業員さんの家にて…


この日も、弘樹ひろきは男性従業員さんの家に遊びに行った。


弘樹ひろきは、子どもさんが使っているプレステの格闘ゲームに夢中になっていた。


ご家族のみなさまは、ものすごくうんざりとした表情を浮かべながらつぶやいた。


度会わたらいの奥さまは、なにを考えているのか?


奥さまは、ダンナに暴力をふるっているのではないか…


またところ変わって、弘樹ひろきの家族たちが暮らしている県営住宅だんちの部屋にて…


(フギャーフギャーフギャーフギャーフギャーフギャーフギャーフギャー…)


部屋の中で赤ちゃんが泣き叫ぶ声が聞こえた。


この時、里英りえ弘樹ひろきが遊びに行った従業員さんの家に電話をかけていたが間違い電話ばかりがつづいた。


間違い電話をやらかした里英りえは、大パニックを起こした。


どうしよう…


電話がつながらない…


ダンナはどこへ行ったのよ…


菜水なみの泣き声がひどくなった…


どうしたらいいのよ…


さて、その頃であった。


またところ変わって、悠伍ゆうごの家族たちが暮らしている家にて…


菜摘なつみは、キッチンで洗い物を終えたあとダイニングテーブルに向かった。


ダイニングテーブルには、悠伍ゆうご亜弥子あやこ晃代てるよが座っていた。


テレビの画面にNHK総合テレビの夜8時45分の近畿地方のニュースが映っていた。


悠伍ゆうごは、読みかけの神戸新聞を四つ折りにたたんでテーブルに置いたあと怒った声で言うた。


亜香里あかりはこんな時間までどこヘ行ったのだ!?…コーコーセーのくせにヨアソビなんてけしからん!!」

「あなた落ちついてよ〜」

菜摘なつみ!!」

「あなた〜」

菜摘なつみ弘樹ひろきを甘やかすな!!」

「分かってるわよ!!」

「分かっているのだったら、弘樹ひろきに対してあしたここへ来るようにと言うておけ!!…『いそがしいいそがしいいそがしいいそがしいいそがしいいそがしいいそがしいいそがしい…時間が取れない時間が取れない時間が取れない時間が取れない…』…弘樹あのクソガキはどこのどこまで甘えているのか!?」

「あなた!!」

「なんや!!文句あるのか!?」


たまりかねた亜弥子あやこが困った声『ふたりともやめなさい!!』と言うた。


この時、時計のはりが夜8時59分になった。


晃代てるよがリモコンを使ってチャンネルを替えようとした。


悠伍ゆうごは、怒った声で晃代てるよに言うた。


「姉さん!!」

「なによぉ〜」

「チャンネル替えるな!!」

「姉さんは、(リモコン番号)10で放送されるシンデレラストーリーの映画を見るのよ〜」

「シンデレラストーリーなんかくだらん!!」

「なによケチ!!」


そこへ、スーツ姿で黒の手提げカバンを持っているあらたがつかれた表情で帰宅した。


晃代てるよは、のんきな声であらたに言うた。


「あら、今帰ったの?」

「今、残業を終えて帰ったところだよ!!」

「そんなに怒らんでもええやん~」

「起こりたくもなるよ!!…なにがシンデレラストーリーだ…シンデレラストーリーみたいな恋愛がそんなにいいのかよ!!」


あらたは、ブツブツと言いながら空いている席に座った。


この時、テレビの画面は『NHKニュースウォッチ9』に替わったばかりであった。


晃代てるよは、テレビのチャンネルを10に替えた。


この時、あらたが怒った声で晃代てるよに言うた。


「アネキ!!替えるな!!」

「なによ!!」

「シンデレラストーリーみたいなコイバナはいらつくのだよ!!」

「アタシが楽しみにしていた番組にケチをつけないでよ!!」

「やかましい!!」


(ブチッ!!)


