8話・初めての魔法
騎士総括長にしてはマッドさん弱いですよね……、相手を見て油断するようなので騎士が務まるんでしょうか……。
まあ、それは置いておいて、本で読んだだけの魔法の知識はどこまで通用するのでしょうか……、私のスキルはまだまだ明かしませんよ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ジムラドは平然と嘘をつく絢に探るような視線を向ける。
「ほう……そういえばだが、昨晩図書室辺りで、魔法の気配がしたんじゃが、何かしらんかのぉ」
「いえ、私は何も……」
再び平然と嘘をつく絢に対してジムラドは表情を変えず、唯はその言葉に驚いていた。
「まあいい、一旦このことは置いておくとしようかのぉ」
そういったジムラドは地面にそれなりの大きさの魔方陣を描く。
「異世界より来た者は、どうやら皆等しくスキルを持っておるらしくてのぉ、お主等の力を知らねば教える事も出来はせんのでのぅ、少し見せてもらうぞ」
暫くすると魔方陣が光だした、それで何を見たのかはわからないが、ジムラドが感嘆の声を出す。
「ほう、お主等武具や武術系統のスキルが多いのぉ、いくつか儂の知らんものもあるぞい!!」
そこで、「スキルは一つじゃなかったんですか?」絢が質問をすると、ジムラドは二ィっと口角を上げて説明を始める。
「神が植え付けるスキルは一つじゃな……じゃがスキルは文字通りその者の技能じゃ、その気になればいつでも取る事も出来る、と言っても、スキルが欲しければそれを自分の中の普通にせにゃならんがのぅ」
それを聞いて二人が思ったことは一つ
「「それスキルを取る意味なくないですか?」」
絢と唯の二人が同時に同じことを言い、それを聞いたジムラドが笑い出す。
「重要なのは、どんな状態でもいつも通りが出せるということじゃ。
毒や病気などいつも通りが出せなくなる状況などいくらでもある、そんな状況でも普段と同じことができるのは魅力的じゃろ?」
「そういわれればそうですね、その状態なら動けることよりも毒を直したいですが……」
「ふぉふぉ、確かにそうじゃのぉ」
何がツボに入ったのか、ジムラドは今までにないほど笑い出す。
「ああ……久しぶりに笑ったわい、さて、お主等は特に魔法系のスキルは持っておらんようじゃし……魔法の訓練を始めるかの
とりあえずは、自らの内にある魔力を感じるところからじゃ」
そういったジムラドは今までの「これこそ魔方陣!!」と、見てすぐに魔方陣とわかる物ではなく、一つの箱のようなものを作り出した。
「それは何ですか?」
今までジムラドが作り出したものとは明らかに違うその水色に光る箱について絢が質問すると本日何度目かはわからないがジムラドの口角が上がる。
「これは立体魔方陣と言ってのぉ、文字通り魔方陣を立体上に組むんじゃ、まあ、魔法を使う様になればどう言う物か分かる、今からやることに集中せい」
そう言ったジムラドは、その魔方陣に触れるように二人に維持する。
絢と唯の二人は、ジムラドの作った立体魔方陣の別の面に触れると魔方陣が輝かしく光る。
「それはただ光らせるだけ魔方陣じゃならのぅ、しっかりと自分の魔力がどこから引き出されているか感じ取るのじゃ」
(いや、この方法は分かりにくいですね、唯が何かを掴んでいるように見えるのは何故なんでしょうか……)
絢は体の中から何かが抜けていく感覚を感じ取っているが、それは元から魔法を使えるからである、昨晩に魔法を使用したときの感覚を頼りに、自身の体に魔力が通う様子を観察する。
(キリィーやジムラドの見様見真似でしたが、昨日のやり方は正しかったみたいですね)
暫く二人が手を離すと、次第に魔方陣から発されていた光が落ち着いていく。
「意外と早かったのぉ、もう少しかかると思って居ったんじゃが……、もう一度やっておくか?」
本当に理解できたのか疑っているのか、それとも挑発しているのか、ジムラドがそんなことを言う。
その挑発に近い言葉に二人が乗ることはなく、絢が「大丈夫です」と一言伝える、ジムラドは「張り合いがないのぉ」と言っていたが、その顔はどこか嬉しそうでもあった。
「かなり時間も余っておるし一度魔法を発動させてみるかの」
「そんな簡単にできるんですか?」
絢は昨夜一切の魔方陣を使わずに魔法を発動したが、唯は今まで神による転移を除けばジムラドの魔方陣を用いた魔法しか目にしていない、唯の口からこの質問が飛び出るのも当たり前だろう。
「魔法は
「じゃあなんでそんなの使ってるんですか?」
「生まれつき、魔法への耐性が強い者がおる、そう言った者に魔法を効かせたいのなら無理やり本人に発動させてやればいい……と言っても、魔力の使い方をよう知らんような者にしか通用せんがな」
「へぇ~、イメージってどうしたらいいんですか?」
唯は自分で質問しながらも最後の方は特に興味なさそうだったが、単に魔法と言う単語に目を輝かせていた、今すぐにでも魔法を使ってみたいようで、魔法の発動方法についてとても熱心に質問し、それにジムラドが答えていた。
「まあ実際にやってみるのが一番早い、できるという強いイメージを作ってからやってみるんじゃ」
おそらく唯は後半を聞いていなかっただろう、ジムラドのやってもいいと言う発言だけを聞き、先ほどの感覚と同じように魔力を引き出し、そこにイメージを乗せる、唯が乗せたイメージは細く小さい蝋燭のような火、そのイメージは、唯の魔力量とその出力によって肥大化され、巨大な炎がその手から噴き出す。
それを横で見ていた絢が、その炎を同じく魔法で生み出した水で包み込み鎮火する。
「さすがに少し焦りましたよ」
(下手に火事でも起きたら大変ですからね、何にも燃え移らないうちに消火できて良かったです)
そうして暫く魔法の練習をして、今日の訓練が終わっていった……
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
絢ちゃんが普通に魔法使えるのジムラドさんにばれてそうですよね……、と言うかばれてますよね。
そういえばなんですけど、情報漏洩って重罪なんですか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます