第16話

(キンコンカン…)


時は、6月13日の正午であった。


またところ変わって、あらたが勤務している生保会社のオフィスにて…


正午ひるやすみを知らせるチャイムがオフィスに鳴り響いた。


この時、あらたがいるデスクからふたつ先のデスクにいる30代の男性従業員さんがかわいいもようのお包にくるまれている弁当箱をデスクの上に置いた。


男性従業員さんは、かわいいもようのお包をといたあとお弁当箱のふたをあけた。


お弁当箱の中には、新妻おくさまのお手製のおかずがたくさんならんでいた。


となりに座っていた男性従業員さんは、うらやましい表情で言うた。


「近本さん。」

「なんや?」

「奥さまのお手製のお弁当ですか?」

「そうだよ。」

「いいなぁ〜」

「なんだよ急に!!」

「おれもお弁当を作ってくださる花嫁さんがほしいよ〜」

「花嫁さんがほしいのであれば動けよ!!」

「動けよって…」

「うらやましいうらやましい…と言うて悩んでばかりいるから花嫁さんが見つからないのだよ!!」

「じゃあどうしたらいいのだよ〜」

「ゼニためろよ!!」

「ゼニためろよって?」

「毎月、少しずつ貯めろと言うてるだろ…毎月1万円と決めて貯金せえと言うのがわからないのか!?」

「だけど…」

「弁当弁当と言うのだったら給与引きで注文して頼めよ!!」


あらたは、冷めた目つきで従業員さんふたりをにらみつけたあとオフィスから出た。


またところ変わって、扇町通りにあるすき家にて…


この日もあらたは牛丼の(みそ汁と冷ややっこの)健康セットでランチを摂っていた。


この日も、店内のスピーカーから聞こえてくるすき家レイディオはマンスリーテーマの結婚に関する話題が放送された。


そしてまた、リクエスト曲・りりあの歌で『貴方の側に』がかかった。


ランチを摂っているあらたは、うんざりした表情でつぶやいた。


うんざりだ…


『結婚』と漢字二文字を見るだけでもうんざりだ…


『シンデレラストーリー』みたいなコイバナは…


聞くだけでもヘドが出る…


恋愛はなんか漢字もうんざりだ…


この国は…


どこのどこまでふざけているのだ…


あらたは、食べかけの牛丼をガツガツ食べながら怒り狂った。


(ゴーッ…)


時は、午後2時過ぎであった。


またところ変わって、西宮市東浜町にある鋼板工場にて…


弘樹ひろきは、いつも通りに工場の生産ラインでお仕事をしていた。


この時であった。


現場の人が弘樹ひろきに声をかけた。


度会わたらいくん、主任が呼んでるよ。」

「えっ?」

「主任が呼んでいるから休憩室に行けといよんのが聞こえないのか!?」


そんなに怒鳴らなくてもいいじゃないかよ…


弘樹ひろきは、ブツブツと言いながら休憩室へ向かった。


またところ変わって、休憩室にて…


休憩室に弘樹ひろきと現場主任の男性がいた。


現場主任の男性は、にこやかな表情で弘樹ひろきに言うた。


度会わたらいくん。」

「はい。」

「奥さまと仲よくできているかな?」

「はい。」

「奥さまが作ってくださったごはんをきちんと食べているかな?」

「ええ。」

「奥さまが困っている時は、きちんと助けているかな?」

「はい。」

「ほんとうにできているかな?」

「主任…」

「どうしたのだ?うまくいってないのか?」

「うまくいってますよ〜」

「そんなにつらそうな声で言わなくてもいいじゃないか…わしは、度会わたらいくんが心配になったからたずねただけじゃ!!」


そんなに怒りをこめて言わなくてもいいじゃないかよ…


弘樹ひろきは、インケンな表情でつぶやいた。


現場主任の男性は、弘樹ひろきにこう言うた。


「あと、お仕事が終わったあとはよりみちをせずにまっすぐに家に帰っているかな?」


弘樹ひろきは、ひねた声で言うた。


「主任。」

「なんだ!?」

「よりみちをせずにまっすぐに家に帰れと言うのは…どう言うことでしょうか?」


主任の男性は、あきれた声で言うた。


「君の帰りを待っている大事な家族のためにまっすぐ家に帰るのだよ…」

「家族のためですか?」

「他になにがあると言うのだ!?」

「そんなににくにくしく言わなくてもいいじゃないですか!?」

「なんやオドレ!!口をつつしみたまえ!!ここは職場だ!!」

「主任!!」

「なんだ度会アホンダラ!!」

「結婚って、なんのためにするのでしょうか?」

「君がしあわせになるための結婚じゃないか!!…それじゃあ聞くけど、君はなんで奥さまと結婚したのだ!?」


なんで里英りえと結婚したって?