たまりかねた亜弥子あやこは、テレビの電源を切ったあと怒った声で言うた。


「ふたりともやめなさい!!ケンカするのだったらテレビを見ないで!!」

「なんやねんもう!!」

「ふざけるな!!」


亜弥子あやこに怒鳴られた晃代てるよあらたは、ふてくされた表情で席を立ったあと自分の部屋に入った。


なさけないわね…


亜弥子あやこは、困った表情でつぶやいた。


さて、その頃であった。


またところ変わって、県営住宅だんちの一室にて…


里英りえは、弘樹ひろきが遊びに行った男性従業員さん方の家に電話をかけていた。


しかし、間違い電話ばかりがつづいたのでひどく困っていた。


(フギャーフギャーフギャーフギャーフギャーフギャーフギャーフギャーフギャーフギャーフギャーフギャーフギャーフギャーフギャー…)


この時、菜水なみの泣き声がいっそうひどくなった。


どうしよう…


どうしたらいいのよ…


この時であった。


スマホのライン通話アプリの着信音が鳴った。


着信音は、りりあの歌で『貴方の側に』に設定されていた。


電話は、菜摘なつみからであった。


里英りえは、大急ぎで電話に出た。


「もしもし、里英りえです…」


悠伍ゆうごの家族たちが暮らしている家にて…


うぐいす色のプッシュホンで電話をかけている菜摘なつみは、困った声で言うた。


里英りえさん…武庫之荘むこのそうの京田でございます…弘樹ひろきはまだ帰ってないの?…またよその家に遊びに行ったのね!!…困ったわね…赤ちゃんがギャーギャー泣いているわよ…一体なにがあったのよ…あしたはなんの日かわかっているの!?…あしたは、弘樹ひろき里英りえさんと赤ちゃんと一緒にお礼を伝えに行く日よ!!…『時間が取れない時間が取れない時間が取れない時間が取れない時間が取れない…』…と弘樹ひろきが言うたので、うちは『時間が取れたらいつでも来てね…』と言うたのよ!!…それなのに、一度もうちに来ていないとはどう言うことよ!?…里英りえさん!!パニック起こしている場合じゃないのよ!!…もしもし…間違い電話をやらかした…なんで間違いをやらかしたのよ…弘樹ひろきが遊びに行った従業員さんの家に電話したのに、なんで違う家につながったのよ!?…もうダメね…この際だから言うけど、弘樹ひろきとリコンすることを考えた方がいいわよ…あなた自身も、気持ちがたるんでいることに気がつきなさい!!…もしもし里英りえさん!!メソメソと泣いている場合じゃないわよ!!…えっ?…もとのドウセイ相手からフクエンをせまられた…里英りえさん…あなたはたしか、名古屋のデリヘル店で働いていたね…その時に知り合った客の男となんでドウセイしていたのよ…単にさびしかったから男とドウセイしていたと言わないでよ!!…あなたは、はじめから家庭を持つ資格はなかったのよ…あなたその前に、ちがう家のシソクと結婚していたわね!!答えなさい!!…あなたはなんで最初のダンナと結婚したのよ!?」


この時、受話器ごしから里英りえがぐすんぐすんと泣いている声が聞こえた。


菜摘なつみは、なおも怒った声で言うた。


「もしもし!!ぐすんぐすんと泣いている場合じゃないのよ!!里英りえさんは、ほんとうはだれが好きだったの!?…ほんとうはだれと結婚したかったの!?…好きな人と結婚できなかったから、代わりを求める形で弘樹ひろきと結婚したと言いたいの!?」


