9話・魔眼

 魔法って結構簡単に使えますね、それにしても唯が進めてくる小説や漫画も魔法関係が多かったですし、こういうのが好きなんでしょうか……


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 訓練の後、絢は昨日と同じようなことをした後、部屋で他の人にも囲まれている中で誰にも気づかれずに図書室に赴き、わざと魔力の痕跡を残した後で、先日ジムラドが使っていた使い魔の魔法を使いこの国を始めた周囲の観察を始める。


(情報は何よりも強い武器ですからね、取り敢えず今回作ったのは鷹と猫を10匹ずつ、タイムリミットまでどこまで集められるでしょうか……)


 そんなことを考えながら使い魔が集めた地形情報を脳内手地図として構築しながら無音で部屋へと戻った絢は、寝相が悪く布団から落ちかけている唯や壁にもたれかかるように寝ている人たちを避け、寝るときに毎日のように抱き着いてきた翔奈絵と先生の間に戻り朝を待つ、二人が布団を着ていなかったのでそのまま寝たが直ぐに都月が起きて絢達に毛布を掛ける。


(気付かれていないと思っていたのですが……、私もまだまだですね)


 その3時間は後、夜が明ける少し前に都月が部屋から出ていき、部屋の中は少女たちの寝息と静寂に包まれる。

 さらに30分程すると再びいつもいつも通りからかけ離れた通りの日常が始まる。


 食堂での朝食の後、昨日と全く同じようにジムラドとマッドが食堂に突入し、昨日と同じ闘技場へ絢達と連れて行く。


「昨日で一通り魔力の扱いは覚えたじゃろう、今日は身体強化を覚えてもらおうかの」


(身体強化……そういえば昨日マッドさんが言っていましたね)


「昨日と同じ講師の所に行くと良い、儂らは教えるのはそれほど上手では無いんでの」


 ジムラドは他の人間の場所に行きやすいようにそういったようだが、ジムラドの想像以上にその中を埋めていた彼らはジムラドがそれを言い終わる前に自らの講師の所へ行っていた。


「ふむ、まあ良い、さて、実際にやってみると言っても、まずは座学からじゃ……」


 そんなことを言ったジムラドは、何か思うところでもあるのかぐちぐちと端から端までを説明していき、マッドにも復習と言わんばかりに無理やり座らせ、ぐちぐちと喋り続けた……

 10分ほどしゃべり続けると、どこか気が済んだかのような表情をしてマッドを解放した。


「さて、まあ理論はわかったじゃろ、やってみると良い」


(たった一つの説明にかなり時間がかかりましたが全て理解しました、要するに何かを耐えたかったらとにかく身体強化を、身体能力の向上にはとにかく対象を分割したほうが効果があるということです、よくこれを10分もの長尺に引き延ばせましたね……)


 ジムラドの開始の言葉を合図に絢達6人がジムラドの説明通りに魔法を発動させる。

 先生と学級委員長、翔奈絵の3人は全身を、都月さんは筋肉や骨一つ一つを、唯と絢は骨の一本ずつに加え筋繊維一本ずつを対象にして発動した。

 身体強化は強化したい部位に魔力を纏わせ、自信のイメージにより好きな効果を付与していくものである、ジムラドは自身の予想以上の魔力操作を披露する目の前の存在に大きく驚いく。


「唯、貴女どの個所も全て強化率同じにしてるでしょう、先端の方は中心よりもかかる負荷が大きいんですから気を付けないと怪我をしますよ……」


 唯はその忠告に「本当だ!!」と言った表情をして自身の身体強化を見直していく……、ただ、そんなことを気にしないといけない程強化する者はその場には居なかったのも確かである。


