10話・魔法戦

 魔眼は便利そうですね、視界の全てに効果を及ぼすことは不便ですが、それを抜けば非常に使い勝手がいい……、それにしても新しい本が読みたいです。


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「さあ、始めようかのぅ」


「そうですね」


 いつもの闘技場の観客席には、クラスメイト達や都月を含めたボディーガード達、そしてジムラドやマッドと一緒に絢達を鍛えている魔術師や騎士たちが、ジムラドと絢の二人が今から起こす出来事を安全に見るために集まっていた、3日目だったが今日は絢以外は訓練は休みであり二人の決闘のようなことをすることにより見稽古をすることを目的としていた。


(さて、どうしてこんなことをしているんでしたか……)


 それはその日の朝の話である。


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 食堂にて、昨日や一昨日と同じように入ってきたジムラドは、昨日とは異なり絢だけを指名して訓練場に連れて行った……その光景を見た半分以上は休憩があることに喜んでいたが、その後の「今日は見て訓練だぞ」と言うマッドの一言によってその喜びの表情は書き消えてしまった。

 あと半数は、連れていかれた絢の事を心配していたが、結局のところ「大丈夫か」と言う結論に行きついてしまった……。


 そして、いつものようにマッドによって連れていかれた彼らは、いつもとは違う道を通り観客席の方へと上る、闘技場もいつもと違い、はっきりと見える薄い膜が張られていた。


 それを見た絢は「脆そうですね」と言いかけたのだが、結局それを口にすることはなかった。


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(あの子達、私なら何があっても大丈夫だと思ってないでしょうか……まあ、確かに大丈夫ですけど)


「今日は結界で覆っておるのでの、多少本気を出しても大丈夫じゃぞい」


「そうですか……一応訓練ですし開始の合図いりますか?」


 それを聞いたジムラドは、二ィっと口角を上げて一言「いるか?」と言うと、4つの魔方陣を空中に描く。


「私はこれで十分です」


 そういって絢が作り出したのは比較的銃身の長い半透明のマスケット銃、それを一丁右手に持ち、ジムラドに向けて構える。


 「一つでいいのか」と言うジムラドの短い問いに、絢は「はい」と短く答える、そしてジムラドは絢の準備を待っていたかのようにジムラド側の魔方陣が輝かしく発光する、そこから現れたのは炎の柱に水の槍、巨大な投石に風の刃、それらが絢に牙を剝き迫る中、絢は冷静に右手の銃の引き金を引く。


「ほう……」


 ジムラドがそう感嘆の声を出すのも当たり前の事であった、ジムラドに向かって構えられたその銃口から発された弾丸は、ジムラドに向かうことはなく、周囲の4つの魔方陣から放たれた魔法をかき消し、その奥の魔方陣すら破壊した。


「銃口が一つ、引いた引き金も一つ、だからと言って弾が一つだなんて誰が言いました?

 次はこっちの番ですね」


 そういった直後、絢が再び引き金を引くと銃口からは水が溢れ出す、その水量は次第に満タンまで貯めたダムを崩壊させたような水量になり闘技場を満たしていく……


「クッッ」


 ジムラドは即座に自身の周囲に障壁を張り、飛翔の魔法で水上に逃れるも水中からは高圧の水鉄砲が放たれる……、その水鉄砲は障壁を貫通することこそなかったものの障壁全体に罅が入る。


「最初からとばして、長時間持つのかのぅ」


 ジムラドは、水中で障壁も張らずに、何も起きていないかのように立っている絢に向けて複数の熱線を射出し、自信の周囲に新たに3枚障壁を展開する。

 熱線は絢が闘技場中に満たした水を蒸発させながら進むが、絢の周囲で不自然に屈折する。


「さて、少し派手にしすぎましたし、お片づけをしましょう……」


 そういった絢は水を消失させ次の魔法の準備をする。


(魔力切れ……、ではないじゃろうの)

「盾を消していいのかのぅ」


「……別に盾でもなんでもないですよ?」


 ジムラドが何を言ってるのか分からないと言った風の絢は、そのまま次の魔法を発動させる、その魔力はジムラドの動体視力では捉えられない速度で展開され、ジムラドを前身の骨を折る勢いで全身に叩きつける、叩きつけられたジムラドは障壁の重ね着と咄嗟の身体強化によって衝撃を緩和した物の、絢の魔法により永続的に加えられる重圧は止まることが無い。


「重力魔法か……いつこんなもの使えるようになったんじゃ?」


 負けているにもかかわらず、ジムラドは未だに楽しそうだ……それとも何か奥の手でも隠しているのだろうか……。


「耐えてくださいね」


 そう言って絢が放った攻撃は斬撃、それは風の魔法やマスケット銃を振ったことにより発生した物ではなくその引き金を引いたことによって発生した物だった。

 斬撃はジムラドの障壁を2枚切り裂き、3枚目に深い傷跡を付けた。


「これ、引き金を引くたびにランダム変化して毎回発動される魔法が違うんですよ、次はどんなのが出ると思います?」


 自分が使う武器の説明をしながら再び引き金に指をかける目の前の悪魔のような少女を前にして、ジムラドはこれからどうするべきか思案する。


(毎回発動される魔法が変わるというのは厄介じゃのう、意思が介入しない魔法は識別が難しい、その上引き金を一度引いてから次にもう一度引くまでの余裕は1秒もないじゃろう)


「……そろそろこの戦闘も老骨にしみてきてのぅ、一つ提案を受けてくれんか」


「面白そうだったらいいですよ」


 そう言われたジムラドはかなりの自信があるのか再度そのかをに笑みを浮かべ空を指さす。


「あれをどうにかされれば儂の負けじゃわい」


 その視線の先にはいつの間にか直径1000キロはありそうな巨大な岩石が発生していた。


「防いでみよ」


 その言葉と同時に上空の岩石が落下を始める、絢はついぞ冷静に岩石に銃口を向け引き金を引く、銃口から出たのは黒い球体、球体は射出後徐々に加速していき、着弾と共に岩石を飲み込むほど巨大化する。

 数秒すると岩石を飲み込んだ球体が消失すると、そこに先ほどまであった岩石も消失していた。


「私の勝ちですね」


「その様じゃのぅ」


 二人は清々しいほどあっさりとしていたが、観客席でその先頭を見ていた、騎士たちや魔術師たちはその結果を受け入れられないといったようにざわめいていた。


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終わらない、終わらない……どうしたら早く書き終わりますか?

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