受話器ごしから『ごめんなさい…ごめんなさい…』と言う泣き声が聞こえた。


菜摘なつみは、ものすごくあきれた声で里英りえに言うた。


「やっぱりそうだったのね…もうあきれたわよ…あなたは、大好きだった人の代わりを弘樹ひろきや最初のダンナに求めたのね…」


受話器ごしにいる里英りえは、ぐすんぐすんと泣きながら『ごめんなさい…』と繰り返して言うた。


菜摘なつみは、あきれた声で里英りえに言うた。


「それじゃあ、あしたはうちに行くことができないのね…弘樹ひろきは、うちら家族にお礼を言うことができないのね…それじゃあ、亜香里あかり学資保険ほけんを台無しにしたことをわびないのね…よく分かったわよ!!…それじゃあもうひとつ言わせてもらうけど…きょう…亜香里あかりが通っていたコーコーから電話があったわよ…あすの午後にコーコーに来てくださいと言われたのよ!!…弘樹ひろきひとりのせいで、亜香里あかりがタイガクの危機にひんしたのよ!!…弘樹ひろきがわがままをこねたせいで…亜香里あかりが行くところをなくしたのよ!!…あなたのテイシュが犯したあやまちは…女房であるあなたが全部つぐなうのよ!!…もしもし聞いてるの!?」


この時であった。


受話器ごしから里英りえの強烈な叫び声と赤ちゃんの焼け付くような泣き声と布がはげしく破れる音が響いた。


「イヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!あなた助けて!!」

「フギャーーーーーーーーーー!!フギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」


(ビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリ!!)


(ガチャーン!!)


思い切りブチ切れた菜摘なつみは、電話をガチャーンと切ったあと両手で髪の毛をグシャグシャにかきむしった。


日付が変わって、6月14日の深夜2時半頃であった。


ところ変わって、県営住宅だんちの部屋の玄関前にて…


弘樹ひろきは、男性従業員さんのご両親とお兄さまと一緒に帰宅した。


男性従業員さんのお母さまは、困った声で弘樹ひろきに言うた。


弘樹ひろきさん!!弘樹ひろきさん!!」

「なんだよ~」

「おうちに着いたわよ!!」

「おうちなんかイヤだ〜」

「きみのおうちはここじゃないか〜」

「ぼくのうちじゃないのだよ〜」


そこへ、近所の住人の女性がやって来た。


住人の女性は、ものすごく困った声で言うた。


「もしもし。」

「はい?」

度会わたらいのご主人と話がしたいのですけど…」

「こちらですけど…」


奥さまは、弘樹ひろきに対して怒った声で言うた。


「ちょっとご主人!!」

「はい?」

「こんな時間までどこに行ってたのよ!?」

「(従業員)んちでプレステしていた…」

「ご主人!!」

「はい?」

「この最近、お宅の娘さんの泣き声がひどいわよ!!」

「えっ?」

「あなたはなんで結婚して家庭を持ったのよ!?」

「自立したいから…」


奥さまに怒鳴られていた弘樹ひろきは、なおもいいわけがましい声で言うた。


この時であった。


従業員さんのお兄さまが『ドアのカギが空いてる…』と言うた。


このあと、奥さまが部屋に入った。


部屋の中にて…


部屋の中で里英りえ全裸はだかの状態で横たわっていた。


その後、奥さまが浴室に入った。


浴室の床などがべちょべちょに濡れていたのを見た奥さまは、よりしれつな恐怖を感じた。


この時であった。


部屋の中から奥さまの叫び声が聞こえた。


「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!たいへん!!」

「どうしたのだ!?」

「赤ちゃんが浴槽に沈んでいたわよ!!」


弘樹ひろきはこの時、里英りえ菜水なみが殺されたことを聞いた。


「ワーッ!!」


頭がサクラン状態におちいった弘樹ひろきは、高いところから飛び降りた。


弘樹ひろきは、妻子を殺されたことなどを苦に命を絶った。


それから3時間後に里英りえ菜水なみを殺した男がケーサツに逮捕された。


容疑者の男は、里英りえとドウセイしていた例の男だった。


容疑者の男は、ケーサツの取り調べに対して完全にモクヒした。


里英りえの実家は、里英りえをカンドーしていたので事件で亡くなったことを聞いても『知りません…』と言うて拒否した。


弘樹ひろきも、親類たちに見離されたので命を絶った知らせは届かなかった。


悲しい…


すごく悲しい…




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