現場主任の男性から聞かれた弘樹ひろきは、大パニックを起こした。


現場主任の男性は、怒った声で弘樹ひろきに言うた。


「答えが出ないのか!?」

「すぐに答えを出せと言われても無理です…」


現場主任の男性は、ものすごく怒った声で弘樹ひろきに言うた。


「君はもしかして、奥さまが困っていたからなんとかするために結婚したのじゃないだろうな!!」

「ちがいますよ〜」

「違わない!!」

「ちがいますよ!!」

「なにがどう違うのか説明しろ!!」


現場主任の男性に怒鳴られた弘樹ひろきは、さらに大パニックを起こした。


現場主任の男性は、怒った声で弘樹ひろきに言うた。


「きみは、大学を卒業したあとすぐに工場ここに就職したのだな!!」

「はい。」

「なんで工場ここを選んだ!?」

「なんでって?」

「きさまはこどもの時になりたかった職種はなんだ!?」

「そんなものはありませんでした!!」

「なかっただと!?」

「こどもの時、十分なゆとりがなかったのです!!」

「そうか…分かった…話を変えるけど…いつになったら京田のおばさまの家に行くのだ!?」

「えっ?」

「京田のおばさまの家にいつになったら行くのだと聞いているのだ!!」

「行きますよ…だけど、時間が取れないので…」

「いいわけばかりを言うな!!キサマひとりのせいで、京田のおばさまの娘さんがギセイになったと言うのが分からないのか!?」

「分かってますよ!!」

「キサマ!!」

「なんだよこのやろう!!」

「キサマはいつから態度が悪くなったのだ!?上司めうえにたてつく!!言葉づかいが悪い!!タメ口が多い!!ケンキョな気持ちがない!!…キサマがいた大学の教授センコーも頭がいかれている…だからキサマはダメになったのだ!!違うか!?」


現場主任の男性からボロクソに言われた弘樹ひろきは、するどい目つきで現場主任の男性をにらみつけた。


現場主任の男性は、ものすごく怒った声で弘樹ひろきに言うた。


「おいキサマ!!キサマは毎晩(男性従業員)さんかたの家に遊びに行ってるみたいだな!!おいコラ!!答えろ!!」


(カーン!!)


思い切りブチ切れた現場主任の男性は、テーブルの上に置かれていたアルミの灰皿を弘樹ひろきに投げつけた。


現場主任の男性は、怒った声で弘樹ひろきに言うた。


「キサマのわがままのせいで(男性従業員)さんのご家族の方がメーワクしているのだぞ!!…子どもさんが使っているプレステに夢中になっていることが原因で、家族たちが毎晩楽しみにしているテレビを見ることができない…クレームが来たのだぞ!!」

「ぼくは…プレステ遊びがしたかっただけですよ…」

「ふざけるな!!」


(ガツーン!!ガツーン!!ガツーン!!)


思い切りブチ切れた現場主任の男性は、弘樹ひろきのこめかみをグーで激しく殴りつけた。


現場主任の男性は、床に倒れた弘樹ひろきの頭を右手でつかみながら『立て!!』と言うて立たしたあとものすごく怒った声で言うた。


「それじゃあ!!家でキサマの帰りを待っている奥さまと子どもさんはどうするのだ!?」

里英りえと子どもも大事ですよ〜」

「奥さまと子どももとはどう言うことだ!?」


思い切りブチ切れた現場主任の男性は、弘樹ひろきの耳もとで怒鳴り声をあげた。


現場主任の男性は、怒った声で弘樹ひろきに言うた。


「それじゃあ、お前の気持ちは奥さまと子どもさんから離れたと言うことだな!!キサマはどこのどこまでふざけているのだ!?」


現場主任の男性に怒鳴られた弘樹ひろきは、その場に座り込んでおびえまくった。


現場主任の男性は、弘樹ひろきに対して1枚のショメンを突きつけたあとこう言うた。


度会わたらい…警告書だ!!…キサマは会社のホーシンにテイコウしているのでサイゴツウチョウを入れておく…サイゴツウチョウを守らないのであれば、今月いっぱいを持って契約破棄だ…それがイヤなら…わが社のホーシンにしたがえ!!」


現場主任の男性は、弘樹ひろきに怒った声で言うたあと休憩室から出ようとした。


この時、弘樹ひろきがワーッと叫びながら現場主任の男性に殴りかかった。


弘樹ひろきは、現場主任の男性をボコボコに殴りつけた。


現場主任の男性は、反撃することなく弘樹ひろきにボコボコに殴られた。

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