「ほう、身体強化を極めるとそのようなこともあるんじゃのぉ」


 魔力量こそ多い物の力を上昇させる身体強化をあまり使わないジムラドは新たな発見を喜び、そこまで魔力の多くないマッドは苦笑いの表情に固定されてしまった。


「それにしてもあんまりパッとしませんね、使ってるのが分かりにくいというか……」


 唯が周囲を見てそんなことを言う、彼女は周囲を見回して直ぐにそんなことを言い出し、その様子は明らかに落胆していた。


「フム……少し早いが、魔眼を教えてやろう」


「魔眼……ですか?」


 その言葉は落ち込んでこそいた物の、先ほどはその目から失われていたハイライトが元に戻り……、元よりも輝いていた。


「やり方としては、魔法と身体強化の組み合わせじゃ」


「魔法と身体強化の組み合わせ?」


「昨日魔法を教えた時、体の中に魔力のたまり場のようなものがあったじゃろ、あれは魔蔵と言っての、魔法はその魔蔵体のどこかに魔力を送り、全身にある魔力孔から吐き出すことで形を成すんじゃ」


「その魔力孔を目に肩代わりさせるんですか?」


「まあ当たらずも遠からずと言ったところじゃ」


 そういったジムラドは何故かニヤニヤして説明の続きを始める。


「先にも行ったと思うがの、魔力孔は全身にある……勿論この目にもな。

 魔眼と言う物は、この目から魔力を放出し魔法を発動することじゃ……、ま、一度やってみぃ」


 そういわれて、唯達は目に魔力を集めるが、そこから放出と言うのが上手くいかない。


「フォッフォッ、もっと集中してみぃ、お主等ならできるはずじゃ」


 絢は先ほどジムラドが言っていた通りの事象を起こし、唯達の進捗を確認する。


「やはりお主は簡単にこなすのぉ」


「良い手本がいますので……」


 その言葉を聞いて、ジムラドが声を大きくして笑う。


「儂を手本扱いか……、良いじゃろう、もっと儂から吸収してみよ」


「そのつもりですよ、貴方の技術の全てを頂きます」


 その言葉はジムラドの笑い声をかき消し、代わりにジムラドの口角が大きく上がる。


「言うのぅ、やってみぃ」


 ジムラドのその言葉に絢はいつも通りの作り物のような笑顔で「はい、もちろん」とだけ答える。

 そんなやり取りをしている中で、唯の目線の先で小さく炎が上がる。


「で……、できました!!」


 そういった唯はすぐに視線を絢に移し「できました、できましたよ!!」ととてもうれしそうにしている……、その間唯の魔眼は常に発動中であり、そのままでは絢も燃えるはずだったのだが唯から発される魔力を散らし、魔法が発動しないようにしていた。


「唯、危ないですからあまり視線を動かさないでくださいね」


 今までにない程長い間見つめられていることにより恥ずかしさが出てきたのか、忠告を無視して視線を動かそうとする、その瞬間、絢が唯の頬を掴み「唯……」と呟いてその視線が向く方向を制限する、目の前の光景に唯の目線は絢の眼へと固定され「はぃ……」と呆けたように返事をした。


「そのまま、魔力を放出したまま魔法のイメージだけを抜き取ってください」


 その言葉で若干手放しかけていた意識を取り戻した唯は「は……はいッッ!!」と返事をして絢が言ったことを実行していく、ゆっくりと魔力を放出する感覚と魔法を使う感覚を切り離し、放出だけに意識をシフトしていく。

 唯の目を見て、その目から完全に魔法が立ち消えたことを確認した絢は唯の頬から手を放す。


「凄いです!!」


 絢が手を離したことにより、視界の制限が解除された唯が辺りを見回すと、その景色は先ほどよりも色鮮やかに自身の視力以上の遠くまで見通すことができた。


「どうやらできたようじゃの」


 その声の方向に視線を向けると、ジムラドから細い糸のようなものが出ていた。


「何ですか、それ?」


「ほう、もう見えるようになったのか、早いのぅ

 それがお主が見たがっていたものじゃ、誰がどこに魔力をまとっておるか判り易いじゃろ」


 その視界は唯が望んだものその物であり、1時間ほど新しい玩具を得た子供のように遊んでいた……


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 タイムリミットって何のことでしょうか……

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